オフィスワークする女性のイメージ

仕事で評価されていない気がする。できない人と思われていたらどうしよう。「このような悩みには自己肯定感が深く関係しています」と話す心理カウンセラーの山根洋士さんに、“自己肯定感の低さ”と、“仕事への影響”についてお話を聞きました。

「仕事の結果」を「自分の価値」と思い込む人がいる

「自己肯定感の低い人は、“自分の価値”と“仕事ぶり”を一緒だと思い込んでいます。だから、自分には価値がないと思っていると、仕事で評価されていない気持ちになったり、ここにいる意味はないかも…と、悲観的な考えをもちます」

 

この思い込みのせいで、「私は仕事ができないからダメな人間だ」と自分の価値を勝手に決めつけてしまうのです。周囲から見て仕事ができる人でも、自己肯定感が低く自分に自信がなければ、「もっと努力しなくては」「今のままではダメだ」と過小評価します。

 

自分に価値がないと思うことは「間違ったらどうしよう」「失敗したらどうしよう」など、必要以上に大きな不安を生み出します。

 

「ありのままの姿を受け入れられない考えをもつと、自分の弱さを人に見られるのも嫌がります。そして、目立つのを怖がり周囲を避けようとします。目立たないように行動しようと、どんどん消極的な姿勢になっていくのです」

仕事力をアピールする人は自己肯定感が低い?

「自分の弱さを見せられなくなると、人間関係で問題が起こりやすくなります。自分の非を認める『ごめんなさい』や『ありがとう』といった、謝罪や感謝の言葉が言えなくなるのです」

 

こうなってしまうと、自分を守ろうとするあまり、周囲からはよくない態度だと思われてしまいます。

 

「なかには、自己肯定感の低さと向き合わず、周囲に自分をよく見せようと、『自分はタイピングが速いから優秀だ』『書類作成がとても得意だ』など、自分の“すごさ”をアピールする人もいます。このようなアピールも、職場では浮いてしまいますよね」

 

さらに、自分に価値がないと思うからこそ、自分で物事を決められないのだと山根さんは指摘します。「これで間違っていたらどうしよう」「自分を信用できない」と迷いが生じると、些細な判断もできず、日常業務に支障をきたします。

 

そうした消極的な姿勢が増えれば増えるほど、会議で発言などもできず、責任のある立場も避ける傾向が見られます。結果的に、営業成績や昇進・昇給にも大きな影響を及ぼします。

仕事のミスが頭から離れない人に必要なトレーニング

仕事に関する不安を軽減するためには、自分を客観的に見る機会をつくることが有効だと山根さんは話します。落ち込んだり、モヤモヤした気持ちを抱えたりする前に、冷静に自分の状況を見て、心がヘトヘトに疲れてしまうのを事前に防ぐ必要があります。

 

「そこで、心のエクササイズ『水洗メンタル法』をご紹介します 。嫌なことがあったら、できるだけ早くトイレに行って、トイレットペーパーで嫌なものがついていそうな体の部分を拭いて、トイレに流してみるだけ。簡単なエクササイズです」

 

たとえば、PCの打ち間違えをしてしまったケース。(PC入力した)手を見ると、そのミスが頭から離れないときは、手を拭いてみましょう。いったん、席を離れてトイレに移動するだけでも冷静になれますし、「体についていた嫌なものは流したから、もうここにはない」と思うと、気持ちも少し軽くなります。

 

そして、自分で物事を決められない人に対して、山根さんから自分で選択するための「トレーニング」の方法も、教えていただきました。

 

「買い物で自分の好きなものだけを買いましょう。高いものでなくても大丈夫、食べ物や日用品など、ふだん購入するものでいいんです。『私はこのパンが好き』『この洗剤がいいと思う』など、自分で選ぶ感覚を大切にしてください。自分で意識してモノを選ぶと、誰に何を言われても絶対にこれがいいと思える自分軸の目安を見つけることができます」

 

 

仕事でうまくいかないのは、自己肯定感の低さも一因。でも、ムリに高めようとしなくてもいいんです。失敗してしまったときは、トイレに駆け込んで負の気持ちごと流してしまいましょう。優柔不断な自分と向き合いたいなら、いつもの買い物で自分の選択を大切にしてみてください。「今日はちょっと頑張れそう」、そんなふうに思えるきっかけになるかもしれません。

 

PROFILE 山根洋士さん

一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン(会長)/心理カウンセラー。8000人以上の悩みを解決。心理学だけではなく、経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。Twitter(@yamane_hiroshi)をはじめ、YouTube「メンタルノイズ心理学 山根洋士【公式】」 でも自己肯定感などの情報を発信している。

文/廣瀬茉理