入試会場に向かう親子

「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、受験スケジュールにおける“午後入試”ついて。

 

子どもの負担になるのでは?と心配ですが、「メリットが大きく、今や多くの受験生が活用している」と富永さんは言います。その理由とは…?

午後入試で1日2回受験が可能に

2月1日からスタートする東京・神奈川の中学入試。その東京・神奈川や近畿圏で、多くの学校が午後入試を実施しています。

 

午後入試というのは、文字通り、午後に実施される入試のことです。

 

通常、入試は午前中、場合によっては昼過ぎまで実施されます。午前中の入試を受けた後、午後入試も受ければ、1日に2回受験ができるというわけです。

 

午後入試を早くから導入したのが男子校の高輪で、算数1科目入試を実施して注目を集めていました。その後、東京都市大学付属が2科目午後入試を始め、広尾学園や三田国際といった新興校が次々と導入。多くの受験生を集めています。

 

ここ数年は、その流れに伝統校も続くようになりました。男子校の世田谷学園、巣鴨が午後入試を始めたのは驚きでした。女子校も、普連土学園、香蘭女学校、山脇学園など多数の学校が導入しています。

2月1日の午後入試はもはや常識

「わが子が1日に2回も入試をこなせるのだろうか」と心配する保護者は多いです。

 

確かに体力的には大変なのですが、結論から言うと、2月1日に午後入試をするのはもはや常識。

 

午後入試を利用して早めに合格を確保しておいたほうが、トータルで消耗せずに済むからです。

 

午後入試を使わない場合、2月1日の受験校が不合格・翌2日の受験校の合否がわからない不安な状態で3日の受験に臨む…というケースがよくあります。そうなるとなかなか調子が上がらず、2月4日、5日まで受験し続けるはめになることも。

 

ほとんどの場合午後入試は、当日夜に合否がわかります。さらに、最近は前日深夜または当日朝までネット出願できる学校も多い。

 

だから、1日に合格を確保できれば、2日以降に難しめの学校にチャレンジ、合格できなければ、2日以降はより安全な学校に出願…と柔軟に対応することが可能になるのです。そうして、3日までに受験を終わらせる家庭が今はほとんどです。

 

午後入試の利用で、よりわが子にあった戦い方を選ぶことができるわけですね。

 

うまく使えば、「休む」ことだってできます。

 

2月1日の午前か午後どちらかに合格できたら、「2日は休んで3日に備える」、あるいは「2日午前は休んで午後は難しめの学校、例えば広尾学園医進・サイエンスコース受験に備える」という受け方です。

 

もちろん、1月に実施されている千葉・埼玉の受験で、渋谷学園幕張や栄東など「通いたい・通える」学校にすでに合格できているのなら、午後入試を選択しない手もあります。

事前シミュレーションを忘れずに

午後入試の利用で臨機応変な受験が可能になる分、受験期間中は毎日「明日はどう動くか」決断を迫られることになります。

 

受験期間中は子どものケアも必要となり、保護者も余裕がなくなります。受験スケジュールを決めたらそこで安心せず、事前シミュレーションもしっかりしておきましょう。

 

1日の午後が不合格だったら、2日の受験校を差し替えるのか、それには1日何時までに受験申し込みをすればいいのか、申し込みに必要な書類は何か、受験料はどう支払うのかといったシミュレーションです。

みんながやっている情報収集方法

そもそも受験スケジュールを組むためには情報が必要です。

 

まずは、塾や書店で販売されている学校名鑑を入手しましょう。各学校の教育方針、進学実績、学費、設備などの基本情報が載っていて、志望校の比較も容易です。

 

最近は学校のホームページも充実しています。コロナ禍の事情に配慮して、学校紹介動画がアップされていたり、イレギュラーな学校説明会の告知が出る場合もあります。

 

もちろん募集要項はしっかりチェックしてください。受験日や出願締め切り、学費納入期限のほか、「複数回受験なら優遇」などの情報も載っています。

 

各塾でも学校情報の提供をサポートしています。学校紹介動画をアップしている塾もありますよ。

 

午後入試が増えた分、受験スケジュールは複雑化しています。

 

保護者は学校の情報を集め、プロである塾の先生に相談しながら後悔しない作戦を立てて欲しいと思います。

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午後入試を活用すれば、受験スケジュールの可能性は広がります。

 

その分受験スケジュールは複雑になるので、保護者はしっかりと情報収集し、綿密な作戦を立てましょう。事前シミュレーションまでしておくことが大切です。

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