赤ちゃんの離乳食は、はじめはすべて大人が食べさせてあげる状態から、少しずつ自分で食べられるように進めていきます。
この時期にしばしば悩まされるのが、食べ物をぐちゃぐちゃにしてしまったり、食器を振り回して投げたり、途中で席を立ってしまったりする「遊び食べ」。
ママやパパも「絶対に許さない」から「できるだけ自由にさせる」まで、遊び食べへの対応はかなり人によって異なるようです。
今回は、遊び食べをする子供の心理や理由にくわえ、育児中のママたちにも、お子さんの遊び食べで困ったときにどうしていたのか、体験談を聞かせてもらいました。
「遊び食べ」と「手づかみ食べ」の違い
ところで、そもそも「遊び食べ」とはどういう状態をいうのでしょうか?
Tさん(7か月児のママ)は、こんな話を聞いて不安になっているそう。
「今はまだ私がスプーンでおかゆや野菜のペーストを食べさせている状態で、娘もおとなしく食べてくれていますが、支援センターで会う、年上の子がいるママ友によると、もうすぐ食べ物をすべて床にぶちまけたり放り投げたりして、そこらじゅうぐちゃぐちゃになるとか…。自分も夫もわりと潔癖症ぎみなので、毎日そんなの耐えられるのでしょうか」
また、ママ友の話とは別に、
「赤ちゃん時代に、汚れるからといって親がいつまでも食べさせていると、給食などの時に1人で上手に食べられなくて苦労するというのも聞いたことがあり…それも困るので、汚されてもガマンするべきでしょうか?」
という心配もしているといいます。
たしかに、赤ちゃんはある日とつぜん1人で食器を使って食べられるようにはならないため、その前の段階として手で食べ物を持って食べる「手づかみ食べ」の時期が必要です。
しかし、力加減が分からずにバナナやおにぎりを握りつぶしてしまったり、うまく口に運べずに床に落としてしまったりするのは最初のうちだけで、比較的すぐにじょうずに手づかみ食べができるようになる子がほとんどです。
いっぽう「遊び食べ」は、「食べようとしているのにうまくできない」というより、赤ちゃんが目の前のごはんや食器の手触りを確かめたり、もし自分がこれをひっくり返したらどうなるのだろう、バンバン叩いてみたらどうなるのだろう…という好奇心を満たしたりしている状態です。
手づかみ食べは子供の順調な発達のため多くの育児書で推奨されていますが、遊び食べは、子供の好奇心の表れとして認めるべきではあるものの、推奨されているわけではない…という違いがあります。
1歳・2歳・3歳…年齢別「遊び食べ」の理由
子供の年齢・年代によって、遊び食べをする理由や心理も少しずつ異なります。
0~1歳台の遊び食べ
離乳食後期になり、固形のものが食べられるようになってきた赤ちゃんが、お皿のうえの食材を手でつかんだり放り投げたり、コップのお茶におかずを全部入れてしまったり…という場合、大人から見ると「食べ物をおもちゃにしちゃだめ!」と叱りたくなりますよね。
しかし、この時期の赤ちゃんの多くは、厳密に、これはおもちゃ、これは食器、これは食べ物…とモノが分類できているわけではありません。
これから少しずつ、身の回りのモノに大人と同じように社会的な意味づけや分類ができていく途中の段階なので、根気よく教えてあげるしかないでしょう。
1歳7か月のお子さんがいるMさんは、
「1歳前から、食べ物を手で持っては床に落としたり、テーブルに広げて粘土のようにこね回したりするように。口で説明しても分からないかもしれませんが、とにかく、食べられない状態にしたものは、悲しそうな表情で、食べられなくなっちゃったね、ごめんなさいといいながら片付けるようにしていました。時には私につられて息子も一緒に泣いてしまうことも。そうこうしていたら、1か月くらいでおさまりました」
と、すぐにやめさせられなくても、毎回悲しそうに片付けることで伝わったのではないかと話します。
またWさん(2歳児のママ)は、
「当時この子は1歳過ぎでしたが、食べ始めたらすぐにスプーンやフォークを床に投げるんですよ。拾って洗って渡すのですが、またすぐポイ。完全に遊んでるなと思い、拾わないでもう1本のスプーンで食べさせてみましたが、今度はお皿を投げる始末。せっかく作ったのにもったいないし、汚れも気になったけど、あえて知らんぷりして手元のものを食べさせるようにしたら、3日くらいでやらなくなりました」
と、反応しないでやりすごしたそうです。
この対応は以前に筆者も保育士さんから聞いたことがありますので、反応を見たくて遊んでしまう赤ちゃんには広く有効なのではないでしょうか。
2~3歳台の遊び食べ
子供がだんだんと自分でスプーンやフォークで食べられるようになってきた頃に多いのが、食べている途中で遊び始めたり、席を離れてしまったりすること。
Hさん(4歳児と2歳児のママ)は、
「下の子の出産後は当時2歳の上の子の食事につきっきりになれず、ふと見ると片手におもちゃを持って遊んだり食べたりしていて、思わず叱ってしまうことの繰り返しでした」
と振り返ります。
「立ち歩いたらさっさと片付けるとよく言いますが、片付けようとするとまだ食べるーと怒るので、じゃあ最後まで食べようねと約束しても、気付けばまたウロウロ。下の子がやっと寝たタイミングで叱ると上の子が大泣きして下の子も泣き出し、カオスになることが何回もあったので、最後のほうはあきらめていました」
その後、下の子が1歳前のタイミングで2人とも保育園に入園し夕食が遅くなったため、上の子もおなかが空いたのか最後まで続けて食べるようになったといいます。
「当時は運動量に対して食事の量が多く、食べるよりも遊びに気が行っていたのかもしれませんね」
と話します。
おわりに
食べ物を粗末にするのは、特に日本では「許されない」と感じる人が多いですが、赤ちゃんは必ずしも食べ物の大切さを軽んじてやっているとは限りません。
食べ物の大切さはそのつど伝えつつ、子供が「自分で食べる楽しさ」も持ち続けられるような声かけをしていきたいですね。
文/高谷みえこ