そしてもしも、子どもが被害に遭ってしまったら…
親としては想像したくもないことだが、万が一子どもが被害にあってしまったときのことを考えたい。 まず大人がすべきことは、あくまで冷静に受け止め、これ以上子どもを傷つけないように配慮すること。大人が取り乱したり、「うそでしょ!」「なんで言わなかったの?」などと責めたり、いやなことを何度も問いただすことがないようにすること。 最近では、性被害の聞き取りをする際、子どもの負担をできる限り少なくしつつ、正確な情報をつかむため、「司法面接」という手法が取り入れられている。専門的な訓練を受けた面接士が、いつ、どこで何をしたか、事実を特定できるように、60分程度で1回だけ話を聞く。 性被害を受けた子どもの言うことは、変化をするかもしれない。何を聞いても答えないかもしれない。語らない、語れない子どもがいて、語っていない部分に深刻な被害がある可能性があることも、大人は知っておいたほうがいい。
相談窓口についても知っておきたい。 児童相談所や子ども家庭支援センターに通告や相談ができるし、性被害に特化した「性暴力被害ワンストップ支援センター」もある。児童相談所全国共通ダイヤル「189(イチハヤク)」に、電話することもひとつの方法だ。 ちなみに児童福祉法により、虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、すべての国民に通告する義務が定められている。 通告は、結果的に間違っていてもかまわない。守秘義務は守られるうえ、専門家が対応し、必要があれば子どもの保護だけではなく、親の支援にもつながるからだ。他にも保育園や幼稚園、小学校の先生、スクールカウンセラー、民生児童委員などにも相談してもよい。子どものSOSを見逃さず、きちんと受け止め、適切なところにつなげることが大切だ。 いずれにしても、子どもがまわりの大人にSOSを出せるよう、ふだんから信頼関係を築いておくこと。
自分の子どもだけではなく、地域の子どもたちも含めて見守ること。
そして、何かあったときにどうすればいいのかを知っておくことが、親である私たちにできることである。
文/工藤玲子