衣類のお手入れで、面倒なことといえばアイロンがけ。なかなかキレイに伸びないシャツやブラウスのシワにウンザリした経験はありませんか?助けを求めた先は、洗濯王子の愛称で人気の洗濯家・中村祐一さん。シワがつきにくい洗い方と、アイロンがけのコツについて、教えてもらいました。

目次

シワを防ぐポイントは「洗濯時の脱水時間」

洗濯時にできるだけシワをつけないようにするには、「脱水」時間を調整しましょう。

 

実は、洗濯機の自動コースの場合、脱水時間はだいたい5分前後に設定されていますが、場合によっては絞りすぎてしまっていることがあります。

 

家庭で洗濯する際には、下着やタオルなど色んな衣類を一緒に洗いますよね。脱水が長いと乾くのが早いのでは、と思いがちですが、乾かすだけでなくシワのことを考えると、最適な脱水時間は変わってきます。

 

例えば、薄手のTシャツや下着の場合は、1分くらいで十分なのですが、それだと厚手のタオルや靴下などは、乾きにくくなってしまう。

 

しかしながら、乾きにくいものに合わせて脱水時間を長く設定すると、薄手のものは絞りすぎになり、どうしてもシワになりやすいのです。

 

衣類を分けて洗う余裕があれば、洗濯物に応じて脱水時間を調整するのが理想ですが、まとめて洗う場合でも、3分くらいを上限にしてみてはどうでしょうか?

 

脱水時間が細かく設定できる洗濯機であれば、最初の脱水は1分に設定し、洗濯後に追加で厚手のものだけ3分程度脱水するというように、調整ができるといいですね。

 

ちなみに、形状記憶のシャツやブラウスの場合は、脱水をせずに濡れ干しをするとシワになりにくく、元の形状に戻りやすくなります。

アイロンの正しいかけ方 「湿らす・乾かす・冷やす」の3ステップ

とはいえ、洗濯では当然防ぎきれないシワもあります。このときに登場するのがアイロンですね。

自宅の洗濯アトリエでアイロンがけをする中村さん(写真提供/中村さん)

アイロンをなかなか綺麗にかけることができないという悩みもよく聞きます。シワを伸ばすコツとしては、3つのステップを押さえておきましょう。

1.衣類を湿らし、繊維を緩める

まずは、アイロンのスチーム機能や霧吹きを使って、衣類を湿らせ、繊維を緩めてあげましょう。最初にこれをやらないと、衣類のシワをしっかり伸ばすことができません。

 

髪についた寝グセで考えてみてください。水で濡らさないと寝グセが取れにくいのと同じで、一度ついてしまったシワを伸ばすには、水分で生地を緩めるという作業が必須なのです。

 

逆転の発想で考えると、洗い終わりの濡れた状態なら、シワが伸びやすく、形が整えやすいということになります。

 

ですから、アイロンがけがめんどうな場合や、しつこいシワを防ぐためには、脱水時間の調整と、干す際、気になるところを引っ張ったり叩いたりして形を整えるというのもひとつの手。

 

特に、なかなかシワが取れない綿100%のYシャツなどは、洗ってすぐ、そのままアイロンがけしてしまうのもいいですね。

 

ただし、完全に乾かすのには時間がかかるので、一度乾いてから霧吹きなどで湿らせた後、アイロンをかけるのをおすすめします。

2.水分を、かけ面の熱で乾かしながらシワを伸ばす

次に、スチームや霧吹きで与えた水分を、アイロンかけ面の熱で飛ばして乾かしていきます。

 

ときどき、アイロンのスチームを出しっぱなしにしている方がいますが、これだと衣類が緩みっぱなしになってしまい、シワが後から戻ってしまったり、仕上がりに張りもでません。

 

コツとしては、アイロンの重みを感じながら、ゆっくり動かしていくこと。それほど力を入れなくてもシワが楽に綺麗に伸びます。

3.忘れがちなもうひと手間は「冷やす」作業

意外と忘れがちなのが、シワを伸ばした後、生地を冷やし粗熱を取る作業です。

これも、髪のセットで考えるとわかりやすいかもしれません。ドライヤーで乾かしたあと、もうひと手間、冷風を当ててあげると、髪が綺麗に整いますよね。

 

冷やす工程がないと形がセットされないので、シワが戻ったり、かけ終わって生地を動かした時に、新しくシワを作る原因になってしまいます。

 

アイロンがけもまったく同じです。水分を乾かしたあとに粗熱をとって固定をしてあげると、そのかたちがキープされるので、仕上がりに圧倒的な差が出ます。

脱水時間の調整とポイントを押さえたアイロンがけが時短につながる

衣類のシワを防ぐために、まずは洗濯時の脱水時間を調整しましょう。

 

そして、できてしまったシワは、3つのポイントを押さえたアイロンがけで解消するのが、効率がいいし、本質的な時短にもつながります。

 

衣類の汚れを落とすだけでなく、心地よく纏える状態に整えることも、快適な暮らしには欠かせません。

 

日々当たり前にやっている洗濯を改めて見直していくこともときには重要です。基本のコツをしっかり押さえて、洗濯から心地よい暮らしをつくりましょう。

 

PROFILE 中村祐一

洗濯家・愛称「洗濯王子」。1984年、長野県伊那市生まれ。洗濯から考える「よりよい暮らし」の提案をはじめ、「衣」文化の革新にも積極的に取り組む。各種メディアにも多数出演。

取材・構成/大熊 智子