NHKの幼児向け番組「いないいないばあっ!」に2代目お姉さんのりなちゃんとして出演し、現在は子育てをしながらヨガや幼児教室の講師をしている齊藤里奈さん。発達障がいを持つお子さんやご家族向けのYouTube番組への出演や、オンライン子育てサロンの運営にも取り組まれている齊藤さんに、ご自身の子育てのエピソードと現在の活動について伺いました。

「深呼吸を意識」子育てで大切にしていること

──子役時代から一貫して子どもに関わる活動をされていますね。

 

齊藤さん:

小さい頃から子どもが大好きで。弟も8歳離れているので本当にかわいくて、毎日走って帰宅して面倒をみていました。赤ちゃんや小さい子と一緒にいると、自分自身も癒されるんですよね。保育士になりたいと思っていた時期もありました。

 

──ご自身も10歳と7歳、お2人のお子さんの母親でいらっしゃいますが、子育てで大切にしていることはありますか。

 

齊藤さん:

我が家は一人親世帯ということもあり、仕事で家にいない時間が多い分、ありきたりですが一緒にいる時間は大事にするように心がけています。一緒に体験して共感することとか、お互いの意見を伝え合うようにしています。あとは、忙しいと後回しになりがちですが、なるべく子どもの話を最後まで聞いたり、ひとりの人として意見を認めたりすることを大切にしています。

ヨガをする齊藤さんと娘

 

──お子さんと向き合うことを大切にしているのですね。

 

齊藤さん:

私が何かを教えなければと考えていた時期もありましたが、子どもと一緒に経験して成長すればいいと思ってからは肩の力が抜けて、お互い楽しめるようになり、親子の関係性もよりよくなったように感じます。長男はサッカーをしているんですが、一緒にボールを蹴ったり、一緒に親子マラソンに出たり。今は子どもの方ができることが増えてきて、そうすると子どもを尊敬することも増えて。負けを認めることも多くなってきました(笑)。

 

そうはいっても、子どもに向き合うことができる日とできない日があります。そんな時は、「今日ママ疲れちゃってるんだ、ごめんね」と状況や感情をそのまま伝えるようにしてきました。

 

「この日は一緒にできるからまたやろうね」とか。1日単位でできなかったら1週間単位で、自分が余裕のある日のどこかで埋め合わせをするんです。

 

実は自己免疫疾患をきっかけに体調を崩したこともあり、疲れきってしまっていた時期もありましたが、そんな日は普段よりお手伝いをしてくれたり、お手紙を書いてくれたりと子どもたちが沢山助けてくれました。

 

──子育てをしていると感情的になってしまうこともあるのですが、どのように対処されていますか。

 

齊藤さん:

キー!となることも、イライラしたり思わず大きい声で叱ったりすることもありますけど、そうなる前になるべく冷静になれるように深呼吸して、いったん落ち着くことを心がけています。今の心の状態に意識を向けることをマインドフルネスと言って、私が大切にしていることなのですが、そうすることで声のボリュームが下がったり伝え方が変わったりするので、ひと呼吸置くことは大事しています。

 

今ちょうど反抗期の長男も、時々それを実践しています。私に言い返す前に、長男は一度トイレに籠ってから深呼吸してクールダウンしてから出てくることもあります(笑)。

 

──小学生の息子さんが冷静になれるとはすごいですね!

 

齊藤さん:

息子は私が切り替える姿を見て「僕はまだモヤモヤしているのにママはどうしてもう切り替えているの」と昔から興味深く聞いてくるタイプだったんです。「ママは今、自分ですごく怒っていると思うからいったん深呼吸してイライラを切り替えたよ、そのあとは引きずらないようにしているんだよ」と答えてきました。

 

もちろん、思いっきりぶつかることもありますけど、落ち着いた時や寝る前にもう一回話し合って、私も言いすぎた時は謝るようにして、なるべく寝るまでには消化できるようにしています。

 

ヨガやマインドフルネスが子育てにも沢山役立っています。

母親から多く寄せられる子育ての悩み相談

──子ども向けのレッスンや幼児教室などではお母さん方からの悩み相談も多いと伺いました。

 

齊藤さん:

悩み相談は本当によく受けます。イヤイヤ期でどうしたらいいかわからないとか、言うことを聞いてくれないとか。発達に関するご相談も多いです。発達がゆっくりで、他の教室だと馴染めないんですといった声も聞かれます。

齊藤さんが講師をしている親子向け教室

 

──そういった方にはどんなアドバイスをされるのですか。

 

齊藤さん:

私も当初そうでしたが、親は子どもがこんな風になってほしいという希望があるものの、なかなか思い通りにはいかないですよね。まず、自分と子どもは違うということを理解すると、楽になることも多いと思います。

