「夫唱婦随」の言葉もめったに聞かれなくなりました。夫と妻とは立場は対等。そのほうがお互いに生きやすいはずで、そう願っている妻も増えてきています。ところが、なかにはそうではない女性もいるようです。

冷蔵庫が壊れたときの「妻の言葉」にとまどう夫

妻のことは好きですが、と前置きしたうえで「ちょっとげんなりすることもある」と本音を話してくれたのは、会社員のユウキさん(40歳・仮名=以下同)です。

 

30歳のとき、2歳年下のリョウコさんと1年半の交際を経て結婚、今は9歳と6歳の子がいます。妻は結婚後も仕事を続けていますが、ユウキさんの両親が近くに住んでいるため子育てには協力してくれているそうです。

 

 

「妻はやり手の営業ウーマン。仕事が好きで、アイデアや決断力があって、人づきあいも上手。うちの両親なんて、完全にリョウコのファン(笑)。僕が妻のことをグチろうものなら、『あんたが悪いに決まってる!』と、おふくろに怒られるくらい」

 

そんなテキパキ仕事ができる人なのに、家のこととなると、「僕に責任をなすりつけたがるのがわからない」と、ユウキさんは言います。

 

「些細なことなんですよ。たとえば先日、冷蔵庫が壊れたんです。『新しいのを買う』というから、『どれでもいいよ、適当に決めて』と言ったら、『それは困る』と。冷蔵庫はないと困るから、量販店のネット通販で即決めて買えばいいだけのことじゃないですか。

 

置く場所は決まっているし、大きさもほぼ決まってくる。そうしたら『いや、あなたが決めて』と。ネットで買うのが面倒なら、妻の会社の近くに量販店があるから『昼休みにでも行って決めてもいいよ』と言ったら、『そういうことじゃない』と」

「決めてよ」と言いつつ妻が放つカウンター

意味がわからなかったユウキさんですが、話しているうちに、「大型家電を買うときは夫が決めるべき」と、リョウコさんが思っていることが判明。

 

「なんで?と僕の頭の中は疑問符だらけ。うちは収入も支出も透明にしているから、どっちが買おうと、あとで割ればいいだけの話。よく聞くと、お金のことではなく、『家族に関わることに関しては夫が決めるべき』と、考えているのだとわかりました」

 

どれを買おうとかまわないと、ユウキさんは思っていました。ただ、妻は「責任をとるのは夫」と考えているようなのです。

 

そういえば、思い当たる節があったとユウキさんは言います。

 

「結婚当初、どの新聞をとるかの話になった時も、リョウコは『あなたが決めて』と言っていたし、家族旅行の計画も、僕が『どこでもいい』と言っても、『決めてよ』の一点張り。

 

それでいて、決めたことに文句を言うのも妻。だったら自分で決めろよと何度か言い争いになったこともありました。仕事では責任ある立場で、判断も早いと妻は言われているようですが、家のことは決めない姿勢がわからない」

 

そのことを指摘したところ、リョウコさんは「だって夫が決めるのは当然でしょ」と言い放ったそう。

家を買うときどうなるのか夫の悩みは続く

「妻のダブルスタンダードがわかりました。おそらく自分で決めてあとから何か言われるのが嫌なんでしょうね。仕事だったら責任とれるけど、家庭のことでは責任をとりたくない。

 

『それはおかしいでしょ』と話したんですが、相容れなかった。相談して、ふたりで決めようとすると、妻はそういうときはあまり意見を言わないんです」

 

そろそろ家を買おうという話があるそうですが、ユウキさんはこの人生最大の買い物に今から頭が痛いと言います。

 

「冷蔵庫とは比較にならない買い物です。妻も子どもも自分の意見は率直に言ってほしい。お互いの本音を言ったうえで、相談していかないといけないのに、妻の得意の『あなたが決めて』をやられたら困る。『決めて』というからには文句を言わないと一筆書いてもらおうかと思っているほどです」

 

夫を立てるべきだと思っているのか、染みついてしまった考えなのかはわかりません。ただ、ユウキさんが言うように「夫婦や家族で話し合っていく」ことが何より大事なのはたしかでしょう。

 

どちらかがどちらかに任せると言った時点で、話し合いを放棄することになりかねません。それは、夫婦の関係を構築していく上で決していいことではないはずです。

 

冷蔵庫を買う際、最後は夫に委ねる妻
家を買う際も決定を委ねられそうで不安な夫
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。