時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

今回はジャーナリストで東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授の治部れんげさんに取材。女性の働きやすさを実現するためのワークライフバランスについて伺いました。解決の鍵は「保育園の迎えを夫がすること」だと治部さんは指摘します。

長時間労働と家事、育児の分担が各年代共通の課題

── ひと昔前に比べてワーキングマザーが抱える課題は世間に認知されるようになったと思います。治部さんはなかでも、私たちの生きやすさ実現のために、どの課題解決が重要だと考えますか?

 

治部さん:

全年代を通して共通する課題は「長時間労働」と「家事、育児の分担」ですよね。

 

産後も責任ある仕事を続けようとすると、残業が前提になることがまだまだ多い。他の国と比べるとわかりますが、日本のホワイトカラーは無駄な長時間労働をしている傾向にあり、育児との両立が難しい面があります。まずは仕事と家庭の両立を実現するには、この長時間労働を改善する必要があります。

 

また、日本の場合は「家事、育児の分担」がいちばん大きな課題だと思います。

 

内閣府の男女共同参画局が白書を出していますが、特に手のかかる6歳未満の子を育てる家庭において、日本の男性の家事育児負担が少ないことがずっと課題になっています。

 

国際比較を見ると、どの国でも女性の家事育児負担の時間が長いのですが、アメリカ、イギリス、フランスなどの先進国は女性の家事育児時間は男性の2倍。それが日本ではさらにギャップが大きく、5倍強になっています。

 

夫婦の家事、育児分担を平等にしていかないと、企業の育児支援だけでは難しいのではないかと思います。

共働き夫婦のイメージ(写真/PIXTA)

ポイントは保育園の送りではなく、迎え

── 保育園の送り迎えを含めた夫婦の家事、育児負担の平等ですよね。

 

治部さん:

はい。お父さんが朝、ゴミを捨てて、保育園に送るという姿はよく描かれるようになってきました。ただ、総合職で仕事をしている女性はわかっていると思いますが、問題は保育園の迎えなんです。

 

例え残業が必要だとしても、お子さんのお迎えがあれば女性は当然のように職場を引き上げて家に帰るわけです。それを父親が週に2回以上やらない限り、本当の意味で女性の活躍は難しいだろうなと思います。
企業が働き方を変えるとき「お母さんのために」といいますが、そうではなくて、お父さんの働き方も変えないといけない。お父さんも勇気を持って、責任を持って帰って欲しい。

 

たまに男性で時短勤務をとっている人に会うようにもなりました。男性がワーク・ライフ・バランスの取れた良い働き方になることが大事かと思います。制度があるけれど使っていない。男性のお迎えは重要ですよね。

 

 

PROFILE 治部れんげ

治部れんげ
1997年、一橋大学法学部卒業。日経BP社にて経済誌記者、2006〜07年ミシガン大学フルブライト客員研究員、14年よりフリージャーナリスト。18年、一橋大学経営学修士課程修了。現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。著書は『「男女格差後進国」の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する』など多数。

取材・文/天野佳代子