カリスマ的な人気を誇ったモデル時代を経て、現在は執筆業やプロデュース業など幅広く活躍している押切もえさん。私生活では、3歳長男、0歳長女の2児の母です。

 

さまざまな挑戦を経て、前向きに変化していく押切さんですが、もちろん迷うこともあったそう。挑戦への向き合い方について伺いました。

一歩踏み出すことで新しい風が吹く

私は子どものころから好奇心が強くて。恥ずかしがりやで気が弱いところもあるんですが、新しい体験は楽しめる方なんです。

 

初めて長編小説を執筆したときは、怖いよりも「やってみたい!」という思いがずっと強かった。20代でフルマラソンに挑戦したときも、不安よりワクワクする気持ちのほうが大きかったんです。

 

でも、挑戦したからって最初からうまくいくものではないですよね。

 

小説でいえば、受けたあとから「どうやって書いたらいいんだろう…」と試行錯誤しましたし、生みの苦しみも経験しました。

 

フルマラソンも、当時はあまり運動をしていなかったので、走ってみたらすごくキツかった。

 

だけど、何とか走りきって、ゴールした直後に「来年も走ります!」と宣言していました。

 

それは「あのときの失速がなかったら目標タイムを切れたかも」など、次の成長につながるポイントが見えたから。

 

「一歩を踏み出さないと何も起きない」とは、よく耳にしますが、自分が行動しなければ、人生に新しい風は吹いてこないと思います。

言い返せない自分を支えてくれたもの

初めての執筆は大変だったけれど、だからこそたくさんの学びがあって、次の短編小説集『永遠とは違う一日』につながったと感じています。

 

あのとき、「モデルが文章を書くなんて…」という声は少なくありませんでした。

 

本好きな方々からも「どうなの?」と言われましたし、年下のモデルさんから、「本当に好きで書いてるんですか?」「いったい何のためにやってるんですか?」と、直接聞かれたこともありました。

 

そのとき、即座に「本当に好きでやっている」と伝えられなかったことを反省しているのですが、「人数は多くなくても、応援してくれる人を大切にしよう」と強く思ったのを覚えています。

 

今、新聞で書評委員という大好きなお仕事を務めさせていただけるのも、好奇心のままに挑戦して、学びながら少しずつ前に進んできたことが繋がっているのかなと思っています。

マンションプロデュースの打合せをする押切さん
マンションプロデュースなど、仕事の幅が広い押切さん

『AneCan』へ移るときに考えたこと

人生には就職や結婚、転職など、ステージが変わるときがありますが、新しい変化は不安を伴うこともありますよね。

 

私自身も『CanCam』の専属モデルとして楽しくお仕事させていただいているときに、そのお姉さん版の新雑誌『AneCan』へ移る話を聞いて、嬉しい反面、やはり戸惑いもありました。

 

そのとき、なぜ自分が揺れているのか、よく考えてみました。スタッフやモデルのみんなといろいろなことを乗り越えて信頼や結束力を築いてきた『CanCam』への愛着と、その場から離れる寂しさ。一方で、新しい雑誌にゼロから関われるというクリエイティブな好奇心。その上で、たくさん編集の方と話していくなかで、いい雑誌ができそうなイメージが湧いてきました。

 

最終的には、「よし、周りのみんなを信頼して、自分もベストを尽くして頑張ろう。移ってよかったねって言われる雑誌を作ろう!」と気合いが入りました。

 

もちろん、あのとき『AneCan』に行ってよかったな、と今でも思っています。

人生の決断は“勇気”でするものじゃない

人生の選択で、不安になったり、迷ったりしたときは、自分の心ととことん向き合うことが大切だと思っています。

 

ただ時間だけをかけて悩むということではないんです。自分の考えをきちんとわかりやすく整理するということ。紙に思いや希望、メリットとリスクを書きだすのも自分の頭のなかを客観視できていいですね。

 

ときには自分の直感を信じるのもアリです。ただ、ちょっとでも危険な匂いがするときは必ず止まる。怖いならやめます。勇気だけで乗り越えちゃダメなこともありますからね。考えて考えて、「これなら行けるかも」というところが見えたらGO!です。

 

私の場合、熟考した上でそれでも迷うようなときは、「ワクワク」するほうを選びます。そうして、ずっと成長していければいいですね。

 

PROFILE 押切もえ

oshikirimoe

モデル・文筆家。高校1年のときにスカウトされ、ティーン誌の読者モデルに。女性誌『CanCam』の専属モデルを経て、TV、ラジオなど、幅広く活躍。2013年には小説家デビューし、文筆活動も行う。私生活では2016年に結婚。現在2児の母。

取材・構成/相川由美