Negicco・Nao☆さん
Negicco・Nao☆さん

「ご当地アイドル」Negicco。地元・新潟の魅力をアピールし、芸能活動を通じて「地産地消」を実践してきた先駆者でもあります。

 

いっぽう、芸人とごみ清掃員という二足の草鞋を履くマシンガンズ・滝沢さんは、ごみ清掃員の日常を綴ったtweetが話題となり、今では環境問題の講演などに引っ張りだこ。

 

そんなお二人に「食べられるはずの食品を捨ててしまう食品ロス」について対談をして頂きました。

子どもと一緒にコンポストをかき混ぜたい!

── もうじきママになられるNao☆さん。食をとりまく問題に対して、以前と比べてご自身の意識に変化はありましたか?

 

Nao☆さん:

食品ロスという言葉は、最近よく聞くようになった気がしています。

 

結婚して料理をする機会が増えたので、野菜はなるべく皮まで使おうとか、食材を無駄にしたくないといった気持ちは強くなりました。

 

特に野菜を無駄にすることには抵抗があります。祖母が家庭菜園をやっている影響もあるかもしれません。

 

野菜嫌いの子どもって多いですよね。もしかしたら、子どもが野菜を食べ残すことが食品ロスに繋がる部分もあるかもしれない。

 

それで調べてみて、家庭から出る生ごみなどを分解してたい肥に変えられるコンポストっていいなと思いました。ごみを減らせるし、たい肥を使って家庭菜園もできますよね。

 

家で育てた野菜を食べるのは子どもにとってもいい経験になるし、自分で作った野菜なら子どもも美味しいと言って食べてくれそう。

 

── 家庭菜園を通して、子どもにおばあさまのお話などもできたらさらに素敵ですね。

 

Nao☆さん:

TVのお仕事で、子どもたちが「ちゃんとかき混ぜないとね」と言いながら、DIYで作ったコンポストをぐるぐる回して遊んでいる映像を見たことがあります。

 

子どもと一緒にコンポストをかき混ぜてみたいです。

 

いろいろ便利になっていると思うし、楽しくできたらいいですよね。

 

── コンポストは、滝沢さんもオススメされていらっしゃいますよね。

 

滝沢さん:

はい。理由はNao☆さんがお話しされた通りです。

 

ただ僕もそうですが、マンション暮らしだと、たい肥は使い道がないことも多いんですよ。

 

なのでうちでは、黒土コンポストというものをやっています。これは、黒土の中に生ごみを入れるだけでごみが消えてしまうというもの。たい肥で野菜を作るのがよい循環であることは間違いないんですが、これは、まずごみ自体を減らすことに貢献できます。

黒土コンポスト
滝沢家の黒土コンポスト

Nao☆さん:

そういったコンポストもあるんですね。

 

滝沢さん:

コンポストって何種類かあるんです。なかでも黒土コンポストというのは、ごみを入れてかき混ぜるだけで、ごみ自体がどんどん消える…つまり、土のかさが増えないんです。

 

ごみを出さないよう気をつけても、どうしても出てしまうごみはありますよね。それもこれに入れてしまえば、消えてしまう。この点がいちばんのメリットだと思います。

 

── 臭いは出ないんですか?

 

滝沢さん:

難しいところですね。僕もまだ始めてから1年経っていなくて、今が黒土コンポストを迎えて初めての冬なんです。気温の低い冬はバクテリアの動きも鈍くなって、ごみの分解も進みにくいみたい。

 

夏だと5日程度でごみは消えていたけれど、今は2週間経ってもまだ少し形が残っています。しっかりかき混ぜないと臭いは若干出ますね。でも、それをどうしたらいいか考えたりするのも楽しいです。

魚沼産コシヒカリが捨てられている現実

── Nao☆さんの活動拠点である新潟は美味しいものがたくさんあるイメージですが、そうした食べ物が無駄にされてしまう報道などは、どんな想いでご覧になってますか?

 

Nao☆さん:

悲しいですよね。

 

地産地消の観点からも、食材を買うときは生産者さんのお名前と顔写真、「〇〇さんの作った自慢の野菜です」というメッセージを見て、「大切に食べたいな」と思っています。

スイカ
Negiccoが差し入れでもらった新潟県産のスイカ

食品ロスって、自分が幼い頃にはあまり取り沙汰されていなかったけれど、今はさまざまな問題が明らかになってきていますよね。今回の対談を受けさせていただくにあたって改めて調べてみて、近い将来の身近な問題なんだと危機感を覚えました。

 

小さい頃から「お米を一粒も残さず食べなさい」と言われて育ってきました。だけど、そうした当たり前のことだけでは追いつかなくて、社会全体で取り組んでいかないといけない課題になっているんだなって。

 

子どもたち世代が大人になる頃にはもっと大変なことになっているかもしれない。でも、子どもたちには、よりよい世界で暮らしてほしい!

