体調不良の女性

東京都の新規感染者が再び1000人を超え、改めて新型コロナウイルス感染症に対して危機意識が高まっています。「実際に感染すると生活はどうなるの?」と不安に思っている人も多いでしょう。

 

とくに子育て世代が感染した場合、子どものめんどうや教育機関への連絡、職場への報告、家族への感染予防対策など、対応しなければいけないことが山積み。

 

話を聞いたのは、昨年秋に新型コロナウイルスに感染した30代の女性、Aさん。東京都在住で、夫と10か月の長男(当時)との3人暮らしです。育休中で、日ごろから感染予防対策に気をつけて生活していたので、まさに青天の霹靂だったといいます。

 

202010月に新型コロナウイルス感染した当事者の取材に基づいて構成しています。現在は保健所の対応などが異なる場合もありますので、参考例としてお読みください。

まさか私が? 育休中に突然のコロナ感染

── まずは、新型コロナウイルス感染が判明した日までの経緯を教えてください。

 

Aさん:

昨年10月末のことです。ある火曜日、喉がイガイガして風邪を引きそうだなぁという感じがあって。翌日の朝、起きた瞬間に熱っぽさやだるさがあり、体の節々が痛かったんです。

 

その頃の東京はコロナの第2波が落ち着いた時期。「まさかコロナじゃないよね?インフルエンザかな?」と思っていたのですが…。

 

木曜日になっても熱が下がらなかったので医療機関に電話し、金曜日に近隣病院の発熱外来の予約を取りました。そこでPCR検査をして、土曜日に陽性が判明したんです。

 

その翌日に、濃厚接触者にあたる夫と子どももPCR検査をしましたが、2人は陰性でした。

 

── 陽性が判明したときの率直な感想は?

 

Aさん:

「まさか私が!?」という感じでした。身近に感染した人もいなかったし、思いあたる感染経路もなかったので…。発症日以前の2週間以内に感染した可能性が高いということで、保健所からは2週間の行動履歴を聞かれました。

 

私は育休中で、息子と公園に行ったり、日常の買い物くらいしか外出していなかったんです。買い物から帰宅したら購入品にアルコールスプレーを吹きかけて消毒したりと、感染予防対策にも気をつけていたほうだと思います。

 

2週間のうちに2回、友人とランチに出かけたので、それは保健所に伝えました。でも友人たちには症状がなく、これも感染経路ではなさそうでした。

 

だから「これだけ気をつけていても感染するんだ…」という怖さを感じましたし、私、本当に運が悪いなぁ…と。

 

毎日通勤している夫が陰性で、ほとんど家にいて消毒に余念がない私が陽性になるなんて…と理不尽さを嘆きました。SNSを見れば、頻繁に人と会ったり外食したりしている人もいるのに、って。

発熱した女性

── 結局、感染経路は不明のままなのですね。どんな症状が出ましたか?

 

Aさん:

熱が38.2度まで上がり、その後はアップダウンが激しかったです。普通の風邪なら一気に熱が上がって、その後徐々に下がるのですが、今回は朝に下がったと思ったら夕方にまた上がったり…。経験したことのない熱の出かたでした。

 

発症から4日後の土曜日にだんだん味覚と嗅覚が弱まってきて、日曜日にはすっかりなくなりました。怖い反面、不思議な感覚もあって。変な話ですけど、息子のウンチがまったく臭くないんです。オムツを替えていても何も臭わないので、何度も嗅いでしまったほど。

 

食事は味がほとんどしないので、とにかく苦痛でした。坦々麺を食べても、うっすら風味があるゴムをひたすら噛んでいるような感じ。味がしないものを噛んで飲みこむ作業ってけっこう辛いんですよ。

 

そのうち、食欲がないというより食べる意欲がわかなくなって。食事がこんなに苦痛になるなんて思いもしませんでした。

 

この症状は治るのだろうか?という不安をずっと抱えていましたね。私の場合は2〜3日で味覚も嗅覚も徐々に回復しましたが、後遺症が残ってしまった方の話をニュースなどで見ると、いまでも怖くなります。

小さな子がいると療養生活もままならない…

── 家族ではAさんだけが陽性だったそうですね。入院やホテル療養をされたのでしょうか?

