自分のことをどういう人間だと思うか、「セルフイメージ」によって脳が受け取る情報が変わるそうです。私たちがより生きやすくなるには、どういうセルフイメージを持つことが必要か、脳科学に詳しい星渉さんに聞きます。

自分のセルフイメージを手書きで書き出す

── 星さんはセルフイメージを変えると子育てが変わるとおっしゃっていますが、具体的にどういうことなんでしょうか?

 

星さん:

例えば、「私ってイライラしやすい人」と思っていると、脳は「私はイライラしやす人です」と判断し、関連する事柄ばかりが目につくようになります。

 

簡単に言えば、セルフイメージによって人は受け取る情報を選んでいる。だから幸せな母親のセルフイメージを持つことで、自身をその状態に導くことができるわけです。

 

── とはいえ、特に30年以上も生きていると、いまさらセルフイメージを変えることってなかなか難しいですよね。

 

星さん:

いちばんいい方法は、言語化です。みなさん、「私はこういう人です」という項目を紙に5つぐらい書き出してみてください。

 

── 「私は心配性です」「私は育児にいっぱいいっぱいです」などでしょうか。

 

星さん:

いいですね。それを書いてください。その書き出した項目のうち、セルフイメージとしては良くないと思った部分に二重線を引き、どんな言葉に変わったらいいかを横に書いてください。

 

「心配性」がいい言葉じゃないと思ったら、二重線を引き「私はちょっとやそっとのことは気にしない人」にするとか。「育児にいっぱいいっぱい」なら「育児を楽しんでいます」などに変えるんです。

 

ポイントは手で書くこと。そして、二重線を引いてみずから書き換えることです。セルフイメージを変えるには、手書きの方が効果があるという研究結果もあります。

 

あとは、そのメモを毎日持ち歩き、ことあるごとに見てください。

 

── 書くだけではなく、内容をこまめに確認するんですね。

 

星さん:

そうです。例えばいくら自分をネガティブだと思っている人でも、学芸会で「ポジティブな役を演じてください」と言われたら、演じられますよね。なぜなら、そこには台本にキャラクターが設定されていて、言語化されているからなんです。

 

私たちは、自分で自分をどんな設定にしているのか、言語化されておらず、可視化もできていません。その場合、脳はできるだけサボりたいので、自分にとっていちばんラクな設定で生きようとするんです。

脳は慣れ親しんだ設定で生きようとする

── その、脳にとってラクな設定とはなんですか。

 

星さん:

自分にとって一番ラクな設定は何かというと、それは「慣れ親しんでいる設定」です。これまで何十年と人生を積み上げてきて、同じ設定でいる方がラクなので、ネガティブな設定なら、ネガティブなままでいるようにする。

 

その設定を変えたいなら、まずは今、自分がどのようなセルフイメージを持っているのかを可視化すること。そして希望する自分のイメージを常に意識することです。しばらくすれば脳が新しい設定に慣れてくるので、その設定で生きられるようになりますよ。

 

── かなり時間がかかりそうですね。

 

星さん:

そうでしょうか。人によっては21日ぐらいでも変われます。

 

脳の習慣になるよう、紙に書いて、ことあるごとに新しい設定を見てセルフイメージを変えてみてください。

 

PROFILE 星渉さん

作家、講演家。1983年仙台市生まれ。心理学、行動科学をベースにした人材育成をする株式会社Rising Star代表取締役。大学時代の塾の講師をし、当時から心理学的手法を用いて子供達に勉強を教えてカリスマ講師として話題に。大学卒業後、大手損害保険会社に勤務。東日本大震災で岩手県で被災し、「自分の残りの人生は好きなことに費やす」と決意し2011年に起業。国内やニューヨーク、パリなどでも講演会を行い、1万2000人以上が参加。育成した起業家は600人以上。現在は札幌市と東京を行き来するデュアルライフを送る。著書『神メンタル』『神トーーク』『99.9%は幸せの素人』は累計30万部を超えるベストセラーに。 取材・文/天野佳代子