うつで2年間の休職…復帰までの体験が描かれた漫画『ぼくのうつやすみ』がツイッターで話題に。多くの人々の共感を得ています。
前回は、作者のミヨシさんに作品の制作背景や、休職から職場復帰への道のりについてお話を聞きました。
そんなミヨシさんが、2年の休職期間を振り返って改めて思うこととは——番外編の描き下ろし漫画『ぼくのやすみあけ』と共にお届けします。
「うつやすみ」明けたからこそわかった気づき
小さな「変化」の連鎖が今の自分に
——今回の番外編には、漫画でうつを発信することでミヨシさんが感じた変化について描かれていますね。
ミヨシさん:
自分のうつのことを発信することは勇気が必要でしたが、たくさんの反響をもらえたので、改めて漫画にしてよかったと思いました。
でも、それだけじゃなくって、さまざまな変化が連鎖していったからこそ「今」がある気がしています。
——それはどんな変化ですか?
ミヨシさん:
正直、復職した最初のころはまだまだつらい時期もありました。
人と向き合うこともつらかったし、その感情によって人を避けることにも罪悪感があって。でも、そう考えるとどんどんしんどくなってしまうので「今はそれでもいい」とまずは自分を認めることからはじめて……
それから、今までなら無理なことでも「大丈夫です!」と言っていたのですが、あまり無理をしすぎないように気をつけています。
なかなか難しい部分もあるので一進一退なんですけどね……でもそれも変化かな、と。
——変化がじわじわにじみ出ているように感じます。ところで、ミヨシさんはなぜご自身をネコのキャラクターにしたのですか?
ミヨシさん:
シンプルにネコが好きでして。それなのに、重度のアレルギーがあって飼うことができません…僕にとってネコは憧れの存在でもあります(笑)。
あとは、人間にすると、自分そのものになってしまうけど、ネコにすることで薄い防護網を張れるような気がしていて。
あんまりかわいいのも違う気がしたので、自分のトレードマークのゲジゲジ眉毛をつけてみたら、しっくりきました。
——なるほど。でも緑色のネコって珍しい気がします。
ミヨシさん:
緑色って、成長過程というか、植物の成長=「育む」というイメージがあるんですよ。自分もまだまだ成長途中で「これから成長・変化していこう」という想いをこの色で表現したいな、と。
——さすがデザイナーさん!コンセプトも素敵です!
手を動かすプラモデルの趣味に救われた
——生きづらさを抱える人やコロナ禍で鬱々としている人に向けて、ミヨシさんご自身の経験からなにかアドバイスはありますか?
ミヨシさん:
改めて思ったのは、仕事以外の趣味って大事だな、ということです。没頭できるならなんでもいいので、自分の好きなことをする時間は持つようにできるといいかもしれません 。
僕の場合はプラモデルでしたが、創造系の趣味に心が救われました。なにかを消費するよりも、創造するほうが達成感があるんです。やっぱり手を動かすことは大切だなって。
絵、パッチワーク、園芸…なんでもいいと思います!作ったものを人に見てもらうのも張り合いが出ますし、あるいは、自分で眺めて「いい感じにできたな〜」って自己満足に浸るのもいいと思います。
——クリエイティブな作業は達成感が得られる!はすごくわかる気がします。作品を通して伝えたいことを教えてください。
ミヨシさん:
『ぼくのうつやすみ』はあくまで僕の体験を描いた漫画なので、うつのすべてを説明できるわけでもありません。でも、あのときの苦しさから抜け出せたことは、大きな経験でした。
漫画の全てに共感できなくても、部分的にでもいいので、読者のみなさんの心に響く「なにか」があれば、とてもうれしいです。
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漫画『ぼくのうつやすみ』は、CHANTO WEBで連載がスタートします!ミヨシさんの2年の休職期間に凝縮された、日常のなかにある小さな気づきや変化…私たちにも共鳴する部分があるのかもしれません。
PROFILE ミヨシさん
取材・文/桜木奈央子