ショーツや月経カップなど、女性が抱える健康課題を解決する「フェムテック」関連商品がここ数年で続々登場しています。
とくに注目が集まっているのは吸水機能を備えたショーツ。吸水性に優れた「次世代サニタリーショーツ」の登場によって見えてきた変化とは?
アパレルブランド「GU(ジーユー)」で吸水ショーツ「トリプルガードショーツ」の開発に携わったグローバル商品本部・椎名玲子さんに話をお聞きしました。
三層構造の吸水ショーツが大ヒット
── 2021年3月に発売された「トリプルガードショーツ」はどのような商品か、あらためて教えてください。
椎名さん:「トリプルガードショーツ」は約15〜20mLの水分を吸収する機能を備えたショーツです。防水シート、吸水シート、さらさらシートの三層構造になっており、クロッチ部分には抗菌防臭機能をもたせています。
── 日本国内でも2020年頃から吸水ショーツがメディアに注目されるようになりましたが、市場をどう捉えていましたか。
椎名さん:当社でトリプルガードショーツの商品開発がスタートしたのは2019年です。海外のフェムテックケア(女性の健康や体調をケアする商品・サービス)関連市場が急速に拡大していることはその以前から注目していましたが、日本では「吸水ショーツ」というジャンル自体が、まだまだ情報に敏感な一部の女性層に限られている印象がありました。
そういった状況も踏まえた上で、「ジーユー」というブランドがフェムテックケア市場に本格参入するのであれば、やはりお客さまはコスパを重視されるだろう、ということは意識しました。
1490円というリーズナブルな価格帯を保ちつつ、しっかり吸水できる構造で、品質とファッション性も表現する。そのバランスを実現することで他社との差別化を図りました。
購入メイン層は意外にも40代女性
── ECサイトでは発売即日で完売、店舗でも当初は品薄状態が続くなど反響が大きかったそうですが、やはり普段からジーユーのコアターゲット層である10~20代が多かったのでしょうか?
椎名さん:それが必ずしもそうとは言いきれないのです。アプリやECサイトなど、会員様の年齢を把握できる限りでは、購入者層で比較的多かったのは「40代女性」であるというデータが出ています。
ECサイトのレビューやカスタマーセンターへのご要望でも、「小さいサイズを作ってほしい」「もっと大きいサイズを」「ハイウエストタイプが欲しい」「吸水シートがもっと広いタイプがほしい」といった多くのお声が寄せられているので、バリエーションの拡大を検討中です。
もうひとつ意外だったのは、明るいカラーが好評だったこと。サニタリーショーツ=黒という先入観が私たちにもあったのですが、濃いピンクのような明るくてかわいい色が予想外に好調だったんです。
漏れても目立たない黒には安心感がありますが、「ちょっと気分がアガるようなかわいい色を身に着けたい」と考える方も増えてきているように感じます。それを踏まえて、6月からは新色を追加しています。
吸水ショーツの登場で見えた社会の変化
── 吸水ショーツのような新アイテムの登場によって、女性が抱える健康課題への社会の視線にもポジティブな変化が起きている気がします。
椎名さん:ホルモンバランスの変化という視点から見ると、女性って絶好調な時期がほとんどないと言われています。1か月のうち絶好調でいられるのは、生理後の1週間くらい。それ以外はなんらかのホルモンが心身に作用して、不安定になってしまいがちなことが多いといわれています。
もちろん、個人差も大きいのですが、私たちはファッションブランドとして「絶好調ではない期間」であっても、ファッションや毎日を楽しんでいただきたい。「トリプルガードショーツ」もそのひとつの形です。
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「トリプルガードショーツ」のようなヒット商品に後押しされて、女性の身体への認識や意識も大きく変わりつつあります。
選択肢が幅広く提示されることは、大人の女性はもちろん、これから成長していく女の子たちにとっても嬉しいこと。揺らぎやすい女性の身体のことについて、親子で話し合うきっかけにもなるかもしれませんね。
PROFELE ジーユー グローバル商品本部 椎名玲子さん
2019年よりインナーチームに所属。MDとして戦略立案・商品の企画・開発・生産から、販売計画・販売促進までを手掛け、担当商品に関わる全工程の統括・推進を行う。
取材・文/阿部 花恵