仕事を依頼したら、相手からは「わかりました」「任せてください!」と自信満々の返答。安心して任せて、実際にフタを開けてみると、期待ハズレのものができあがっていた…。どうしてこうなった?プロコーチとして多数の現場をみてきた斉藤由美子さんにうかがいました。
「わかった」と「わかったつもり」の違いは自覚しにくい
「“わかった”って言ったのに!」とイラ立つ気持ちもわかります。しかし、相手だってそんなつもりはなかったはずです。ほとんどの場合、自分と相手の“求めるイメージ”がズレているのが原因ではないでしょうか。
原因は、以下のようなケースが考えられます。
①依頼された相手が「わかったつもり」になっている
本人がわかったつもりでも、他人から見ればわかっていないことも。「わからない」ことは自覚しやすいですが、「わかったつもり」は、相手のみならず、自分でも判別しにくいものです。
②自分が「教えたつもり」になっている
自分は明確に指示を出したはずが、実は「曖昧に」頼んでいるケースは多いです。例えば、いつもホットコーヒーを飲む人が、「コーヒー買ってきて」と頼んだら、アイスコーヒーでガッカリしたなんてことも。
③自分と相手の知識・スキルに差がある
人は、自分が知っていることやできることを、相手も同様にできる前提で話してしまいがち。例えば「英語が話せる」といっても、日常会話ができる人もいれば、ビジネスの専門的な話ができる人も。知識やスキルのレベルが違えば、仕事の成果にも差が生じます。
理解の境界線を一緒に引いていく
①〜③のいずれのケースにせよ、お互いのイメージのズレを埋めるには、伝えた内容の「理解できていること」と「理解できていないこと」の境界線を一緒に引いていく作業が必要になります。
指示をしたら、相手がこちらの意図を理解しているかを確認するのは大前提ですが、単に「わかった?」と聞くのでは不十分。「何を、どのくらいわかっているのか」を具体的に確認するのです。
依頼をしたら、どんな手順で進めようと思っているのかを聞いてみましょう。仕事の内容を細分化して、進めるイメージが持てているかが、「わかったつもり」と「わかった」を見分けるコツです。
自分の伝え漏れがあれば補足できますし、認識が違うところも発見しやすくなります。どう進めるかをムダな作業をしようとしていないか、進め方に不安があれば途中経過を見せてもらう約束もできます。
さらに、知識やレベルの差を埋めるには、言葉で確認するよりもイメージを可視化するほうが早いケースも。例えば、求めるイメージに近い資料を見せて、相手が同じレベルのものを仕上げられるかを確認する。あるいは、相手がこれまでに手がけた仕事の実績や成果物を見せてもらえば、どのレベルまで期待してよいのかがわかります。
複雑な仕事になるほど、ズレの修復に時間も手間もかかります。面倒と思うかもしれませんが、仕事の依頼する時点で認識をすり合わせるのが一番の近道です。認識ズレの早期発見・解決を心がけましょう。
監修/斉藤由美子 取材・構成/大浦綾子