共感的なコミュニケーションを意識しているにもかかわらず、子どもの自己肯定感が低かったり、人と接するのが苦手だったり…。こういった場合、「自分のしつけや育て方が間違っているのでは?」と自己嫌悪に陥ってしまいがち。
しかし、教育評論家の親野智可等さんは「親のせいでも子どもが悪いわけでもありません」と話します。その理由と親ができる対策を教えていただきました。
子どものネガティブ思考は親の育て方のせいなのか?
── 子どもの自己肯定感が低い、ネガティブで他人と接するのが苦手…これって、親の接し方に問題があるのでしょうか?
親野さん:
必ずしもそうとは限りません。人間というのは、「生まれ持った資質」「環境・親」「本人の意思」という3つの要素で決まります。なかでも、最近の研究でわかってきたのは、生まれつきの要素が大きいということ。
ですから、いくら親がポジティブで共感的なコミュニケーションに徹していたとしても、生まれもって自己肯定感が低かったり、ネガティブな子もいます。それは別に誰のせいでもないし、何も悪いことではありません。
育て方が悪いのかな?と自分を責めたり、お子さんの生まれもった資質を受け入れようとせず、「そんなふうに考えちゃダメだっていつも言ってるでしょ!」などと、頭ごなしに叱ることはやめましょう。
肯定的な言葉を増やし、低めの自己肯定感を底上げして
── それを知っているだけでも、気持ちがラクになりますね。とはいえ、自己肯定感が低いと子どもが苦労しそうで心配です。親がしてあげられることはありますか?
親野さん:
3つの要素のなかで、親ができるのは、環境をよくすることです。肯定的な言葉を増やし、ポジティブなコミュニケーションを心掛けることで、自己肯定感が育つようにしてあげることが、親の役割だと言えます。
この先、子どもが成長してやりたいことが出てきたときに、自己肯定感が育っていれば「これをやりたい。頑張ってみたい。自分ならできる」とスイッチを入れることができます。思春期以降に「本人の自由意思」でスイッチを入れて、グンと伸びる子もたくさんいますので、そうなれるように今から子どもの自己肯定感をじっくりと育てることを意識して過ごすことが大切です。
ほかにも、整理整頓・片付けなども、生まれつきの要素が大きいと思います。実際に、私も長年の教師生活のなかでそうしたケースをたくさん見てきました。
例えば、親が片付け上手なのに、子どもは何度教えても片付けができないケースもありますし、兄弟間でも違いはありますよね。逆に、親が片付け下手という環境でも、子どもはすごく几帳面で片付けが大好きな場合もある。得意や苦手というものは、生まれながらの資質が大きいのです。
ちなみに、早め早起きや朝型・夜型、さらには、猫派・犬派も生まれつきの遺伝子レベルで決まっているという研究結果もあるくらい。ですから、親のしつけや努力しだいで、すべてなんとかなるものではないということを、心にとめておきましょう。
Profile 親野智可等さん
教育評論家。本名・杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Twitter、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」などで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。Twitter、YouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどは、インターネットで「親力」で検索してホームページへ。
取材・文/西尾英子