本が好きだとしても、図鑑ばかり、あるいは物語ばかり…と、読む本に偏りがある子も多いのではないでしょうか。親としては、いろいろな本を読んで感性を磨いたり、知識を身につけたりしてほしいですよね。そこで今回は、「子どもの読書の幅の広げ方」について、教育者・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生にお話を伺いました。
Q.読む本に偏りのある子どもが心配です
小学3年生の男子と小学1年生の女子の母です。小学生になって、文字が読めるようになったこともあり、娘は本に興味をもっているのですが、ストーリー性のある本を好み、図鑑などには興味がありません。
一方で、息子は小さいころから図鑑に夢中で物語を読みません。娘は図鑑を読まないので知識が増えないのでは?息子は物語を読まないので論理的思考が身につかず、読解力が不足しているのでは?と不安です。
現に、息子は学校のテストの問題文の意味を取り違えたりします。どうしたら良いでしょうか?
「わかる気分」「わかる予感」をつくってあげる
「読む力」に必要なのは、まず文字が読めること。次の段階が、内容を理解できること。内容の理解とは、そこで示されているものが頭のなかで映像として描けることです。
小学1年生の娘さんが物語を好きなのは、ストーリー性があるので場面が映像として浮かびやすく、心情などもイメージしやすいからだと思います。
そこから一歩進んで知識を身につけるような説明的な文章を読んで面白いと思うには、「事前知識」と「関心」が必要です。たとえば魚が好きな子は、文章のなかに「深海魚」という言葉が出てきたらそれだけで「わかる気分」になるので、好奇心とともに読み進めることができます。
つまり、本人のなかに映像に置き換えることができる知識があるかどうかが大事だということ。親から無理やり本を押しつけられても「わかる予感」がしなければ読まないし、嫌いになるだけです。子どもは「わかるから楽しい」と感じるので、本人がもっている知識や経験、興味とつながるような本と出合わせてあげることが大切です。
だから、もし図鑑に関心をもってほしい場合は、図書館や本屋に行き、その子の興味に合った図鑑を一緒に探してあげるといいでしょう。最近の子ども向けの図鑑は、読みやすく楽しめるものが豊富です。DVDがついているもの、QRコードを読み込むと動画が見られるものなど、よく工夫されているため選びやすいと思います。
情報量の多さに圧倒されてしまう子は、動物や建物などを並べて大きさや重さを比べる図鑑など、情報の扱い方を誘導しながらその楽しみ方を教えてくれるようなものを見てみるといいかもしれません。
イギリスのDK社の図鑑などもお勧めです。世界で高い評価を受けていて、日本でも翻訳本がいろんな出版社から出ています。写真が美しく科学的な説明もついていて、本物志向。大人も一緒に楽しめるでしょう。娘さんはキレイなものやキラキラしたものは好きですか。もしそうであれば、美しい鉱石や元素の図鑑などをチェックしてみてはいかがでしょうか。
また、読み聞かせてもらうと読めるようになる子もいます。目で文字を追って意味をとらえるには頭の負担が大きいけれど、耳に馴染んだお母さん、お父さんの声で読んでもらえると、頭のなかで自然と意味がつながるからです。
その際は、子どもにも文字を目で追わせながら読んであげると効果的です。耳から入る言葉で意味をつかみ、同時に目で文章を見ることで、徐々に文章を読み取る感覚が養われていきます。
問いを正確に捉えるには、「音読」が効果的
一方、図鑑を好む子は、知識の収集が好きで、人の変化や心情にまだ興味がない場合が多いです。だから、息子さんは、アニメやドラマなどで物語に触れさせるところから始め、アニメのノベライズを与えてあげるなど、段階的に映像を文字で追体験させるといいでしょう。
やはり絵がついていると読みやすいので、小学生向けの絵本や挿絵の多い本も活用して、物語に触れさせてあげてください。宮沢賢治の作品など、名作はたくさんあるので探しやすいと思います。
テストで問われている内容を読み違えるのは、本の好みとは関係がありません。おそらく最後まで問題文を読んでおらず、いきなり問題を解こうとしているのでしょう。
その場合は、家庭学習の際に、問1〜、問2〜といった問題文を音読させるのが効果的です。目で追うだけでは読み飛ばしやすいので、声に出すのです。そして、問題文で何が求められているかを問いかけてあげてください。
何が聞かれているかを意識できれば、解答の精度も上がります。それを繰り返せば、しだいに問題文を読み飛ばさなくなり、正確に問いを捉えられるようになるはずです。
PROFILE 小川大介
取材・構成/佐藤ちひろ