 

食品廃棄のニュースを見るたび、「なんとかならないのかな」と思っています。

 

滝沢さん:

実は僕、新潟に縁があるんですよ。おじいちゃんおばあちゃんが津南にいたので、小さい頃はよく新潟に遊びに行っていたんです。

 

Nao☆さん:

そうなんですか!

 

滝沢さん:

だから、ごみの回収中に新潟の魚沼産コシヒカリが袋のまま捨てられているのを見たときはショックでしたね。

 

Nao☆さん:

え?え?そんなことがあるんですか!?それはショックです…。

 

滝沢さん:

胸が痛みますよね。

 

僕の祖父母は農家で、米以外にもいろんなものを育てていたから、遊びに行くとキュウリを出してくれたりしました。「採れたてはうまいぞ!」と言ってもいでくれるんですけど、小学校低学年の子にとって、味噌もマヨネーズもつけていないキュウリなんて、さほどうまくもないんですよ(笑)。

 

だけど、おじいちゃんおばあちゃんが普段、膝や腰が痛いと言いながら作っているのを知っていたから、僕は「うまいよ」と嘘をついていました。

 

「地産地消」って、ただ地元のものを食べようという意味だけではないんですよね。人の顔が見える関係を作ることが「地産地消」を成立させていると思うんです。

 

作り手を思う気持ちが食品ロス解消に繋がっていく。極論ですが、自分の子どもが作ってくれたキュウリなら、人は決してムゲに捨てたりしないんですよ。だけど、人の顔が見えないから、みんな簡単にバンバン捨てるんです。

食べ残しを減らす「言葉で描写する」ワザ

── 読者アンケートには、食品ロスを減らしたくても「子どもが食べ残しをする」という声が多くありました。残飯担当のストレスを味わっている人も多いです。

 

滝沢さん:

それはわかる!

 

残飯担当は僕もまさにやっていますし、どんなに調整してもうまくいかないのもわかります。

 

少しずつお皿に盛ってあげればいいんでしょうけど、忙しい毎日の中でしょっちゅう席を立ってお代わりを盛るのも面倒ですしね。

 

それで最終的には、残り物全部を煮込んだものを食べるのが僕の仕事(笑)。子どもが生まれてから何年間か、自分がいったい何を食べているのかわからなかったです。

家に余ったもので作られる滝沢さんのお弁当

── 「生産者さんの顔を想像して無駄にしないで」ということも、なかなか理屈では伝えきれません。

 

滝沢さん:

難しいですよね。

 

「世界には食べられずに苦しんでいる子もいるんだよ」というのも響かない。

 

地味なやり方ですが、食べ残しに対してヒステリックにならずに、「ちゃんと食べるんだよ」と毎日言い続けていくことが大切なのかなと思います。

 

Nao☆さん:

私は子どもの食べ残しどころか、離乳食もこれから経験することなので、まだリアリティはないんですが、自分が子どもの頃、母が私の食べ残しを食べていたのを思い出しました。今は母の気持ちがわかる年齢ですね。

 

滝沢さん:

昔は、給食も無理やり食べさせられましたよね。

 

Nao☆さん:

食べ終わらないと昼休みに入れなくて、牛乳で流し込んだりしていました。

 

滝沢さん:

ですよね。そういえば僕、子どもの苦手な食べ物をちょっとだけ食べさせる方法を実践しているんですよ。

 

「栄養があるから食べろ、もったいないから食べろ」ではなく、「言葉で描写」してみるんです。

 

「このふんわりした卵焼きがめちゃくちゃうまいんだよ、作ってやろうか」と言うと「作って!」となり、案外食べてくれる。

 

「小松菜って、この歯応えが『野菜を食べてる〜!』という感じなんだよね」とか、何でもいいんだけど、ひとつひとつ細かく説明してみる。

 

飲食店でも、料理の「お品書き」があると、なんとなくうまそうな感じがするのと同じイメージです。もしかしたら、僕らが給食を残していたのも、伝える大人側のボキャブラリーが足りなかったのかもしれませんよね。

 

Nao☆さん:

面白そうですね!私も真似してみたいです。

 

PROFILE Negicco・Nao☆さん

1988年新潟県出身。2003年、地元産ネギのPRのために結成されたご当地アイドルの先駆者「Negicco」メンバー。大手事務所に所属せず、地域に根差した活動で熱いファンの支持を獲得し、「にいがた観光特使」も務める。

 

PROFILE マシンガンズ・滝沢秀一さん

1976年東京都出身。1998年、西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年、子どもが生まれるのを機に定収入を得るため、芸人を続けながらごみ収集会社に就職。2018年にエッセイ『このごみは収集できません』(白夜書房刊)を出版、ベストセラーとなる。現在は主に、その独自の視点から「ごみ学」を語る活動を展開中。

取材・文/井上佳子 画像提供/Negicco・Nao☆、マシンガンズ・滝沢秀一