残念ながら緊張型頭痛や片頭痛が完治する治療法はありません。いつ襲ってくるのかと悩ましいですが、「食事や簡単な運動など、普段の生活を少し工夫すれば、かなりの程度、予防やコントロールはできます」と頭痛専門医の五十嵐久佳先生は言います。

運動会で片頭痛を起こす人も!?

片頭痛は非常に繊細で、環境の変化で頭痛が起こりやすいです。代表的な要因としては、空腹、低気圧、人混み、寝不足・寝過ぎなど。さらに旅行や運動会などのイベントは特に要注意です。

 

「たとえば、運動会では早朝から準備を行えば寝不足になります。強い日差しの下での応援は光と音の刺激も強い。人混みや保護者同士での人間関係をストレスに感じる方もいます。運動会は頭痛要因が凝縮されているんです」

 

とはいえ、子育て世代のママとしては回避しづらいもの。何か予防策はあるのでしょうか?

 

「日差し防止にはサングラスが役立ちます。水分補給も小まめにしておきましょう。また、頭痛薬を用意して、頭痛が起こった場合は早めに服用しましょう」

3食きちんと取れないときの回避策

前述のように、片頭痛の方は環境の変化に弱いので、毎日を規則正しく生活をするのが一番の予防になります。緊張型頭痛の場合も、ストレスや疲れを溜めないために同様に気をつけましょう。なかでも睡眠は、ぜひ見直したいポイントです。

 

「寝不足も寝過ぎでも頭痛は起こります。理想の睡眠時間は個人差があるので、自分が1日スッキリ過ごせるベストな睡眠時間を探ってみましょう。休日にゆっくり休みたいという方も、寝坊や昼寝は生活サイクルを狂わせないように短時間にとどめたほうがいいでしょう」

 

食事はきちんと3食、なるべく同じ時間に食べるのが基本です。でも、朝は子どもや自分の準備で忙しいママは、つい朝食を抜きがちです。そんな時、とっておきの方法があるといいます。

 

「片頭痛の人は空腹も大きな要因。早朝の頭痛が気になる人は、前日の夕食とその日の朝食の間隔が開くのが、原因の場合もあるかもしれません。寝る前にビスケットなどの甘いものを入れておくと、解消するかもしれません」

大豆製品、ほうれんそう、魚を食事に取り入れたい

3食を栄養バランス良く食べた上で、ぜひ取り入れてほしいのが頭痛予防に良いとされる、マグネシウムとビタミンB2です。

 

  • マグネシウム

海藻、大豆製品、ナッツ類、干し魚、玄米、ほうれんそうなど

 

  • ビタミンB2

肉、魚、乳製品、緑黄色野菜、納豆、玄米など

 

「マグネシウムは海藻や大豆製品、玄米などに多く含まれます。和食のメニューを意識すれば十分摂取できます。一方、ビタミンB2は予防効果を発揮できる必要量は食事だけではまかないきれません。積極的に食材で摂った上で、サプリメントで補給するのもひとつの方法です」

 

また、月経前に頭痛が起こりやすい人は、その時期に豆乳・納豆・豆腐など大豆イソフラボンを含む食材を積極的に摂るのもおすすめ。

 

「月経前の頭痛は女性ホルモンのエストロゲンの低下が大きな原因の一つ。エストロゲンの代わりとなる大豆イソフラボンを摂ることで、予防が期待できます」

13分!「頭痛体操」で肩&首をほぐす

緊張型頭痛だけでなく、片頭痛の人の多くも肩や首のコリは頭痛のもと。コリをほぐす「頭痛体操」を毎日の習慣にして、頭痛を予防しましょう。

 

「緊張型頭痛の人は、頭痛のときに行うのもおすすめです。片頭痛の人は安静にしたほうが良いので控えましょう」

腕を振る体操(2分間) 

首回りの筋肉(後頸筋)を伸ばす体操です。首の筋肉が伸びているのを意識しながら、リズミカルに行いましょう。

足を肩幅に開き、肘を曲げて胸の前に上げる。 正面を向き、体の軸を意識しながら両肩を大きく左右に回す。腕の力は抜き、頭を動かさないようにするのがポイント。

肩を回す体操(6回)

肩まわりの筋肉(僧帽筋)を伸ばす体操です。肩を大きく回すことを意識しましょう。

足を肩幅に開き、肘を軽く曲げる。 リュックサックを背負うようなイメージで、両腕を内側へ回す。 上着を脱ぐようなイメージで、両腕を外側へ回す。

 

すべてを一度に取り入れようとすると、負担になってそれがストレスになる場合もあります。肩の力を抜いて、少しずつ取り入れながら生活を変えていきましょう。

※出典:「頭痛体操」埼玉精神神経センター 埼玉国際頭痛センター長 坂井文彦先生監修(日本頭痛学会ホームページ)
※医師の取材監修をもとに記事を制作していますが、症状などには個人差があります。ご自身の体で不安な点があれば、最寄りの病院にご相談ください。 

 

5人に2人が頭痛に悩む

PROFILE 五十嵐久佳先生

1979年北里大学医学部卒業。北里大学客員教授。富士通クリニック、東京クリニックで頭痛外来を担当。日本頭痛学会認定指導医・専門医として、頭痛に悩む患者の話を丁寧に聞き、症状にあった治療、服薬指導を行う。監修に「頭痛女子バイブル」(世界文化社刊)など。

取材・構成/大浦綾子 イラスト/いしかわひろこ