「最近、仕事がしんどいな」と感じてはいませんか?もしかするとその「しんどい」、実は心と体からの危険信号かも…。
今まで救ってきた人数は1万人超!産業医・精神科医として活躍する井上智介先生に、チェックしたい項目を教えてもらいました。
放っておくと危険な 「3つの変化」とは
「仕事がつらい」「毎日しんどい」と感じたら、まずは睡眠・食事・遊びの変化をチェックしてみましょう。心に大きな負担、つまりストレスを抱えていると、何らかの変化が起こっていることが多いのです。
ポイントは、調子が良かったときの状態と比べて、違いがあるか否か。もしも、何か変わった点に気づいたら、それは自分の心と体が発するひとつのSOSのサインです。
睡眠の変化…眠れない、すぐに目が覚める
心理的に大きな負担を感じていると、睡眠に変化が現れるケースが多く見られます。
・布団に入ってもなかなか眠れない
・体は疲れているのに目が冴えてしまう
・夜中に何度も目が覚める
・一度目が覚めると、その後すぐに眠れない
もともと寝つきが悪かったり、季節的なものだったりする可能性もありますが、まずはこれらの変化が起こっていないかをチェックしてみましょう。
食事の変化…食べる量や味の好みが変わった
ストレスが原因で食事に変化が生じる場合もあります。
・食べる量が著しく減った
・ものすごく食べるようになった
・甘いものばかり口にするようになった
・好んで塩辛いものを食べてしまう
といった場合は少し注意が必要。ストレスによる食事の変化は人によってさまざまなので、以前と比較して、食べる量と味の好みに変わりがないかを確認するのがポイントです。
遊びの変化…好きなことなのに楽しめない
ストレス解消には、趣味など好きなことをして過ごす時間も大切。けれど、本来であれば息抜きのはずの時間の過ごし方が、変わってきていることはありませんか。
・これまで気分転換で楽しめていたことが、心から楽しめなくなった
・単なる時間つぶしのようになっている
このような状態も、危険信号が潜んでいます。
すぐに病院へ行くべき「身体症状」の目安
睡眠・食事・遊びの3点の変化に加えて、次のような身体的な症状が出ていたら、すぐに病院へ行きましょう。
・頭痛
・動悸
・喉の閉塞感
・胃のむかつき
・微熱
・生理周期の乱れ など
これらは一例ではありますが、おかしいな?と思う症状があれば、まずは内科(生理周期の異変などは婦人科)へ。
なぜなら、身体的症状の原因がストレスによるものではなく、何か身体的な病気の兆候という可能性もあるからです。
診察の結果、何も異常がなかった場合は、次に精神科や心療内科などを訪ねたり、紹介状を書いてもらったりするとよいでしょう。
「症状がないけどしんどい」場合の対処法
しかしながら、特に症状はないけれど、なんとなくしんどい、だるいということもあるのではないでしょうか。
その場合は、自分と向き合う時間をとり、原因を探ってみることも大切です。
仕事のはかどり具合を振り返る
まずは、「今与えられている仕事をしっかりこなせてるか」を振り返ってみましょう。これまでのように仕事ができなくなっている場合は、「思考力や集中力の低下」というSOSサインかもしれません。
精神的な理由が大きく関わっていることが多いため、内科ではなく最初から精神科や心療内科に行っても構いません。
自分ひとりだけで抱え込んでいると、状況が悪化するケースもあります。早めに「気づく」という意味で、カウンセリングを受けるのもおすすめです。
しんどい原因を探る
「与えられてる仕事はなんとかこなせてるし、なんだかしんどいけど特に身体的症状も見られない」、「先に挙げた3つの変化のどれにも当てはまらない」という人もいるのではないでしょうか。
実は「仕事がしんどい」と感じている人はこのケースがいちばん多く、目立った症状もないので、病院に行っても対処法が難しいということがあります。
この場合は、「しんどい原因」を探っていかなければいけません。仕事の内容なのか、仕事量なのか、人間関係なのか…自分自身を見つめ直し、ストレスの原因を言語化できるようにすることがとても重要です。
「しんどい」と感じるストレス源の見当がついたら、解決するためにアプローチを考えていきましょう。ストレスの原因別対処法については今後お伝えしていくので、ぜひ参考にしてください。
自分を守るために大切なのは「違いに気づく」こと
病院へ行くこと、特に精神科や心療内科を受診することはハードルが高いと思うかもしれません。
私のところを訪ねてきてくれる方を見ていると、かなり重症になってからいらっしゃるケースがとても多いです。しかし、会社があなたのしんどさに気づいて助けてくれるわけではありません。自分の体は自分で守るしかないのです。
自分の体の声に耳を傾ける。これまでの自分と比べて、何か変わった部分がないかを振り返って早めに専門の医師に診てもらう。どうか、些細な変化を見逃さずに、自分を労ってあげてくださいね。
PROFILE 井上智介
取材・構成/水谷映美