日本人の離婚の原因は何が多いか、ご存知ですか?司法統計(令和元年度)によると、1位が「性格が合わない」、2位が「精神的に虐待する」。このあたりは想像しやすいのでは?しかし、3位については、当てられる人は少ないでしょう。家計再生コンサルタントの横山光昭さんも、その3位の回答に関する相談を多数受けてきたといいます。

DVや浮気よりも「お金の問題」が離婚を加速させる

司法統計では、毎年、全国の家庭裁判所に寄せられた婚姻関係事件の申し立ての動機について調査をしています(主な動機を3件選択)。

 

令和元年度(2019年度)でいうと、動機の1位は「性格が合わない」で、60,542件中27,200件。2位は「精神的に虐待する」で14,420件。そして3位は「生活費を渡さない」で13,647件です。

 

「生活費を渡さない」という問題は、妻が専業主婦かパートで、夫の稼ぎが家計の多くを占めている家庭で起きていることが多いでしょう。

 

これは「暴力をふるう」(10,535件)や「異性関係」(9,018件)を上回っています。女性に限れば、「生活費を渡さない」は、44,040件中12,943件で、全体の第2位です。一般的に思っている以上に、生活費を渡されていない女性が多いというわけですね。

5万円の生活費に耐えきれず、妻が向かうのは

 

実は、私のもとにも、「夫が生活費を渡してくれない」悩みを抱える人がこれまで何人も相談にきています。とてもやりくりできない金額しか渡してくれないのです。夫が高収入で、妻が専業主婦かパートをしているケースが多い。夫の方が圧倒的に稼ぎが良く、家計のほとんどの費用を負担しているケースです。

 

さらに、夫が家計を管理しているのも特徴です。「住宅ローンや教育費は僕が管理するし、貯金している。君は生活費だけをやりくりしてくれればいい」といって、生活費だけを渡されるのですね。しかし、その額が極めて低いのです。

 

ある家庭では、生活費が最低でも月々10万円はかかるのに、その半分程度しか与えられていないといった状況でした。

 

どう考えてもやりくりはムリなのですが、「お金が足りない」と妻が相談すると、夫は妻を責め立てます。それに対し、妻は夫に反論するどころか、自分を責めることが少なくありません。生活費の大半を稼いでもらっている負い目から言い返せないのですね。

 

しかし、生活を切り詰めるにしても限界があり、生活費はどうしても足りなくなります。そうすると、多くの女性はやむを得ずキャッシングをしたり、実家に頭を下げて、お金を借りたりしているのです。

経済的DVが女性を苦しめる

たとえ相手側に多少の非があったとしても、生活費が十分に渡されないためにキャッシングまでしているのは異常です。何らかの手を打たなければなりません。

 

このような状況に陥っている場合、まずは生活費がどれぐらいかかっているのかを正確に計算して、足りないことを数字でわかるようにして、夫に理由を説明して、生活費に関して交渉が必要になります。

 

しかし、「そんなはずはない。努力がたりない」と耳を傾けてくれないこともあるでしょう。こうなると、暴力は振るっていなくても、明らかな経済的DVです。もう離婚も視野に入れるしかないでしょう。

 

すべての人がそうではありませんが、高収入のパートナーと結婚したからといっても、安泰とはいえません。収入の多寡にかかわらず、支出や収入面などお金に関してオープンに相談し合えることが、健全な夫婦関係を築く第一歩なのではないでしょうか?

監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