子育て中のママ・パパのストレスは、このコロナ禍で以前よりさらに大きくなっているのではないでしょうか。
地域の子育て支援センターへ行くのはもちろん、祖父母との行き来すら憚られる状況になり、孤独感を強めている人は少なくないはず。アウトドア派というわけではなくても、1年以上も続く自粛生活はしんどくなってしまうものです。
「バーチャルの世界」が子育て世代のストレス解消に!?
今回は、そんな閉塞感を払拭する可能性を秘めた「バーチャルの世界」をご紹介します。
自宅にいながら他の人と話したり、キレイな海で遊んだりして気分転換できると、かなりのストレス解消に。
VRコンテンツにもいろいろありますが、おすすめはVR世界のSNS「VRChat」です。他の人と積極的にコミュニケーションを取りたい人にはもちろん、ひとりでのんびり楽しみたい人にも向いています。
特に育児中の人にご紹介したいのが、「VRChat」の世界で開催されている「子育てママパパゆるふわ交流会」。最近メディアでも注目されているこのバーチャルイベントを体験してきました。その模様をリアルにお届けします。
夜22時…寝かしつけが終わったママ・パパがゆるゆる集う
9月某日。開始時刻の22時前から、VRゴーグルを着けて待機。入ってまず最初に目に飛び込んできたのは、リゾート地の素敵な別荘を思わせる場所。玄関から入ると、イベントの主催者・みとちょんさんと共催のつちのこさんの出迎えを受けました。
いつも決まった時間に集合!というわけではなく、子どもの寝かしつけが終わってから、ゆるゆると集まるのが通例だそうです。確かに、3歳のわが子も宵っ張りで、早く寝てほしい日に限ってなかなか寝てくれません。みとちょんさんのお子さんも小さい頃はそうだったと聞いて、すっかり親近感をもちました。
そのうち、参加者が続々と集まってきました。「はじめまして」「よろしくお願いします」のあいさつが追いつかないほどの盛況ぶりです。
ほどよく場が温まってきたところで、この会場の壁に飾られた作品について教えてもらいました。参加者のお子さんの絵や、絵を描いている写真を募集していて、TwitterのDMから応募できるそう。
子どもたちの絵を眺めながら、一同ほっこり。「すごーい!上手」などと話していると、初めての参加者同士でも心の距離がぐんと縮まるように感じられます。
共通の話題をきっかけに、あちこちで話に花が咲きます。例えばベビーカーで出かけたのに、子どもが「抱っこじゃないとイヤ!」となってしまったときの、ベビーカーと荷物と子どもを抱える苦労など…。「子育てあるある話」がそこかしこで交わされ、こちらもつい引き込まれて話し出してしまいます。
わが子はまだ保育園児ですが、小学生のお子さんのママやパパたちは、「登校班」の地域差について情報交換をしたりしていて、「おおー!先輩!」という感じでした。
参加者のお子さんの年齢はさまざまですが、新米ママやパパが育児の先輩と他愛のない話で盛り上がれる場になっていて、とても楽しく居心地がいいのです。
アバターを介して会場の施設やアイテムで自由に遊べるので、庭のプールに潜ってみたり、グライダーで飛んでみたりと、アクティブに楽しむ人も。
リアル世界では仕事に育児にと忙しく、ストレスが解消できない場合が多いものですが、バーチャルの世界なら童心に返るような体験も自由自在。思う存分リフレッシュできるんです。
主催のみとちょんさんは、初参加の人にも気さくに話しかけてくださるので、初参加でも輪に入れずに見ているだけ…という事態には陥らないかと思います。
口下手な人は、無言や小声でも気にせずOKだそう。積極的なコミュニケーションを強要されることなく、ここにいてもいいんだと思えるだけで、気持ちはずいぶんラクになるもの。その場で会話を聞いているだけでコミュニティへの参加意識が生まれ、孤独感は十分癒やされるんです。
さらに特筆すべきは「子どもが起きてきて、騒ぎ声がマイクに入ったりしても問題ない」こと。
実は私も、先日まさにこの状況を体験しました。VRゴーグルを装着して交流会を楽しんでいたら突然寝室の扉が開き、迫るわが子の足音…。こちらがゴーグルで見えていないのも気にせず、膝によじ登ってきます。
内心焦りつつ「子どもが起きちゃって…」と説明すると、皆さん慣れた様子。ゴーグルに接続されているPC画面を珍しそうに眺めるわが子に向かって手を振ったりジャンプしたり、「こんにちはー!」とあいさつしてくれたりして、ホッとしました。
例えば隣で子どもがグズったりしても、あやしながら参加できるんです。「泣き声が入って迷惑じゃないかな?」と気兼ねしなくていいのは安心できますよね。
「子どもが起きてしまったので、すみませんが失礼します」という具合で、あいさつをせずに退室してもいいくらいの、まさしく「ゆるふわ」を目指しているということでした。
プレママからベテランママまで…参加者層は幅広い
そんなみとちょんさんの温かい人柄もあって、参加者はさまざま。「今度生まれるんです」というプレママ・パパもいれば、子育てがひと段落して産前産後の支援活動をしているという方にもお会いしました。前回参加したパートナーに誘われて…と揃って遊びに来るご夫婦もいて、今後さらに賑やかになりそうです。
昨年からのコロナの影響で「人と繋がれる」機会は、本当に貴重になってしまいました。そんななか、「話すだけでラクになることがあるから」とバーチャルイベントを開催している方々の存在は、とてもありがたいと感じました。
ワンオペ育児の状況などでは、大人と話す機会自体が減ってしまいがち。みとちょんさん自身も育児が大変で孤独を感じる時期があり、バーチャルでも「遊びに誘ってもらえなくなるのでは」という不安から、子持ちだということをなかなか周囲に話せなかったといいます。
このイベントはそうした経験がきっかけとなって発案されたものだそう。今年6月の第1回から回を重ねるごとに参加者が増えていて、将来的には「いつでもそこに行けば誰かに会える」場を作りたいと夢を語ってくれました。
でも、「そもそもVRChatって何?」「聞いたことはあるけど、何をすればいいのかよくわからない」という方も少なくないかと思います。実は私もそうでした。
とはいえ、初心者でもそれほど難しい操作が必要なわけではありません。VRゴーグル「Oculus Quest 2」があれば高性能なPCがなくても参加できるので、挑戦してみてはいかがでしょうか。
興味を持った方はぜひ、VRChatで楽しむ「子育てママパパゆるふわ交流会」に遊びに行ってみてください。
取材・文/癒色えも