アイデアを上司に猛アピールしたのにスルーされた。一生懸命話しているのに、相手に伝わらない。良い情報を持っていても、相手に届かないと宝の持ち腐れ。情報の価値を引き出し、相手に伝わるアウトプットのコツを “思考の整理家”鈴木進介さんに聞きました。
情報を増やすほど伝わり方は弱くなる
まだ20代の駆け出しの頃、クライアントの社長に怒られたことがあります。
「君の話は長すぎる!自分がインプットした情報を片っ端から披露してどうするの?」
有益な情報は多ければ多いほど喜ばれるだろうと、良かれと思ってしたことが、逆に迷惑がられてしまったのです。
よほどあなたに興味がある人ではない限り、他人は自分が思うほど、熱心に話を聞いてはくれません。
相手もさまざまな情報をインプットしているはずで、あなたの情報だけに関心があるわけではないからです。
どんなに情報の内容が良くても、そのまま伝えるだけでは簡単に相手には伝わりません。大切なのは、シンプルかつ簡潔に話すこと。
そして、相手のニーズに合うか、一番伝えたい情報は何かを自分の頭の中で整理しておくことです。
何(What)を伝えるかに気を取られがちですが、どう(How)伝えるかも強く意識してほしいのです。
たったひとつだけ情報を残すなら?
では、どのように頭を整理して、伝え方を工夫すれば良いのでしょうか。
難しく考える必要はありません。必要なのは、話の中心軸を設定すること。「たったひとつだけ情報を残すなら?」と考えてみるのです。
悩んだら、まずは伝えるべき情報を箇条書きレベルで書き出してみましょう。そこに「伝える目的」と「相手のニーズ」の2点から優先順位をつけるのです。
文章を書くときも、「1文1結論」「1スライド1メッセージ」を原則とします。各文章やページで伝える中心軸を決めて、読み手の意識がポイントから逸れないように工夫しましょう。
作詞家の秋元康さんが、「記憶に残るウナギ弁当はあっても、記憶に残る幕の内弁当はない」と話されている記事を拝見したことがあります。 これは、アウトプットの最も重要なポイントを見事に言い当てていると思います。
「PREP法」で情報をテンプレ化しよう
情報を整理するときは、“テンプレート”を頭の中に用意しておくと便利です。相手にとってわかりやすく、理解しやすいように情報をストーリー化していくのです。
その代表的な型が「PREP(プレップ)法」です。頭文字である「P・R・E・P」に当てはめるだけで、大量の情報でもシンプルかつ具体的に伝えることができる方法です。
①Point(結論):結論を先に伝え、何を伝えたいのかを明確化
②Reason(理由):なぜそう思うのか
③Example(事例):事例やデータなど、説得力をもたせる内容を提示
④Point(結論):最後に結論を念押しして、相手に印象づける
例として、「歩きスマホの危険性」をテーマに、PREP法に当てはめてみましょう。 ①P:歩きスマホはやめるべきです。 ②R:なぜなら、人にぶつかると危ないからです。 ③E:先日も駅で歩きスマホをしていた同僚が、ぶつかって怪我をさせて問題になりました。 ④P:だから絶対に歩きスマホはやめるべきです。
4つのパターンに情報を流し込み、その順番で話すだけなのに、自動的にシンプルなストーリーができあがります。
あれこれと情報を組み込んでしまいがちですが、これこそが話を複雑にして相手を混乱させる原因。
引き出しに入らない情報=不要な情報として振り落とされるので、自分の頭の中もスッキリします。
また、PREP法では先に結論を伝えるので、相手も何の話をするのかがわかり、ストレスなく受け入れられるメリットも。
仕事ではもちろん、友人や家族、お子さんとの会話でも使えるテクニックですので、ぜひ身につけてください。
多くの情報を詰め込んでも相手の印象には残りません。アウトプットでシンプルかつ簡潔さを意識することは、自分の成果を上げるだけでなく、相手へのマナーといっても過言ではないはずです。
PROFILE 鈴木進介さん
監修/鈴木進介 取材・構成/大浦綾子