女性の体の悩みを解決するためのアプローチとして、ここ数年で急激に注目されはじめたフェムテック市場。

 

吸水ショーツやデリケートゾーンケア製品、生理周期アプリなどがよく知られていますが、「膣トレ」アイテムや妊活グッズなど、細分化された悩みに応える画期的なプロダクトも続々登場していることをご存じですか?

 

世界初のフェムテック専用オンラインストア「fermata store」を運営するfermata株式会社(以下fermata)を立ち上げた中村寛子さんに、フェムテック市場を賑わす最新アイテムについて伺いました。

リアルな悩みに耳を傾け「自分で使ってみてよかったものだけ」

「fermata store」のサイトをのぞいて驚くのが、どの製品もポップで、とてもおしゃれだということ。無意識のうちにハードルが高いと思っていたアイテムも、気軽に楽しくチェックできます。

 

「今のところ、アメリカやヨーロッパ諸国で発売しているものが多いですね。開発者自身や身近な人の悩みを解決するために作られた、創意工夫あふれるアイテムばかりで、本当に驚かされます。fermataチームのメンバーが実際に使ってみて、よかったものだけを厳選して取り扱っています」

 

膣トレ用アイテム

なかでも人気なのは、「膣トレ」として知られる骨盤底筋を鍛えるアイテム「ケーゲル ベル」。挿入した状態で下腹部に力を入れることによって、骨盤底筋が鍛えられるというもの。

 

「実際に使ってくださっているお客さまからは、たるんだ下っ腹が引き締まった!いう感想もいただいています」

 

ファーティリリー カップ

妊娠を望むカップルの第一歩としておすすめの「ファーティリリー カップ」も注目のアイテムのひとつ。精液の流出を低減し、子宮頸管まで到達する精子の量を増やすことで着床をサポートするグッズです。

満足度の前に「セックスそのものの捉え方を変えてほしい」

興味はあっても、購入は躊躇しがちなセクシャルウェルネスアイテムにも、関心をもつ人がふえています。

 

お客さまとのコミュニケーションでわかってきたのは、「セックスの満足度を上げたいが、性交痛がそれを妨げているパターンが多い」ということ。これまでは潤滑剤という手段しかありませんでしたが、最近はさまざまな工夫を凝らしたアイテムが増えているそう。

 

オーナット

たとえばオーナットは、男性の身体に装着して、挿入の深さを調節できるアイテム。装着するだけで使用でき、モチモチした感触なので、お互いに負担をかけずに使えるのが魅力です。

 

スマホで操作できるバイブレーター

fermataが取り扱うセクシャルウェルネスアイテムは、種類が豊富なのも特徴です。例えばオーガズムを可視化できる世界初のスマートバイブレーター「ライオネス」など、今の時流に合わせた商品展開も。

 

関心はあってもなかなか人に打ち明けられない場合も多いからこそ、ひとりで使うもの、パートナーと使うものなど、さまざまな悩みを抱えた人の思いに寄り添うアイテム選びにこだわっています。

 

「セックスの満足度を上げるというと、ハードルが高いと感じる人も多いかもしれませんよね。でも、セックスって挿入だけを指すわけじゃない。匂いを感じたり、腕をさすったり、五感で感じたことすべてと捉えるといいのではないでしょうか。自分も相手もいたわり、愛する行為だと、視点を変えることも大切だと思うんです」

「セクシャルウェルネス=恥ずかしいもの」ではなく「当たり前」に

WHO(世界保健機構)では、セクシャルウェルネスについて、“身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態であることを指す、と定義しています。とはいえ、プライベートな問題だけに、価値観を変えるには時間がかかってしまうのが実情。中村さんは「丁寧に伝えていくということが大事」と話します。

 

「セックスはいけないもの、恥ずかしいもの…そういう気持ちがブレーキとなり、いまだオープンにしづらい現状はあります。でも、フェムテックによって、性教育をはじめ、クローズされていたセクシャルウェルネスは少しずつ変化してきていると思います」

 

もっと日常生活のなかで「当たり前のもの」として捉え、悩みを共有していくことが、今後の課題といえそうです。そのためにもfermataが果たしている役割は大きいでしょう。

 

PROFILE 中村寛子さん

「fermata」の中村寛子さん

fermata共同創業者/CCO。Edinburgh Napier University(英)卒。2015年にmash-inc.設立。女性エンパワメントを軸にジェンダー、年齢、働き方、健康の問題などまわりにある見えない障壁を多彩なセッションやワークショップを通じて解き明かすダイバーシティ推進のビジネスカンファレンス「MASHING UP」を企画・プロデュース。

 

取材・文/久保直子 画像提供/fermata