 

Aさん:

陽性が判明した時点で、保健所の人に「どうしたいか?」と希望を聞かれました。入院か、ホテル療養か、自宅療養か。息子のPCR検査前だったので、私だけ隔離療養するのは心配で…。相談すると、「それなら、お子さんの検査結果が出てから決めましょう」と言ってもらえました。

 

息子は10か月で私にべったりの時期。離乳食をあまり食べてくれず、母乳ばかり欲しがる時期だったので、急に私が1週間いなくなるのは、息子の負担にもなりそうだと思いました。授乳していたので、急に断乳するのも難しいなと。

 

そもそも、息子も微熱があって咳をしていたので、てっきり陽性だと思っていたんです。陽性なら息子と隔離施設に入ろうと考えていました。

 

── でも、息子さんは陰性だったわけですね。

 

そうなんです。それならば家族にうつすわけにいかないし、私だけ隔離施設に…とも思ったのですが、保健所で「発症してから8日ほど経過すると感染力が低下する」と聞いて。

 

息子のPCR検査結果が出た時点で私が感染して1週間経過していたし、隔離施設の手配にさらに2日ほどかかると言われたので、待ってもあまり意味がないと判断し、自宅療養を選びました。

お昼寝する赤ちゃん

── 自宅療養中はどのように生活していましたか?

 

Aさん:

夫と息子は濃厚接触者になり、当然職場と保育園には行けなくなりました。私は育休中だったので仕事への影響はなかったのですが、夫は家で仕事をしながら息子のめんどうもみて…という生活で、やはり大変そうでした。

 

私が家から一歩も出られなかったので、食事の手配は夫の役目に…。濃厚接触者でも感染対策を徹底すれば買い物程度は許可されていたので、毎日買い出しをお願いしていました。1日1回は息子を抱っこで連れ出し、人通りの少ない道を歩いて息子の気分転換もしてくれましたね。

 

とはいえ、もし私が入院やホテル療養をしていたら、夫ひとりで息子のめんどうを全てみながら仕事、という状況になっていたから…相当大変だったと思います。

 

── 家の中では、お子さんとどう関わっていたのですか?

 

Aさん:

保健所で「自宅でもなるべく生活空間を分けてください」と言われたのですが、私が過ごしていた部屋がリビング横の和室だったので、完全な隔離は難しかったです。10か月ですから、私を見ればくっついてくるし、離れれば後追いして泣いてしまう。離乳食を食べてくれない子だったので授乳もしていましたし

(※)…。

 

夫が仕事をしている間は私がめんどうをみないといけないので、息子が泣き叫んでも心を鬼にして部屋にこもる…というわけにはいきませんでした。もちろん、感染のリスクを考えると気が気じゃなかったけど。

 

窓は開けっぱなしで常に換気をする、マスクをする、食事を一緒にしない、手が触れるところはできるだけ除菌消毒する…。よく言われている感染予防対策は徹底して過ごしました。マスクは医療用の高性能なタイプを二重に付けて、私だけベランダでご飯を食べたりしていましたね。

ドアノブの消毒

── トイレや洗面所を使うときはどうしていたのですか?

 

Aさん:

息子のお風呂や身支度はすべて夫に対応してもらいました。トイレのドアノブや電気のスイッチなど、手が触れやすい部分はこまめに消毒をして。

 

ちなみに、保健所から毎日電話があり、体調を確認してもらえたのはありがたかったです。不安な毎日でしたが、手厚くケアしてもらい、だいぶ安心できました。

 

 

次回は、子どもの保育園や夫の職場への影響について詳しく伺います。

 

(※)2021年7月29日現在、厚生労働省『新型コロナウイルスに関するQ&A』では「母乳を介して新型コロナウイルスが乳児に感染するリスクは低いと考えられています。しかし、母乳中に検出されたとする報告もあります」と発表されています。医療機関の医師等と十分に相談の上、授乳方法や時期を判断してください。(編集部調べ)

取材・文/大野麻里 ※画像はイメージです。
参考/厚生労働省『新型コロナウイルスに関するQ&A』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q6-9