看護師や助産師の経験もある形成外科医から、「母親目線」で目からウロコのスキンケア術を教えてもらいました。

コロナによるマスク荒れが増加中

「コロナ禍でマスク着用が常態化しているので、マスク荒れを訴える患者さんが増えている印象があります」

 

そう話すのは、東京にある「恵比寿形成外科・美容クリニック」院長で、形成外科専門医の西嶌(にしじま)順子先生(42)。

 

「不織布マスクに比べ、布やウレタンマスクは感染防御力が落ちますがその分、通気性はよくなるのでマスクを替えること検討してください。

 

また、マスク内は高温多湿になるので、外すときは急な蒸発による過乾燥を防ぐために、汗を拭(ふ)きとることも必要です。

 

不要だと思われるときは、マスクをしないということも心がけてください。

 

マスク以外にも、新型コロナウイルスにより、衣食住も変化し、不調が出てきた人も少なくないようです」

 

そんな女性たちに向けた著書『「無駄なケアをやめる」から始める 美肌スキンケアの新常識大全』(宝島社)を出したばかりの西嶌先生。

異色キャリアのルーツは…

実は現在、2児の母でもあり、独特の経歴をもつお医者さんで、育児をしながらキャリアアップを目指す女性にとっても興味深いはず。

 

“究極”のスキンケアに目覚めた過程を、自身の“お肌ヒストリー”をたどりながら語ってもらった。

 

「実は私の兄は病気がちで、姉には障害があり、周囲に支えられて生きてきました。

 

自分が健康であることが奇跡のように感じていたので、兄姉の分まで社会貢献できる仕事がしたいと思い、医療の道を目指しました」 

看護大学時代の西嶌先生

 

「看護大学時代は、メイクやスキンケアには無頓着で日焼け止めすら塗っていませんでしたね。

 

貧乏学生だったので、1000円もしない安物や、母親のコスメをこっそりと使う程度でした」

若いころは、お肌に悪いことばかり…

赤ちゃんが好きな西嶌先生は助産師の資格もとり、22~25歳ころまでは新生児医療に従事したが当然…。

 

「夜勤で生活習慣が乱れ、このころから生理不順や吹き出ものに悩むようになりました。

 

患者さんのお看取りなど精神的な負荷も大きかったですが、夜勤明けで寝ずに遊びに行くなど若さで乗り切っていた面もありましたね。

 

金銭的な余裕もできたので、外食に行くようになり、高価な化粧品を使うようになりました。

 

コスメを替えれば肌トラブルは改善すると思っていたので、いろいろな商品を試していた時期で、今考えると肌に悪いことばかりしていました」

助産師時代の西嶌先生

夜勤からは解放されたけれど…

その後、医師としても患者に寄り添いたいと一念発起。猛勉強の末、医学部に学士として編入学する。

 

「また学生になり夜勤はなくなったので、おでこのニキビは消えました。

 

ただ、留年すると1年あたり600万円の学費がかかる…つまり、私にとっては退学を意味していたので、必死に勉強していました。

 

メイクはしていましたが、食生活も自炊することはなく夜更かしも多かったので、頬の白ニキビが赤ニキビに変化しやすいなどの悩みはありました」

医師になるとますます肌荒れが…

32歳になるとついに研修医になったが、修行時代は当然、不規則な生活になる。

 

「長時間の手術、夜間の呼び出しや、寝ずの勤務で休日もほとんどない時代でした。

 

マスク荒れがひどくなり、肌の乾燥やクマ、毛穴、小ジワなどが目立ち始め、自分史上最悪の肌荒れ時期でした」

肌荒れがひどかった研修医時代

 

「メイクはできるだけしていて、スキンケアにはドクターズコスメを。ニキビはレーザーの施術を受けたこともありますが、改善は一時的でした」

 

当初は、形成外科医を志していたわけではなかった西嶌先生。

 

「がん研究会有明病院で、乳がん患者の乳房再建に携わり、傷をできる限りもと通りにして、美しく治すことにやりがいを感じ、形成外科医を目指すことになりました」

妊娠、出産で目覚めたケア術

その後、32歳のときに職場で出会った西嶌暁生医師と結婚。38歳で妊娠、出産したときに劇的な変化が表れる。

 

「妊娠初期はホルモンバランスの変化でニキビができることはありましたが、その後は安定。

 

出産後はメイクやスキンケアを行う必要も時間もなくなり、入浴時は自分のことを洗う余裕もなくなりました。

 

すると、肌の乾燥や小ジワが気にならなくなり、育児疲れや睡眠不足はありましたが、自分史上最も肌の調子がいい時期となりました。

 

皮膚科のガイドラインでは、過剰なスキンケアやメイクは肌に悪影響だとされていますが、ここまで違うとは思いませんでした」

 

第一子出産後のお肌は確かにツヤツヤ

 

そこで、西嶌先生がたどり付いた最高のお肌ケア術とは──。

 

「“手抜き”や“ずぼら”でいい、ということです。スッピンにすべきと言うつもりはありませんが、コスメやクレンジングには、肌乾燥の原因となる合成界面活性剤が含まれていることが多いです。

 

石鹸で洗い落とせる程度のメイクが、特に忙しい女性の肌にはいいと思います。

 

子どもが小さいときのママは、メイクやケアに充てられる時間や金額は限られると思います。そのまま無理をしない程度がちょうどいいと考えてください」

今まで愛用していたコスメを、いきなり絶つことは抵抗があるかもしれない。

 

「お肌が改善していないと思ったら、明るい肌の未来が来ることを信じて、勇気をもって“一品”だけでも減らす意識を持っていただければ」

子どもにも大切なスキンケア意識

さらに最近、西嶌先生が心配していることがあるという。

 

「“100円コスメ”です。私が子どものころは、親の化粧品をこっそりと使う程度でしたが、現在は安価な商品が小学生でも簡単に手に入ります。

 

高価ならいいというわけではないですが、安価な商品はお肌にいい成分のみで、作られているとは考えにくいです。 

 

若いうちは皮膚がターンオーバー(再生)しやすいので、目に見える問題は起きませんが、それが蓄積されれば将来的にダメージとなります」

 

メイクする男性も少なくない昨今、赤ちゃんから祖父母まで安心して使えるコスメ選びと、シンプルケアが必要だということだ。

 

PROFILE 西嶌順子先生

1978年、東京生まれ。形成外科専門医。助産師、保健師、看護師。「医療法人道心会 恵比寿形成外科・美容クリニック」院長。聖路加国際大学看護学部卒。北里大学医学部卒。専門医と2児の母の立場で女性特有の悩みへの情報を発信中。夫の西嶌暁生医師(右)と株式会社ZAIを立ち上げ、サプリや化粧品の開発も手掛ける

インタビューカット撮影/齋藤周造