頭痛が起きたら薬に頼るのが一番、と思っていませんか?薬以外にも自分でできる応急処置を知っておけば、いざというときにも頭痛を怖がらずにすみます。緊張型頭痛と片頭痛の対処法を、頭痛専門医の五十嵐久佳先生にうかがいました。

緊張型頭痛は温め、片頭痛は冷やす

「緊張型頭痛は、肩や首のコリによって血行が悪くなっているのが原因となることが多いです。蒸しタオルやホットパックを肩や首に当ててあげると、コリがほぐれて血行も良くなります。3840度のお湯に、ゆっくりつかって全身を温めるのも有効です」

 

その一方で、片頭痛では温めるのはよくないそう。

 

「頭の血管の拡張や炎症で痛みが起こる片頭痛は、温めると血管がさらに拡張して痛みが強くなります。保冷剤や冷却シートなどで痛む部分をおさえて冷やしましょう。入浴も控えたほうがベターです」

片頭痛ならスマホも電気も消して安静に

温める、冷やす以外にも緊張型頭痛や片頭痛の対処法は異なります。

 

「片頭痛のときは動くと痛みが増すので、動かずに休むのが一番です。光や音などの刺激にも敏感になるので、カーテンを閉めて電気やテレビも消して、スマホも見ないようにしましょう」

 

一方で、緊張型頭痛の対処は安静にしないことが効果的だそうです。

 

「緊張型頭痛のときは、じっとしているよりも、ウォーキングやストレッチなどで軽く体を動かしてみましょう。全身の筋肉がほぐれて痛みがやわらぎます」

 

頭を支える首の筋肉のストレッチもおすすめ。

 

「疲れ目や頭痛予防にも効果的なので、デスクワークの合間に意識的に取り入れてみてください」 

 少し頭を下げた状態で、首の後ろにある左右の筋に、人差し指・中指・薬指を当てる。筋が硬いほど凝っていて、頭痛が起こりやすいサイン。

 

筋を押さえたまま前を向き、首をゆっくり左右に振る。続けて左右にゆっくり倒す。 

 

首や頸椎にトラブルのある人は、医師に相談してから行ってください。

コーヒーや紅茶で少しカフェインを摂るのも手

「水分不足で頭痛になりやすい人もいるので、普段からこまめな水分補給を心がけましょう。ノンカフェインの温かいハーブティーもおすすめです」

 

その一方で、片頭痛の痛みが軽くて吐き気がないのなら、コーヒーや紅茶などを飲んでみるのもひとつの手。

 

「カフェインの血管収縮作用で痛みがやわらぐことがあります。ただしカフェインの摂りすぎは、カフェインの離脱症状で急な頭痛を引き起こすこともあるので、コーヒーは1日2杯までにとどめましょう」

頭痛のタイプによる対処法を取材で伺う

自分に合った対処法を探ってみることが大事

その他に、五十嵐先生は香りによる効果も対処のひとつだと話します。

 

「ハーブやアロマの香りは素早くリラックス&リフレッシュしたいときにピッタリ。お気に入りの香りを持ち歩いておけば、外出先で急に頭が痛くなっても安心です」

 

片頭痛の人はペパーミントなどのリフレッシュ系、緊張型頭痛の人はリラックス効果の高いベルガモットやラベンダーがおすすめ。

 

「無水エタノール5mlにお気に入りのアロマを10滴垂らし、精製水45mlを加えればお手製のアロマスプレーの出来上がり。お守り代わりに持ち歩いてみてください」

 

ここまで紹介した対処法ですが、すべての方に当てはまるわけではありません。「頭痛の要因や痛みの程度も人それぞれのように、対処法も人によって少しずつ違う」と五十嵐先生は言います。

 

「たとえば、片頭痛でも20人に1人くらいは入浴でラクになるという方もいます。それはその人にとっては正しい頭痛の対処法です。自分の体のことは自身が一番よくわかると思います」

 

自分の感覚を大切にして、あなたに合った頭痛の対処法を探してみてください。次回は、頭痛の予防に役立つ習慣を紹介します。

※医師の取材監修をもとに記事を制作していますが、症状などには個人差があります。ご自身の体で不安な点があれば、最寄りの病院にご相談ください。 

5人に2人が頭痛に悩む

PROFILE 五十嵐久佳先生

1979年北里大学医学部卒業。北里大学客員教授。富士通クリニック、東京クリニックで頭痛外来を担当。日本頭痛学会認定指導医・専門医として、頭痛に悩む患者の話を丁寧に聞き、症状にあった治療、服薬指導を行う。監修に「頭痛女子バイブル」(世界文化社刊)など。

取材・構成/大浦綾子 イラスト/いしかわひろこ