しょっちゅう「頭が痛い」という人もいますが、生活環境の変化で頭痛が起きる人も。今回のコロナで生活が一変したことで、頭痛が悩みの種に…という人もいるのでは。頭痛専門医の五十嵐久佳先生にお話をうかがいました。
「たかが頭痛」その認識が大きな勘違い
ズキンズキンと痛んだり、頭を締め付けられるように痛んだり…。不意に襲ってくる頭痛にどう対処していますか?市販の鎮痛薬を飲んだり、少し休憩をとったりする人もいれば、なかには「たかが頭痛くらいで休めない」と我慢する方もいるかもしれません。
「その認識が大きな勘違い。ムリをせず休むのも大事」と五十嵐先生は語ります。
「プレゼンティーイズムという言葉をご存知でしょうか。心身の不調があるにもかかわらず出社をして、本来のパフォーマンスが発揮できなくなる状況のことを指します。頭痛によるプレゼンティーイズムによる生産性の損失が、いま社会的に非常に問題になっています」
日本人の特性なのかもしれませんが、多くの人は頭痛がつらくてもムリして働く傾向があります。『たかが頭痛』という認識が、ますます休めない状況を作っているというのです。
日本人の4割が頭痛持ち…そんな理由でもなるの?
頭痛によるパフォーマンスの低下が社会的に問題になるということですが、頭痛に悩む人はどれだけいるのでしょうか。
「頭痛にもいろいろな種類がありますが、いわゆる我慢しがちな頭痛の代表格が『緊張型頭痛』や『片頭痛』などの一次性頭痛。命に別状はないけれど、慢性的に繰り返す厄介な存在でもあります。日本の15歳以上の男女のおよそ4割が一次性頭痛の持ち主といわれ、なかでも緊張型頭痛はおよそ日本人の5人に1人が経験しています」
日本の15歳男女の10人に4人が片頭痛・緊張型頭痛をはじめとする一次性頭痛を抱えている。※片頭痛と緊張型頭痛は疑いも含む。
出典:学会誌「Cephalalgia 17号」 1997年を参考に作成
さらに、男性よりも女性のほうが圧倒的に多いという事実も。
「緊張型頭痛をもつ女性は男性の1.5倍、片頭痛では3.6倍にものぼります。年齢別でみると、20〜40代の女性は要注意。30代の女性は5人に1人が片頭痛に悩まされています」
仕事や子育てなどで忙しい時期なのに、片頭痛に悩まされるのは本当に困りもの。しかし、その生活こそが頭痛を起こす要因でもあるのだそうです。
「仕事では大事な案件での緊張や寝不足、人間関係のストレス、家庭でも家事や子育てに追われると、疲れやイライラがたまりがちです。さらに息抜きで旅行したつもりが、慣れない移動の緊張や生活サイクルの変化が頭痛につながることも。月経も片頭痛に関連があります」
長時間のマスクで頭痛になる原因とは?
そして最近では、新型コロナウイルスの影響で頭痛に悩む人が増える傾向にあるといいます。
「新型コロナウイルスの症状そのものというよりは、生活様式の変化が原因です。例えば、長時間マスクをつけるために血液中の二酸化炭素濃度が増えて頭痛が起こる方もいれば、テレワークによる運動不足、家族とずっと一緒にいるため自分の時間がとれずストレスがたまるなど、原因は様々です」
このように、私たちを取り巻く環境には頭痛のタネがあちこちにあふれています。「だからこそ、今こそきちんと頭痛について向き合ってほしい」と五十嵐先生は言います。
「市販薬に頼るだけでなく、寝込むほど生活に支障が出るようならば、受診も検討してみましょう。残念ながら、慢性的な頭痛を完治させるのは難しいです。しかし、病院での治療はもちろん、薬に依存しなくても正しいセルフケアで頭痛の回数を減らしたり、痛みを軽減させることはできます」
この特集では、全5回にわたって緊張型頭痛や片頭痛を中心に、慢性的な頭痛をラクにする方法を紹介していきます。あなたの頭痛がどんなタイプなのか、どんなときに起こるのかなどを知ることで、“突然現れる厄介な頭痛”との付き合い方も変わってくるはずです。上手に頭痛をコントロールしていきましょう!
※医師の取材監修をもとに記事を制作していますが、症状などには個人差があります。ご自身の体で不安な点があれば、最寄りの病院にご相談ください。
PROFILE 五十嵐久佳先生
取材・構成/大浦綾子 イラスト/いしかわひろこ