「トイレトレーニングに焦りは禁物です。子どもの体の発達と気持ちの様子を伺いながら、気長に進めていきましょう」
今回は、イヤイヤ期専門保育士の中田馨さんに、イヤイヤ期の子どもとトイレトレーニングを進めていくうえでの声かけや対策法をお聞きしました。
トイトレは個人差が大きく、波があるもの
トイレトレーニングほど、子どもによって個人差が大きいものはないかもしれません。膀胱の発達や環境、タイミングによって、進み具合が異なるため、「何歳から始めないといけない」という決まりはありません。
スタートのタイミングは「おしっこの間隔が2時間近く空くようになってから始めると比較的スムーズ」ということを、目安に考えるとよいでしょう。
トイレトレーニングの進め方にも正解はありませんが、私がよくお伝えしている方法は、最初はおむつを履いたままトイレに誘ってみること。
夜寝る前や朝起きてすぐなど、おしっこが出やすそうなタイミングを見計らって、1日1回~2回からスタートします。トイレでできる回数が少しずつ増えてきたら、パンツに移行してみましょう。
とはいえ、トイレトレーニングの期間がイヤイヤ期にちょうど重なるため、親が思うように進まないことも多々あります。
この間まで順調だったのに、またおもらしばかり…といったように、三歩進んで二歩下がることは成長の証です。焦らず気長に進めていきましょう。
子どもがトイレトレーニングを嫌がる理由
スムーズに進まないことが多いトイレトレーニングですが、子どもがトイレに行くことを嫌がる理由も様々。
その場合は、どうして嫌なのか、子どもに尋ねてみるのもいいかもしれません。それでも理由がよくわからない場合は、普段の子どもの様子などから親が推測してみましょう。
ここでは、私がこれまで多くの子どもたちと接してきたなかで、特に多かったケースをいくつかご紹介します。
おむつの方がラク。失敗して怒られたくないから!
親はそろそろおむつからパンツに履き替えてほしいのに、なぜかいっこうにパンツに替えたがらない…こういった子どもの気持ちとしては、「おむつの方がいつでもおしっこできるし、失敗しても怒られないから」と思っている場合が多いようです。
なかには、「ウンチだけ、頑なにトイレでしようとしない」という子も少なくありません。これは、おしっこよりもウンチを漏らたときの方が、親の言葉がけがキツくなる傾向にあるためだと私は考えています。
確かに、パンツが濡れただけなら後始末も簡単ですが、ウンチとなると処理が大変です。そのため、おしっこを漏らしたときよりもキツく叱ってしまったり、つい大きなため息をついてしまったり…。
子どもは親の言動に敏感ですから、怒られたくないが故にパンツを履きたがらない、ウンチだけ隠れてするといった行動に至るのではないでしょうか。
排泄は、その子のタイミングに任せるしかありません。もしもウンチを漏らしてしまったとしても、「お腹がスッキリしたね。じゃあお尻を洗いに行こうか」とだけ伝えられるといいですね。
そのうえで、「次は、おしっこみたいにトイレでウンチができたらいいね」と声かけを。ただし、言い過ぎると、プレッシャーを与えてしまいかねないので、注意しましょう。
トイレが怖い場所になっている可能性も
トイレを嫌がる理由に、「トイレ=怖い場所」という認識になっていることもあります。
たとえば、間違ってウォッシュレットのボタンを押してしまい、急に水が出てきてビックリしてしまったケース。また、初めてトイレに座ってみたところ、自分のおしっこが出る様子に驚いてしまい、怖くなって座らなくなってしまったという子もいました。
このように、明確な恐怖の原因がわかった場合は、無理強いせず、子どもの中に恐怖心がなくなるまでトイレに誘うのはお休みにしてみる。少し期間をあけて、子どもがやる気になったら再開するとよいでしょう。
トイレトレーニングをスムーズに進めるコツ
ここからは、より無理なく楽しくトイレトレーニングを進めていくためのポイントをお伝えしていきます。
トイレに行きたくなるような楽しい工夫を
何度誘っても、なぜかトイレに行きたがらない、結局おもらしをしてしまう…先ほどご紹介したような「トイレに対する恐怖心」がないようであれば、トイレに行きたくなるような楽しい工夫をしてみましょう。
たとえば、好きなキャラクターの絵をトイレに貼ってみるのはどうでしょうか。お気に入りのぬいぐるみをトイレに持って行き、「◯◯ちゃんがここで見てるから、トイレに座ってみようね」と励ませば、いつもよりも頑張ろうという気持ちになってくれるかもしれません。
家族がトイレに行くタイミングで子どもを誘うのも、ひとつの方法です。お兄ちゃんお姉ちゃんに協力してもらったり、子どもが入る前に「ママが先にするね」と一緒にトイレに入るなどもいいですね。
できるだけ園と同じ環境でトイトレを進める
ある程度の年齢になると、保育士が定期的にトイレに誘いますし、お友達と一緒だと自然とトイレトレーニングが進むという子もいるかもしれません。
けれども、家に帰ってからはおむつで過ごしている、トイレにも誘っていない…というご家庭が少なくないようです。園ではパンツ、家ではおむつでトイレに行かなくてもいい状況に子どもは混乱してしまい、トイレトレーニングの期間が長引くことも。
実際、土日などお休みの間をずっとおむつで過ごしているからか、休み空けに園に来たとき、普段よりもおもらしをする子どもが多くいます。
できればおもらしをしてほしくないでしょうし、園で頑張っている分、家ではお休みしてもいいかな、というパパやママの気持ちは私もよくわかります。
ですが、もしも、親御さんがスムーズにトイレトレーニングを進めたいとお考えの場合は、お家でもできるだけパンツで過ごすようにして、園と同じような生活リズムを整えてあげるといいでしょう。
とはいえ、おもらしが続くと後処理が大変。そういうときは、パンツに敷くパッドなどの便利グッズを使ってみるのはどうでしょうか?
子どもはパンツを履いているのに近い感覚になり、園にいるときのような環境で過ごすことができます。もしくは、おむつは履かせるけれども、トイレには誘うことを心がけるのもひとつの方法です。
いつかはパンツに。温かい目で見守ろう
トイレトレーニングは、誰もが通る道であり、個人差がとても大きいもの。子どもの体の発達と気持ちの様子を伺いながら、「いつかはおむつが外れる」くらいの気持ちで、のんびり進めて問題ありません。
また、うまくいくときもあれば、失敗ばかり…そんな風に逆戻りすることもありますが、それらはすべて子どもの成長の証です。
大きくなったね…と温かい目で見守ることができるといいですね。
PROFILE 中田馨(なかたかおり)
取材・構成/水谷映美 イラスト/林ユミ