カリスマ的な人気を誇ったモデル時代を経て、現在は執筆業やプロデュース業など幅広く活躍している押切もえさん。私生活では、4歳長男、0歳長女の2児の母です。

 

最近注目されている「環境や社会に配慮した商品を選ぶ消費行動」は、ファッションの世界にも及んでいます。押切さんが雑誌モデル時代に抱いた違和感や、もともと強いという「もったいない精神」まで、今の押切さんが消費者としてどうファッションと向き合っているのかを聞きました。

流行りでも似合っていなければ意味がない

昨年、『シンプルなクローゼットが地球を救う ファッション革命実践ガイド』(エリザベス・L・クライン著)という本を読みました。衣類の大量生産・廃棄を行う今のファッション業界が環境に及ぼす悪影響について初めて知り、大きな衝撃を受けました。

 

それまでも、オーガニックコットンが心地いいとか、フェイクレザーを選べば動物愛護に役立つだろうとか、それくらいのことは考えていたけれど、現実はもっともっと深刻なんだと思い知らされて。以来、流行っているから手に入れたいとか、どんどん新しい服を買うという考え方からは距離を置くようになりました。

 

流行に飛びついて買っても、自分に似合っていなければ着る頻度は少ないし、来年も着られるかどうかはわからない。それって、コスパ的にもすごくもったいないです。

 

それよりも似合う服、安心する服、着るとほめてもらえるような服がクローゼットにそろっていて、ずっと大事にしているほうが豊かな気持ちになれるし、自分らしいし、賢い消費者じゃないでしょうか。

モデル時代に抱いた違和感とこれから

かくいう私もモデルとしてファッション誌で常に新しい服や着こなしを提案してきました。「みんな買ってね」と紹介して読者やファンの方々に喜んでもらう。それがいいモデルだと思っていた。

 

けれど、長く続けていくうちに「みんなこんなに毎年新しい服を買えるのかな」とちょっぴり胸が痛くなって、これが本当に見てくださる方にとっていいことなのかな、とも考えるようになりました。

 

今は受注生産で服を作りすぎない工夫をするブランドも増えるなど、ファッション業界も変わりつつあります。これからは、そうした服を積極的に選ぶことも発信していければと思っています。

ニットを着た押切もえさん
受注生産のニットを着た押切もえさん

もともと強い「もったいない精神」

妊娠中マタニティウェアは買わずに、セールでちょっと大きめの服を買って、産後はお直しして着ています。

 

好きなブランドやお店のお得なセールには行きますよ。できるだけ期間のはじめに行きます。ただし、お買い得だからといってやみくもに買うのではなくて、正規の値段でも買うくらい欲しいかどうかを基準に選びます。

 

反対に新作の服を買うときも「もしセールで値下がりしたらショック?そこで動じないくらい今この服が欲しい?」と自分に問いかけますね。昔からそれくらい慎重です。

 

もともと、もったいない精神が強いほうだと思います。裏紙なんかも絶対使いますしね(笑)。

 

夫も物を大切に使うところがあるので、いつもいいなと思っています。一緒に買い物に行っても「本当に使うかな」と夫に相談して結局やめることもありますし、レストランで私が「あれは高く感じる」とか「この値段ですごいね」などとコスパの話をしても嫌がらない(笑)。結婚生活のなかで、その価値観が合っているのはすごく良かったですね。

 

子どもにも、高価な服ばかり着せることなどにあまり興味がない夫婦です。TPOにもよりますけどね。

ファッションの原点は変わらない

20代の最初のころは仕事がなく、もちろんお金もありませんでした。

 

当時の私は、厳選に厳選を重ねて買った服を大事に着て、どうおしゃれに見せようか、頭を使って工夫することがすごく楽しかった。その原点は変わっていないと思います。

 

「いいものをたくさん買えるようになりたい」と渇望していた時期もあったけれど、実はそれはゴールではなかった。「賢く買って長く使うほうが達成感がある」と、今は感じています。

 

PROFILE 押切もえさん

oshikirimoe

モデル・文筆家。高校1年のときにスカウトされ、ティーン誌の読者モデルに。女性誌『CanCam』の専属モデルを経て、TV、ラジオなど、幅広く活躍。2013年には小説家デビューし、文筆活動も行う。私生活では2016年に結婚。現在2児の母。

取材・構成/相川由美