バービーさんと女医の遠見沙希子さん

生理やPMS(月経前症候群)の辛さは、なかなか周りに理解されづらいもの。おなかの痛みや頭痛といった体調不良のみならず、わけもなくイライラしたり、落ち込みやすくなったりと、メンタルにも大きな影響を及ぼします。

 

今回、女性の身体の問題について積極的に発信しているお笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービーさんと産婦人科医の遠見才希子さんに、私たちを悩ませる“生理の不調”について、自身の経験を交えながら語ってもらいました。

 

バービーさんの「働く女性はもっと自分を大事にして!」という言葉の裏には、ティーンの頃から重い生理と格闘してきた経験から感じた“ある思い”があるようです。

 “生理の問題”は人によって違うし正解はないけれど…

—— バービーさんはご著書などでも生理やPMSの辛さを発信されていますよね。そういった悩みは10代の頃から抱えてきたのでしょうか?

 

バービーさん:昔から生理が重かったんです。おなかの痛みや経血量が多かったり、メンタルが不調になって感情のコントロールが難しくなったりと、ずっとPMSの症状に悩まされてきて。私は問題があるとすぐに解決したいタイプなので、自分なりに調べていろんな対処法をトライしてきました。でも、こういうことって他の人となかなか話す機会がないので、みんなどうやって乗りきっているんだろうって気になっていたんです。

 

遠見さん:生理やPMSに悩む女性は多いですよね。そもそも生理痛はなぜ起こるのかというと、経血を排出するために「プロスタグランジン」というホルモンが子宮内膜でたくさんつくられて、それによって子宮が収縮し、おなかや腰に痛みが起こるんですね。

 

バービーさんは、経血量が多いということですが、筋腫などの原因があって経血量が多い人もいれば(器質性過多月経)、そういった原因はないけれど量が多い人もいます(機能性過多月経)。

 

PMSは、生理前の女性ホルモンの増減が一因にはなっているといわれているので、低用量ピルを飲むことでその変化を抑え、症状が軽くなることがあります。ただ、生活リズムやストレスなどさまざまな要因から複合的に起こるので、症状や対策も人ぞれぞれ違ってくるんです。

 

バービーさん

—— バービーさんの場合は、具体的にはどんなふうに対応してきましたか?

 

バービーさん:私は10年前くらいからピルを飲むようになって、ずいぶん症状が治まりました。今は一時的にピルをやめていて、ハーブなどの植物療法的なものを試しつつ、ライフスタイル自体を変えようとしているところ。ただ、やはりピルを飲まないとキツイと感じるときもあります。

 

遠見さん:ピルは排卵を抑える効果があり基本的に避妊のための薬ですが、副効用として、生理痛や過多月経、PMS、ニキビを改善したり、生理周期を整えたりするなど、さまざまなメリットがあります。生理の重い人などは選択肢に入れてみてほしいですね。

「ピルさえ飲めばいい」わけじゃない

—— 最近は低用量ピルを選択するハードルも下がってきたように思います。それでも子育て世代は自分のケアは後回しになりがちですよね。

 

バービーさん:自分の体を考え、きちんとケアしていくには、時間と労力がかかりますよね。とはいえ、3040代の女性が仕事に育児にとすごく忙しいのはわかりますが、自分の体のことは後回しどころか、そもそも向き合うことを諦めているような人もいる気がして、もどかしい思いがあります。それに、医学の力で頼れるものが、ほぼピルしかないという状況もなかなか厳しいなぁと思っていて。

 

遠見さん:確かにそうですね。PMSの医学的な選択肢としては、低用量ピルが症状改善の一助になることもあるし、精神的な症状がつよい場合は抗不安薬を使うこともあります。子宮内避妊具のミレーナを使うことで生理の量や痛みを軽くすることができます。

 

バービーさんと女医の遠見沙希子さん

バービーさん:ピルに対して、世間の偏見というのもまだまだあると思うんです。特に私が飲み始めた頃は、“性に関わることはタブー”という風潮も強かったので、ピルを飲んでいることをあまり周りには言えなかったですし…。

 

遠見さん:確かに、女性がピルで主体的に避妊をしていることを後ろめたく感じさせる風潮があるかもしれません。一方的に“ピルさえ使えば問題ない”とか、 “ピルは避妊薬ではなくて生活改善薬“という情報発信はちょっと違うなと感じています。どんな理由でも女性が自ら選択できることが大切。全員がずっと使える薬ではないし、もちろんデメリットもありますから、使わない選択も尊重されるものだと思います。

