結婚生活も10年を越えると、何も言わなくてもパートナーの言動がわかる人もいるでしょう。逆に、「夫のことがわからなくなった」と嘆く人も…。慣れからくる甘えなのか、もともと相手を見下していたのか。いずれにしても快適な生活を阻害するのは「罪悪」に近いものがある、とある女性は思っています。
風邪気味の妻が送った「早く帰ってきて」に夫は…
「うちの夫、つきあっているときは穏やかでよく笑う人でした。明るい家庭が作れると思って結婚したのに、子どもが生まれるたびに不機嫌が増していく。家が落ちつかないと言うけど、小さな子がいるのだから仕方ないですよね」
どうしたらいいのか途方に暮れるときもあると嘆くのは、キョウコさん(40歳・仮名=以下同)です。29歳で4歳年上のシンイチさんと結婚、30歳で長女を、33歳のときに双子を出産。現在はパートで働きながら、家庭はほぼワンオペで取り組んでいます。
「子どもたちが小さいとき、風邪をひいたので夫にSOSを送ったんです。“早く帰ってきて”と。そうしたら夫は『わかった。食べて帰るから』って。そうじゃない、子どもたちに食事をさせないといけないのに…と呆然としました。結局、私がフラフラの状態で簡単なものを作って食べさせましたが、夫は深夜、酔って帰ってきたようです」
夫は両親が40代になってからのひとりっ子。べったりとかわいがられて育ったそうです。結婚を考えるようになったのは、彼が母を亡くしたから。彼のつらさを知って、キョウコさんは「私がそばにいてあげたい」と結婚したのです。
「夫は“自分をいちばん大事にしてほしい”気持ちが強い。でも、私は自分の命より子どもが大事。それがわかった夫は、少しずつ不機嫌になっていったんじゃないかと思います」
「味つけが子ども向け過ぎる」と文句を言う夫
一方のキョウコさんは、横暴な父のもと、母と妹と3人でときに怯えながら過ごしていました。
「口より手が出る父でした。妹とケンカして、父が注意する。私が『だって』と言い訳しようとした瞬間、手が飛んでくるんです。さすがに高校生の頃、思いきり反抗してから暴力はおさまりましたが、それでも急に怒鳴ることはありました。だから私、大人になってからも誰かに大声を出されると固まってしまうんです」
夫は時々、理由がわからず大声で怒ることがあるそうです。“何が原因で、何が気に入らないのか言ってくれないとわからない”と、抗議したこともありました。
「家の雰囲気が悪い、リラックスできない、と怒鳴り散らして夫婦の寝室に入っていく。こうなると私は寝室で寝られません。しかたなくソファで寝ます。それがまた夫の不機嫌を加速させることになるんですが…」
食事の味つけが、子ども向けすぎると怒られたこともあります。目の前でおかずをゴミ箱に捨てられたことも。
「だったら“自分で作ってよ”と言うと、今度はご飯茶碗を投げつけられました。子どものいる前ではやりませんが、子どもたちが寝た後に夫が帰ってくると恐怖しかありません」
夫の部下から言われたひと言が意外すぎて
子どもにかかる費用は惜しまない夫ですが、自分から子どもと遊ぶことはほとんどありませんでした。
最近は少し大きくなった子どもたちと話すようになりましたが、「小さいときは意思疎通が難しいから、話したくなかったんでしょう。父親の認識が低いですよね」とキョウコさんは言います。
自分が妻に癒やされたいのに、妻の関心は子どもたちにしか向いていない。それが悔しくても、大人のプライドとして表立って甘えるわけにもいかない。シンイチさんはそういうタイプのようです。
「私は夫の母親じゃありませんからね。父親であり夫である自覚をどうしたらもってくれるのか…。そして、理由なく不機嫌になるのは家族に対してのパワハラ、モラハラだとわかってもらいたいですね」
ところが先日、たまたま用があって夫の部下が自宅に来たときのこと。
「部下の方が、『部長は出世頭で、いばることはまったくなく、僕らは尊敬してます』と言うんです。びっくりです。“今度、他の方と一緒に遊びに来て”と思わず言いました。会社での夫は、独身時代、私が感じていたのと同じイメージを貫いているみたいで…。私も夫のことをもう少し理解したほうがいいのかなと思っています」
再確認できた夫のよさ。これから、夫婦関係が変わっていく可能性はあるのではないでしょうか。