新入社員や若手の異動など、4月になると若い世代が会社やチームにジョインする時期。3040代にとって、いまの20代前半、なんかうまくつきあえない、言ったことが伝わってない感じが。管理職でなくても、若手との接し方は大きなテーマです。(株)人材研究所の曽和利光代表に「20代の特徴や傾向」について、話を聞きました。

「多様性を認める価値観」の厳しい側面

── 今、中間管理職などを勤める人のなかには、20代前半のいわゆるZ世代を部下に持つ人が増えています。世代間ギャップがよく話題にもあがりますが、Z世代の傾向はあるのでしょうか?

 

曽和さん:

いまの20代が持つ特徴的な価値観のひとつとして「価値相対主義」があります。

 

ある価値を絶対視して「こっちはよくてそっちはだめ」ではなく、「みな違っていていい、どんな価値も等しく認められるべき」という感覚です。

 

ナンバーワンよりはオンリーワンを重視する、多様な価値観を認めていく考え方ですね。

 

こういった思想の背景には、戦後の自由主義的な教育方針や、いま多くの企業が理念に掲げるダイバーシティがあります。

 

いわゆる昭和的な価値観がどんどん崩れていく時代のなかで、物心ついたときからLGBTQや女性の社会進出など、多様性が認められる社会で生きています。

 

「あらゆる価値を認める」と聞くと、いまどきの理想的な考え方のようにも思えますが、実はとても厳しい考え方なのです。

 

── 多様性は社会をよくするものに思えますが、なぜ厳しいのでしょうか。仕事や将来を考えるうえで影響がありますか?

 

曽和さん:

Z世代は「何でもいいし、どれも素晴らしい。あとは自分で選びなさい」と言われ続けている世代です。ところが、そう言われると人は選べないものなのです。

 

若い世代はそこで悩んでいる方が多い印象です。多様な物事から、自由に選べる環境のなかで、「あなたはどうしたいの?」とずっと問われ続ける悩みです。これはニヒリズム(虚無主義)につながります。

 

全部いいと言われるなかで、何かに頼りたいのに寄って立つ価値軸がないと、「どうでもいい」「働かなくてもいい」「人生に意味などない」という発想につながりかねません。

 

自信を持つことが非常に困難なわけです。虚無感を抱けば共同体意識が減り、助け合いや譲り合いの気持ちも失われます。

 

会社という組織の一員として上司や同僚と関わるための、大切な考えを欠くことになります。

 

私たち上司世代は、今の世の中がどうであろうと、自分が生きてきた歴史(社会人経験)というものが多少なりともあります。

 

また、年功序列や男女差といった、時代の不自由さや固定化した価値観が存在する時代に育ったので、「私はそうなりたくない」「私はこうしたい」と自我が芽生えやすかったのではないでしょうか。

 

そういった理由から、「何があってもいいけれど、私はこれ」という気持ちが持てる部分がありますよね。だからこそ価値軸のないZ世代のことが、より理解しづらくなっています。

まずは「存在」を認めることから

── Z世代の根底にある、価値相対主義に端を発するニヒリズムから「逃れる方法」はあるのでしょうか?

 

曽和さん:

Z世代が拠りどころをつくる方法としては、「半径3メートル以内での承認」があります。

 

分かりやすくいうと、SNSなどを使って「私は間違っていないよね」と自分の知っている人たちから承認されること。

 

絶対的な価値がない状況で、友達からの承認を心の拠りどころに逃げ道をつくっているんです。裏を返せば「自分を認めてほしい」。これに尽きると思います。

 

ランクづけや評価をされることではなく、ただ自分の存在を認めてほしいと思っているんです。

 

上司世代はそんなZ世代の気持ちを汲んで、サポートしてあげることが大切。

 

「自分は何者でもない」「たいしたことない存在」と自信を持てない若手に対して、「そのままのあなたがいい」とオンリーワンの存在として認めてあげることから、始めてみることです。

 

PROFILE 曽和利光さん

大学卒業後、リクルートなどで採用や人事の責任者を務めた後、人事コンサルティング会社を設立。組織に向けて、人事や採用のコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行う。最新刊は『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。

取材・文/高田愛子