ホルモンに支配されている私たち…まずは自分の症状を知ること

—— その人その人で、症状の感じ方や治療に対する考え方も違うわけですね。

 

バービーさん:結局「これだ!」っていう答えがないんですよね。だから“解決できないこともある”と受け入れたうえで、自分の身体と向き合いながらうまく付き合っていくことが大事なのかなと。“女はホルモンにどんだけ支配されてるんだ!”と思いますけどね(笑)。

 

遠見さん:自分の身体と向き合う一歩として、PMSの症状、たとえば、頭痛やむくみなどの体の変化で気になることや、“イライラする”“死にたい気分になる”など、メンタル面の変化を手帳などに簡単にメモするといいですよ。女性の身体を管理するアプリを使うのも手です。

 

自分と症状と生理周期を見比べてみると、“この時期はこうした症状が出やすいんだな”とわかり、それだけでも気持ちの持ちようが違ってきます。実際の診療でも、こうした“症状日記”をつけることを勧めていますね。

 

バービーさん

バービーさん:それはいいアイデアですよね!私も自分の症状を日記に書くようにしています。特にメンタル面の不調は、その時に直面している問題だったり、元の性格からくるものなのか、あるいは女性ホルモンの影響なのかが、よくわからない部分もあります。

 

そんなときに、症状日記と照らし合わせることで「ああ、生理だからこういう状態なんだ、いずれ収まるな」とわかれば、気持ちが落ち着く。続けることで、だんだん自分の体とうまく付き合えるようになりますね。

痛みは我慢しなくて大丈夫!市販薬も上手に活用して

遠見さん:痛みをコントロールするには、痛み止めの薬を飲んでもらうのがいいのですが、我慢してしまう人も多いんです。

 

バービーさん:“痛み止めの薬を飲み続けると癖になってだんだん効かなくなる”と、聞いたことがあるんですが、実際どうなんですか?

 

遠見さん:耐性ができるというのは、迷信に過ぎません。生理痛をコントロールすることは、生活の質をあげる上で大切なこと。ただ、痛くなってから飲むと効かないので、我慢せずに痛みが出る前に予防的に飲んでください。

 

バービーさんと女医の遠見沙希子さん

—— バービーさんは、どんなふうに対処しているのですか?

 

バービーさん:辛いときは痛み止めを飲みますね。あとは、PMSに効くといわれるサプリメントとか、チェストベリーやセントジョーンズワートなどのハーブ系サプリを試してみたり。先生はやっぱりお医者さんだから、うまくコントロールされているのでしょうね。

 

遠見さん:実はいま、妊娠・出産を経て久しぶりの生理ということもあって、シーツをうっかり経血で汚してしまったり、痛み止めを飲みそびれてしまったり、“なんかイライラする”と思ったら生理が始まった…なんてこともあります。自分のこととなると、なかなかうまくいかないものですね(苦笑)。改めてホルモンは身体にこれだけの影響を及ぼすんだなと実感しています。

 

バービーさん:お医者さんでもそうなのかぁ。ちょっと安心しました(笑)。

 

PROFILE バービーさん

1984年北海道生まれ。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。FRaU WEBにてエッセイの執筆ほか、TBSひるおびコメンテーターや町おこし等にも尽力。2020年7月からはTBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティを務める。また、2020年2月にバービーのプロデュースで話題を生んだピーチ・ジョンコラボ下着が好評につき第2弾決定。昨年末開設したYouTube「バービーちゃんねる」では300万視聴回数を超える動画もあり好評配信中。

 

PROFILE 遠見才希子さん

1984年神奈川県生まれ。産婦人科医。2005年、大学時代から“えんみちゃん”のニックネームで、全国700か所以上の中学校や高校で性教育の講演活動を行う。2011年、聖マリアンナ医科大学卒業。亀田総合病院、湘南藤沢徳洲会病院などで勤務。現在、筑波大学大学院社会精神保健学分野博士課程在籍。著書に「ひとりじゃない 自分の心と体を大切にするって?」、「だいじ だいじ どーこだ? はじめてのからだと性の絵本」(2021年7月刊行予定)。

 

女性ホルモン_バナー
取材・文/西尾英子 撮影/中野亜沙美 ヘアメイク(バービーさん)/原田なおみ スタイリング(バービーさん)/谷口夏生(TAKUTY PRODUCE&CREATE) イラスト/pum