大人が抱えやすい対人関係の解決策について、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、同僚のSNSを見てイラッとしてしまう方のお悩みにお答えします。

 【Q】SNSでいつもと違う同僚にイラっとしてしまいます

同僚とSNSでフォローし合っています。同僚は会って話すとごく普通の女性なのですが、SNSを開くと「きちんと暮らしてます」感やキラキラ感が満載。「#いいねしてね」などのハッシュタグをつけ、フォロワー稼ぎにも熱心な様子に心がザワつきます。同僚なのでブロックするわけにもいかないですし、「いいね」を返してくれるのでスルーできず。どうしたらよいでしょうか?

自分は何が気に触るのか

SNSの存在がストレスになっているという悩みは年々、増加傾向にあります。ストレスを感じたときは、今一度、自分にとってSNSとはどんな存在なのか考えてみましょう。

 

具体的には、「どうして鼻につくのかな?」「なんでキラキラが嫌だと感じるのかな?」と自分自身に問いかけてみてください。

 

「人気のアカウントがうらやましい」「『いいねしてね』と言える素直さがうらやましい」など、もしかすると、同僚のようになりたいという憧れに近い気持ちが、心のどこかにあるのかもしれません。

 

「『いいね』を返してくれる」とありますが、あなた自身にも「『いいね』を返してほしい」「認めてほしい」という気持ちがあるのかも。

 

イライラする原因を突き止めると自分という人間が見えてきます。自分が見えてくると、どうしたらストレスレスな状態でいられるか、解決策がぼんやりと見えてくるかもしれません。

SNSにはストレス発散の側面もある

私は、SNSは一種のストレス解消法という側面があると思っています。発想を変えると、質問者を悩ませている同僚の方は、自分をうまくコントロールできている人とも言えます。

 

言い換えるとストレスマネジメントとしてSNSをうまく利用している可能性があるということです。ストレスマネジメントとは、心や体に影響を与えるストレスを、上手にコントロールすること。

SNS

思いきって自分の投稿にも「#いいねしてね」とハッシュタグをつけてみるとどうでしょう。「いいね」が増えて、「認められた!」という気持ちになり、自己肯定感があがるかもしれません。

 

たとえ現実はキラキラとは程遠い生活をしていたとしても、日常の一部を切り取ってSNSに載せ、それがたくさんの人から「いいね」と認められると、それだけで嬉しくなりますよね。同僚の方は自分のご機嫌を取るのが上手なのだと思います。

 

でもその同僚が会社では仕事が遅くてミスが多いのに、SNSの世界ではフォロワーをたくさん抱えていて、生き生きと楽しんでいるように見えるとなると、現実を知る者としてはあまりよく思えないかもしれません。

 

そんなときは、「SNSを使って上手に自己肯定感を高めているのね」と捉えると、少しは溜飲が下がるかもしれません。

SNSの世界は現実ではない

そもそも、SNSはその人のほんの一部分だけ。わざわざ汚い机や不器用な暮らしぶりを載せる人は少ないです。散らかった部屋の一部だけおしゃれに飾り、得意なところだけ切り抜いて投稿しています。それを頭に入れておくだけで、少しは気がラクになるはずです。

 

もしSNSでストレスを感じたら、SNSとの距離を見直すチャンスです。SNSを見る曜日を決める、画面からアプリをいったん消去してみるなど、物理的にSNSと距離を置くのが最も効果的です。

 

自分のSNSのプロフィールに「1週間に1度だけ更新します」「頻繁に見ることができないので返事が遅くなります」など、反応があまりできない旨や距離を置いている旨をあらかじめ記載しておくのもフォローする側、される側両方にとって程よい距離感を作ることができるひとつの方法だと思います。ぜひ試してみてください。

 

PROFILE 八木経弥さん 

八木経弥(やぎ・えみ)先生
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子