カリスマ的な人気を誇ったモデル時代を経て、現在は執筆業やプロデュース業など幅広く活躍している押切もえさん。私生活では、3歳長男、0歳長女の2児の母です。

 

10代のころから、ファッション界の第一線で輝いていた押切さんの仕事観とは?そこには私たちの知らない葛藤がありました──。

大事な人たちを裏切らないでいたい

結婚してから、仕事に対する考え方はすごく変わりました。

 

育児や家事をしっかりやりながら毎日を豊かな気持ちで過ごせることが最優先で、そのうえで少しでも自分を生かして社会のお役に立てることがしたい、と思っています。

 

最近では、アロマのアルコール・スプレーをプロデュースするお仕事をいただきましたが、毎回お引き受けするときは自分なりの軸というものがあるんです。

 

本当に自分がいいと思ったものやことをお伝えしたい。それを販売するにあたって、ファンの方たちを裏切りたくないという軸です。

 

今回も、品質はもちろん、その会社が企業のため、社会貢献のために尽力されているところが素晴らしい!と思い「ぜひご一緒させてください」とお伝えしました。教えてもらえることも多く、結果としてとてもいい経験になりました。

 

実際、アロマのことを学んでいくうちに楽しくなっちゃって、アロマの資格も取りました。

白いシャツを着た押切もえさん
仕事に対する価値観の変化を語ってくれた押切もえさん

どんな仕事も楽しかった20代が…

もともとアルバイトをいろいろしていたせいか、どんな仕事のなかにもおもしろいポイントを見つけるのが得意なんです。

 

単純作業も「こうやったら効率がいいな」とか、昨日よりもできるようになってクリアしていくのが好きなんですよ。

 

モデルの仕事でも、「これを着こなすのはさすがに無理なんじゃ…(笑)」という個性的な服もあったりしたんですが、そんなときも、むしろ「私の出番だ!」と工夫して楽しんで仕事をしていました。

 

それがちょっと苦しくなってきたのが、今、思えば30代半ば頃ですね。

 

単純に休みが少なくて疲れていたこともあると思います。

 

長年、髪型や私服の制限もあって、自由が少ない日々に抵抗を感じるようになった時期があったんです。

 

でもそんな時期があったからこそ、絵を描くことや小説を書くことなど、ゼロから創作できる作業がひときわ面白く感じられ、没頭できたんだと思いますけどね。

心が折れそうになった仕事も経験した

普段、たくさんの学びをいただくテレビの収録でもときどき、心が折れそうになったことがありました。

 

番組で私が私自身について語るときに、「最後に“寂しい”と言う」という演出がついたんです。

 

そのときはとくに寂しくなかったから、戸惑ってしまって。思いきって「私、寂しくないんですけど」って言ってみたんですね。

 

でも、「そう言わないとオチがないんで。言い返すのもイタイですよ」とハッキリ言われちゃって。6、7年前とはいえ今とはちょっと風潮が違っていて、そんな雰囲気でしたね…。

 

今はもしも本当に「違うな」と感じたら、もう少し言い方を変えたり、折衷案を伝えて交渉することもできるようになったと思います。

 

「Aでやってください」と言われて、難しいなと感じたら、「じゃあ、A寄りのBはどうですか?」みたいな(笑)。

 

あとはお仕事を受ける前の時点で、「こういうことはできないんですけど、それでも大丈夫ですか?」って、ふんわり優しく聞くこともできるようになったかなぁ。

 

当時は本当に不器用で、つらいことが続いても「仕事はそういうものだ」と思って、自分だけで抱えて肌荒れしたり胃を痛めたりしながら受け容れていたけれど、今は無理せず周りにも迷惑をかけない方法がわかってきました。

 

内容によっては、信頼できるマネージャーさんや周りの人にも相談して、そのまま進んでほしくないときはいったん止めて考え直して、当日に不安になることがないように解決しています。

 

いろいろなお仕事をさせていただくなかで、やっぱり自分に誠実で素直でいることが、私にとっていちばん大切だと思いますね。

 

PROFILE 押切もえ

oshikirimoe

モデル・文筆家。高校1年のときにスカウトされ、ティーン誌の読者モデルに。女性誌『CanCam』の専属モデルを経て、TV、ラジオなど、幅広く活躍。2013年には小説家デビューし、文筆活動も行う。私生活では2016年に結婚。現在2児の母。

取材・構成/相川由美