夫の風俗店のカードをみつけた妻

男性の中には、風俗に行く人と行かない人は明確にわかれます。カホリさん(40歳・仮名=以下同)の夫も、風俗は浮気ではなく「趣味」と主張するそうですが ──。

夫のスーツの内ポケットから出てきたのは…

現在、3人を子育て中のカホリさん。結婚して10年、共働きで協力しながら家事育児に取り組んでいます。

 

「とはいっても、家事育児の負担は私のほうが大きい。私は時短勤務で、夫は残業が多くて定時では上がれません。時間的に夫にもっと分担してというのは残酷かなと思うところもありました。帰宅後は洗濯や風呂掃除などはマメにやるし、週末は子どもたちを連れて遊びに行くことも多い。その間、私はひとり時間を楽しんだり、昼寝もできる」

 

カホリさんにとっては「及第点」の夫でした。ところがつい先日、彼女は見てしまったのです。夫が自分でクリーニングに持っていこうとしていたスーツが置いてあったのですが、たまたまカホリさんもクリーニング屋に行くため、ついでに出しておこうと内ポケットを探った時のことです。すると、ポイントカードのようなものがあったのです。

 

「お店の会員証だったんですが、なんか怪しいと感じ、店名を検索してみたら風俗店。夫が風俗に行っているなんて知らなかったので愕然としました」

 

カホリさんのショックは相当で、風俗店へ行く夫の心理がわかりませんでした。会員証をつきつけると、夫は少しバツの悪そうな顔をしましたがそれだけ。カホリさんが怒りのやり場をなくして憤然としていると、「怒っているの?」とキョトンとしていたそうです。

「風俗が夢の国と同じ」って、何言ってんの?

「夫に言わせると、これは自分だけの趣味みたいなもの。“きみだってディズニーランドが好きじゃないか”と。“はあぁ???”と聞き返しましたよ、嫌みな言い方で。遊園地と風俗が同じなわけないだろって」

 

夫は冷静に「好きな場所という点では同じじゃない?」と。この人には何を言っても伝わらないのだろう、とカホリさんは言い争うのをやめました。

 

「こうやって夫をあきらめていくのが妻という立場なのかしらと考えたら、なんだかむなしくなってしまいました」

 

その後、家事にいそしみ、週末は料理を作る夫を見ても、前ほどありがたみを感じなくなっていると彼女は言います。

義母や母親に話しても、同じ答えしか返ってこない

同じように夫が風俗に行っていることを知ったのはエリさん(38歳)です。結婚して10年、8歳の一人娘がいます。夫は娘を溺愛していて、娘の言うことなら何でも聞いてしまうほど甘い父親。10歳年上なので、エリさんにとっても「父」のような頼れる存在。ところが2年ほど前、夫のスマホから、20代の風俗嬢にかなりいれあげていることがわかりました。

 

「私はすごく嫌悪感を覚えて、思わず義母に相談したんです。そうしたら義母が“浮気しているわけじゃないし、別にいいんじゃない?”って。家計に影響がなければ“放っておきなさい”とも言われました。男はそういうものよって」

 

私には受け入れられない話だったので母親にも話したら、母親も同じことを言う。“怒るだけ損。娘にかこつけてもっと生活費をもらえばいい”と。夫婦関係はどうなるのか問うと、“そのうち元気がなくなって行かなくなるから”と言うんです。そういう夫を愛せるものなのか言うと、“生活の苦労がないのが一番よ”って」

 

専業主婦のエリさんは、離婚したところで今の生活水準を保ちながら娘を育てていくのは難しい。結局、夫の風俗通いを「知らないふり」をしながら暮らしていくしかないのか、と絶望的な気持ちになりました。コロナ禍でも夫は出社していますが、どうやらお店へも行っているよう。

 

コロナに気をつけてよねと、言ったことがあります。夫が私を見たので、飲食店とか女性が隣に来る飲み屋さんとか、女性と濃厚接触する店もねと言ってやりました。知っていると伝えたかった。すると夫は“大丈夫だよ”と。結局、真剣には考えていないと、わかりましたね」

 

同居人と割り切ろう、そうしなければこの生活は保てない。エリさんは日々、そう自分に言い聞かせながら暮らしているそうです。

 

「愛情云々とか嫉妬がどうとか、そういう話ではないんですよね。不特定多数を相手にしている女性と接触していること、性的サービスにお金を払うことが私から見ると問題。それがわかって、私自身にとって夫はすでにではないのかもしれないと思いました。もう夫とは家族で、男女としての感情は取り戻せない。そう思ったら気持ちが落ち着いて、同居人として割り切っていけばいいと考えるように」

 

それはいいことなのか、寂しいことなのか。エリさんにも今はわからないそうです。

夫の風俗店のカードをみつけた妻
夫へ不信感や不安感を募らせる妻
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。