大人が抱えやすい対人関係の悩みについて、臨床心理士の八木経弥さんに解決策を伺います。今回は、子どもが中学受験するかどうか探ってくるママ友にまつわるお悩みです。 

【Q】「中学受験はする?」と探りのLINE

子どもが受験するかどうか、ズバズバと聞いてくるママ友にうんざりしています。「私立小学校を受験する?」「中学受験はするの?」など、ことあるごとに質問責め。「まだ考えていない」と返答しているのですが、先日もお友達の女の子が受験塾に通っていることを引き合いに、中学受験に関する探りのLINEが届きました。

 

我が家は子どもが小学4年生になり、本人の希望で中学受験塾に通い始めたところです。でも、周囲に言いふらされても嫌なので「受験する」とは言いたくありません。

 

特に仲がいいわけではないのですが、ママ友はご近所さんですし、子ども同士は同じ公立小学校の同級生。余計な波風を立てたくはありません。賢く返事をする方法はありますか?

受験の主役はあくまでも子ども

春は塾の中学受験クラスがスタートする時期なので、こういうお悩みを持つ方は多いようです。距離感関係なく根掘り葉掘り聞きたがる方っていますよね。仲がいいわけではないなら、何も正直にすべて答える必要はありません。

LINEにびっくり

受験は、親が心配しすぎるあまり、空回りしてしまうことがあります。でも当事者はあくまで子どもです。まずは、子どもを中心に考えてあげられるといいですね。本人が周りにはどう対応してほしいのか、まずは子どもの気持ちを確認し、尊重してあげましょう。

 

相談者さんは「『受験する』とは言いたくありません」ということでしたが、それはお母さんの気持ちです。もしかすると、「周りに言ってくれた方が励まされて頑張れる!」というタイプの子もいるかもしれません。あるいは塾通いを誇りに思って、自分から友だちに自慢気に話す子もいるでしょうし、「自分から(ママ友の子どもに)言わせて!」と望むかもしれません。そうした気持ちは認めてあげましょう。

 

ただし、お子さんはまだ4年生です。周囲との関係性や状況を踏まえた発言ができるかどうかは個人差があるかもしれません。深く考えずに志望校を周囲に話すようだと、親としては、不合格だったときの子どもの失望感が心配になりますよね。

 

そう言う場合には、「頑張ったことはムダにはならないけど、受験は一番行きたい学校に受からない可能性もあるよ。その場合、周りにたくさん言っていると落ち込む可能性もあるけどいい?」と説明しておく必要はありそうです。

「まだ分からないけど準備してるんだ」とぼかして伝える 

もし子ども自身が「あまり周囲には言わないでほしい」と決めた場合、探ってきたママ友にはぼかして伝えるといいと思います。

 

「受けるかどうか分からないけど、受けたくなったときの選択肢を増やすために今から準備してるんだ」

 

「無理やり塾に行かせちゃってるのよー。本人やる気ないんだけどね。だからどうなるか分からないんだ」

 

などと軽く返すのもいいです。さらに言いふらされるのが心配であれば、あわせて懸念も伝えておくと安心です。

 

「もし受験することになったとしても、周りが受験することを知っているとうちの子プレッシャーを感じて縮こまっちゃうタイプなの。だから知らんぷりして内緒にしておいてね」

 

「もし落ちたら本人がつらいから、受験することになったとしても周りには言わないでね」

 

こうして「言わないでほしい」という気持ちもセットで伝えると、相手も大人なので状況を理解し、これ以上探るのを控えてくれるかもしれません。

 

相談者さんの場合、小学受験や中学受験に熱心なご家庭が多いエリアなのかもしれません。そういう場合は、子ども同士で「受験する・しない」の話になる可能性もあると思います。受験塾に通うと決めたら、前もって子どもと周りから聞かれた時の対応についてお互いの気持ちを共有しておくのが良いと思います。

 

PROFILE 八木経弥さん 

八木経弥先生
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子