肌がかゆいマスク姿の女性

花粉症の症状が出るのは目・鼻・のどだけではありません。肌が荒れたりかゆくなったりするのも、花粉が原因かも ——。「花粉症と肌荒れ」の関係や対策について、ハピコワクリニック五反田院長の岸本久美子先生に聞きます。

花粉アレルギーが「肌」にだけ現れることも

── 季節の変わり目は肌の状態が不安定になりがちで、とくに春はもっとも調子が悪くなる方も多いようです。いったいどうしてなのでしょうか?

 

岸本先生:

冬から春への気候の変化が大きな原因ですね。本来、肌の表面には刺激や異物の侵入を防ぐバリア機能が備わっています。

 

ですが、冬の寒さと乾燥によって肌の水分や油分のバランスが崩れ、肌のバリア機能が低下。花粉などが侵入しやすくなり、追い出すためにアレルギー反応が起きるのです。

 

—— いわば、肌の花粉症というわけですね。花粉症は鼻・目・のどのトラブルといったイメージがありましたが、お肌にも関係するんですね。

 

岸本先生:

アレルギー症状は、その人の体質によって原因や症状に偏りがあります。鼻水や目のかゆみといった代表的な症状が出ないけれども、肌にだけ現れるケースもあります。

 

鼻や目への症状がないだけに、花粉症と自覚しにくいかもしれませんね。実際、診察にきて花粉が原因だったと気づく方もいらっしゃいます。

 

—— 具体的にはどのような肌トラブルが起こるのでしょうか?

 

岸本先生:

乾燥してガサガサする、かゆみや赤み、熱っぽさが出ることが多いです。乾燥を放置したり、かきこわしたりすると、悪化して湿疹が出てしまうこともあります。

 

とくに、顔の周りは皮膚が薄いので症状が出やすくなります。マスクをつけていない目の周りやおでこ、首は肌荒れが起こりやすいですね。

 

また最近は、新型コロナウイルスへの感染予防で長時間のマスク着用で、マスクが皮膚にすれる部分の乾燥トラブルも増えています。

「メガネと洗顔」はやり方次第で花粉対策に

—— 花粉による肌トラブルを防ぐために、どのようなことに気をつければ良いでしょうか?

 

岸本先生:

「肌に花粉を接触させないこと」と「肌のバリア機能を保つこと」が大切です。

 

肌に花粉を触れさせないためには、外出時はマスクや帽子、眼鏡、マフラー(ストール)などで肌の露出を避けましょう。

 

とくにメガネはマスク同様に、積極的に取り入れてほしいアイテム。目のかゆみ防止だけでなく目の周りの肌ケアにも有効です。もちろん、度数の入っていない伊達メガネも同様です。

 

花粉対策のメガネなら約3分の1、ふつうのメガネでも約3分の2程度に花粉の侵入を防げるといった調査も出ています。

 

家の中への花粉の侵入を防ぐために、帰宅時には衣類についた花粉を払う、室内をこまめに掃除するといった工夫も必要ですね。

 

—— 肌のバリア機能を保つ対策についてはいかがでしょうか。

 

岸本先生:

やはり保湿。その前に、洗顔で花粉を洗い流すことが大切です。ゴシゴシこするのは逆効果。刺激を与えないように、たっぷりの泡でやさしく洗うのがコツです。

 

おでこと髪の生え際の境目は、洗い残しが多いので忘れずに。また、外出先から帰ったらすぐに入浴するのが理想ですが、難しければ洗顔だけでも行ってください。

 

洗顔後は、化粧水や乳液でしっかり保湿ケアをします。いつも通りの基礎化粧品を使って問題ありません。

 

乾燥がひどい、かゆみがあるといった場合は、処方された薬や保湿剤を使ったり、症状が深刻なら皮膚科やアレルギー科を受診してみてください。

花粉対策としてのファンデーションを考える

—— 肌が荒れると、メイクのノリが悪くなるので困ります。メイクはしないほうが良いのでしょうか?

 

岸本先生:

素肌に直接花粉を触れさせないため、紫外線による刺激を防ぐためにも、ファンデーションや日焼け止めは塗ることをおすすめします。

 

肌に負担をかけないタイプを選び、薄く丁寧に塗りましょう。肌に合うようならば、外出前に花粉をブロックするスプレーなどを顔にかけるのも有効です。

 

どうしても辛いときは、ワセリンだけでも塗って素肌をカバーしましょう。ワセリンは、ティッシュやマスクによる摩擦をやわらげたいときにも使えますし、用意しておくと安心ですね。

 

 

肌が荒れると気分も沈みがちになり、そのストレスでさらに肌が荒れる悪循環が生まれます。「肌に花粉を接触させないこと」と「肌のバリア機能を保つこと」の2つを心にとめて、つらい花粉の時期を乗りきりましょう!

 

 

PROFILE 岸本久美子先生

ハピコワクリニック五反田岸本久美子先生
ハピコワクリニック五反田院長。東邦大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大橋病院などを経て、2018年に同院を開院。内科一般、呼吸器内科、アレルギー科の専門医として、乳幼児から大人まで幅広い世代が安心して相談できる診療を目指している。

取材・文/大浦綾子