「どうせ私は仕事ができないから…」「会社の役に立てていないのでは…」
自分に自信が持てず、仕事においても自信がない。この思いが「仕事がしんどい」原因になっているケースもある、と指摘するのは、産業医・精神科医として活躍する井上智介先生。
自信を持って仕事に取り組むためのヒントを教えてもらいました。
少しずつでも“確実”に自信をつけるには?
誰だって、頑張った成果を人から認めてもらいたいし、周りから好かれる人間になりたい…自分に自信を持って、キラキラした毎日を送りたいと願うのは当然のことではないでしょうか。
ところが、いざ「自分に自信を持とう」「自己肯定感を高めよう」と思っても、実際にはなかなか難しいもの。
たとえば、何かを始める前から結果を気にしたり、不安になったりする背景には、過去の失敗や幼少期に誰かから言われて傷ついた言葉があるかもしれません。
ですが、諦める必要はありません。誰だって、いつからでも、自己肯定感アップへ向けてチャレンジはできるのです。
自己肯定感をアップする「加点方式」ルーティン
できなかったことばかりに目を向けて反省する減点方式では、なかなか自分に自信が持ちにくい状況があります。
大切なのは、「加点方式」で物事を考えること。これが、すべてのマインドの大元になります。
1.1日3つの小さな目標を立てて、褒める
成功体験を蓄積していくためには、できるだけたくさんの目標にチャレンジする経験が欠かせません。このとき重要なのは、ハードルの高さではなく数。クリアした数が多いほど、自分に自信が持てます。
まずは、自分ひとりで完結できる目標を立ててみましょう。
たとえば… ・朝、時間通りに起きられた
・就業開始時刻に遅れず出社できた
・予定していた会議にすべて参加できた
・忙しくてもお風呂に浸かる時間を作れた
など、なんでも構いません。こんな当たり前のことでもいいの? と思うような目標でも大丈夫。ひとつの成功体験には変わりがないのです。
「◯◯ができた」「◎◎もできた」と、自分自身をしっかり褒めるのも重要です。
2.少しずつ目標(ハードル)を高くしていく
自分自身で完結する目標がクリアできるようになってきたら、次は他者と関わる目標も盛り込んでみましょう。
たとえば… ・職場で会う人に挨拶をする
・メールは1時間以内に返信する
・一日3回は、誰かにありがとうと伝える
などはどうでしょうか。
立てた目標を家族や同僚など、周囲の人に宣言するのもおすすめです。応援してもらうと、やる気もアップしますし、達成する可能性も上がります。
ただし、目標達成ができなかったとしても、気に病む必要はありません。60点で十分合格点。
何よりチャレンジしたこと自体、素晴らしいことなのです。
3.達成した目標は手帳などに記録する
達成した目標は、スケジュール帳やパソコン、スマートフォンのカレンダーなどに残しておくことをおすすめします。
毎日3つずつ、自分の成功体験を残していけば、一週間、一カ月でかなりの数になりますよね。
目に見える形で成功体験を残しておくと、「自分が達成した証」を都度確認ができます。気分が落ち込んだときには、このノートを見れば、自信を取り戻すきっかけにもなるはずです。
ネガティブ思考に陥るNGワードに注意
言霊という言葉があるように、私たちは自分で口にした言葉の影響を受けやすいもの。自分に自信を持つための妨げになる「ネガティブなワード」はできるだけ使わないようにしましょう。
ネガティブ要素が多い「D言葉」
D言葉、つまり「だ行」で始まる言葉には、ネガティブなものが多いと言われています。
たとえば… ・だって
・だけど
・でも
・どうせ
・どうして など
これらのワードを多用すると、自分の心持ちや行動を制御してしまいかねません。
また、コミュニケーションにおいては、相手を否定してしまう恐れもあります。良好な関係性を築くうえでは、職場のみならず、普段の生活でも意識できるといいですね。
自分を縛りつける「~するべき」ワード
「~するべき」という言葉や行動も、自分の行動を制限してしまうため注意が必要です。この言葉を使いがちな人は、完璧を追い求めてしまう真面目なタイプが多いかもしれません。
たとえば、「休日も、仕事のためになる勉強をするべき」と思うと、休日の行動に制限がかかってしまってしんどくなってしまいます。
ポイントは「~するべき」ではなく、「~できたらなぁ」という願望に変換すること。
「休日も、仕事のためになる勉強をできたらなぁ」と置き換えてみると、心への負担を軽減できます。できたらやるけど、無理だったら仕方ない、くらいでちょうどいいかもしれません。
小さな積み重ねが自信につながる
私たちは、誰かと比べてしまう気持ちを、まったくなくすことはできません。大切なのは「どんな自分でもいいんだ!」と思えるようになること。
そう捉えられるようになれば、他人の評価や目線に振り回されずにすむはずです。
大きな成功じゃなくてもいいんです。小さな行動の変化や成功体験をひとつずつ積み上げていく。あなただけしかない自分の強みやよさを大切に。大きく伸ばしていきましょう。
PROFILE 井上智介
取材・構成/水谷映美