大人が抱えやすい対人関係の解決策について、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺います。今回は、子どもを持たないDINKSの女性が、同僚たちの子どもの話題に付いていけないというモヤモヤのお悩みです。
【Q】子どもの話ばかりする同僚と会話が噛み合わない
私はいわゆるDINKSで子どもがいません。しかし私の会社ではほとんどの同僚が子持ちです。そのためランチへ一緒に行くと、いつも行き着く会話は子どもの話題ばかり。適当に相づちを打っていますが、どうしてもつまらなく感じます。同僚なので仲良くはしたいのですが、生活や価値観が合わない同僚とどう付き合えばいいのでしょうか?
テーマを投げかけ会話をリードする
子どもの件に限らず、世代や価値観、バックグラウンドの違いなどで会話が噛み合わないことはよくあることです。例えば、会社は年代の違う人が集まっていて、親子ほどに年齢差のある人もいます。若い人は年配の人に対して、「考え方が古いなあ…」と思い、キャリアのある人は若い人に対して「知識が浅いなあ…」と思っているかもしれません。
しかし、世代が違うからこその面白みもあります。「考え方が斬新だなあ」「さすが、キャリアのある人は違うなあ」と思い、お互い尊敬し合う場面も多々あると思います。まずは、いろんな価値観を持った人がいて、違うからこそ分かることや見えてくるものもあるということを心に留めておくと気分が随分とラクになると思います。
さて、そんな多様な価値観の人が集まるランチの場面で、もし相談者さんがこれからも同僚たちと疲れることなく、いい関係を継続したいならば作戦が必要です。そのひとつが「前もって話したいテーマを準備しておく」という作戦です。
「あの話についてどう思う?」などと世間で話題になっているテーマを投げかけてみたり、時事問題について話題を振ってディベートをしてみてください。ランチタイムも案外盛り上がります。
「最近はまっているお料理」や「推しの俳優やアイドル」など、もっと気軽な話でもいいと思います。世代が違っても楽しめるので幾つかの盛り上がりそうな話題を自分のなかでストックしておくといいでしょう。
こうして能動的に会話をリードすることがコツです。
自分の想いを伝える「Iメッセージ」を活用
それでも興味が湧きづらい話題になってしまうなら、最終手段として「I(アイ)メッセージ」という方法を用いるといいでしょう。
「I(アイ)メッセージ」とは、相手に「私は」を主語にしたメッセージを伝える方法です。「あなたが楽しそうに話してくれるのはうれしいけど、私はその話題だと共感しづらい」とやんわりと伝えるのです。
面と向かって言いづらいのであれば、メールでもいいと思います。メールの方が絵文字も使えるので相手を尊重するニュアンスも伝えることができます。
お互いを尊重し合える人とお付き合いを
相談者とは逆の立場、同僚の視点から考えてみましょう。彼女たちの中には、「いつも同じ話題ばかりで申し訳ない」と感じているメンバーがいるかもしれません。こんな時、もし気のおけない仲なのであれば、直接本人に聞いてみるのもいいと思います。または、盛り上がっている場面でそっと声を掛けてあげてもいいと思います。
これからの時代のキーワードは「多様性」です。ひとりひとり、考え方も違えば生き方もそれぞれです。自分の価値観や多数派の生き方を押し付けないことが当たり前という世の中になっていくでしょう。
そのことを常に頭のすみっこに置いて、お互いを尊重し合える人とお付き合いをすること。それがこれからの時代を上手に生きるコツだと思います。
PROFILE 八木経弥
取材・文/大楽眞衣子