 

どうしてもできないところが目につきやすいですが、私自身もその考えを学んでからは余計に期待をかけすぎたりすることが減り、個性を認めたり良いところが見られるようになりました。

 

クラスで子育ての相談を受けた際は、クラス以外の部分でお子さんがどういう様子かを聞いて、保護者の方が納得して一緒に取り組めることをご提案して一緒に取り組みます。まずはお母さんの考えを尊重した上で、色々ご提案してやりやすい方法を一緒に考えていくという形ですね。

 

また、子育てに悩みを持っているお母さんたちはお子さんに対してとても一生懸命に向き合っていて、その分メンタルにダメージが来ていることが多いので、お母さん自身の心の状態も合わせてサポートしています。

 

私自身も学びながらですし、子育てに正解はないと思っているので、レッスン中は少しでも育児の大変さを分かち合って、親子ともに自己肯定感を高める場所にしたいと思っています。

「気分転換をしながら繋がれる場所を」との思いで始めたオンラインサロン

──現在、YouTubeで発達障がいのお子さんやご家族向けの番組を作ったり、オンラインの子育てサロンを運営したりするご活動をされていますね。始めるきっかけはなんでしたか。

 

齊藤さん:

クラスにお子さんの発達障がいで悩んでいるお母さんがいたり、私自身の家族や親戚に発達障がいで悩んでいる人がいたりして、自分にできることを模索していました。そんな中で、ヨガやマインドフルネスが役立てられることがあると知り、伝えていきたいと思いました。

 

さらに、発達障がいについての理解を深める活動として始めたのがYouTubeでの番組配信でした。

 

子どもの頃に出ていた「いないいないばあっ!」の声優さんや楽曲を担当してくださる方などと一緒に、それぞれの想いが重なり再び一緒に番組作りをしています。みんなで一緒に学んで温かい助け合いの輪に繋がる場所を作っていけたらいいなと思っています。

齊藤さんが運営するオンライン子育てサロン

 

オンライン子育てサロンを立ち上げたのはコロナ禍前の2019年だったんですが、忙しいお母さんや地方にいらっしゃる方だけではなく、発達段階がゆっくりなお子さんを持つご家族や、ご自身が障がいを持っていらっしゃる方も、オンラインだったら参加しやすく気軽にクラスを楽しむことができるのではと思ったんです。

 

──コロナ禍で、さまざまなイベントが軒並み中止になっている中で、オンラインサロンの運営は先駆けとなる活動でしたね。

 

齊藤さん:

私自身が産後、仕事を始める前に子どもと家にいて思ったのは、1日の時間配分が難しいということでした。「今日は何をしようかな」と毎日思っていましたね。

 

友達に毎日会えるわけではなく、ママ友作りも積極的にしていなかったので、子どもと一緒に公園やスーパーに行くか、たまに公民館に行くかくらいでした。また、子連れで出かけるのはとても大変で、寝不足だったり疲れ切っていたりする日は、1日お家で過すことも多くありました。

 

私のように感じている方もいるかなと思ったので、今日はオンラインでこのレッスンがあるから、これまでにこの家事を済ませよう!とか、自宅で気軽に、パジャマのままでも繋がれる場所を提供したかったんです。ヨガやベビーマッサージの他に、他の講師の方がリトミックや英語を教えるレッスンもあります。

 

お天気が良かったら外にも出れますが、夏も暑すぎたり、雨だったり、今はコロナ禍もありますので、オンラインでもお母さんたちの気分転換ができたらいいなと思っています。

企業向けのセミナーも開催

 

元々はヨガが好きで楽しくて始めた活動ですが、企業向けにメンタルヘルスなどのセミナーをさせていただいた経験を通じて、心の部分で疲れている方がたくさんいらっしゃると感じました。

企業向けセミナーの様子

 

私自身も体調を崩し、自己免疫疾患と向き合う経験をしたこともあり、現在はヨガと合わせてマインドフルネスもお伝えしながら心のケアも行っています。

 

ヨガやマインドフルネスを通したストレスケアや予防という面では、お母さんや小さい子どもたちに向けてもお伝えし、大人も子どもも自分らしく輝けるような日常をサポートしていきたいと思っています。

 

PROFILE  齊藤里奈さん

シャンティデイズ株式会社代表取締役。NHK Eテレ「いないいないばあっ!」2代目お姉さんを経て、2012年よりヨガ講師。幅広い世代にヨガを通した心と身体の健康をサポートしている。2019年に起業しオンライン子育てサロン「おやこチャンネル」運営、親子向けイベントや企業向けの研修・セミナー等も実施。

取材・文/内橋明日香 写真提供/齊藤里奈