白髪が増えてくると、頭をもたげるのが「いつまでこれを染め続けるのか?」という疑問。白髪を隠すのではなく前向きに育てる── 。そんな付き合い方をするには、どんな工夫ができるのでしょうか?クレアージュ東京 エイジングケアクリニック院長の浜中聡子さんに、白髪混じりの髪を美しく維持するための生活習慣について教えてもらいました。
美しいグレイヘアは「毛量がポイント」
── 髪に白髪が交じってくると誰もが考え始めるのが今後のヘアスタイル。年齢を重ねてもロングヘアを楽しむことはできるのか、いっそ短くした方が髪の健康は保たれるのか…。素敵なグレイヘアも見かけるようになりました。増えつつある白髪とポジティブに向き合うには、今何をしておくべきでしょうか?
浜中さん:患者さんでも、コロナの自粛期間に美容院に行けず、グレイヘアなど白髪を生かした髪型を模索する方は増えました。そうした髪型は、毛量をうまくキープできると生き生きとした印象になります。「白髪を生かしたい」と思うのであれば、髪の毛を現状維持する努力をしたいところです。
幸い、白髪と違って、薄毛や髪のボリューム、髪質は改善が可能。今後、どんな髪型にしたいかに関わらず、ケアはしておいた方がいいでしょう。
── 髪に年齢を感じてきたら、ヘアケアは変えるべきでしょうか。
浜中さん:年齢とともに似合うファッションやメイクが変化するように、その年だからこそ似合う髪型、ふさわしいヘアケアというものがあります。年齢による変化を感じたら、シャンプーやコンディショナーなども、その都度、臨機応変に変えていくといいと思います。
まず気をつけたいのは、今まで以上に頭皮を気遣うことです。髪の毛はすでに死んだ細胞ですから、それを改善するには限度がある。毛が生える土台である頭皮をいたわることが、根本的なケアになります。
── どんなシャンプー・コンディショナーがオススメですか?
浜中さん:頭皮に負担が少ないアミノ酸系のもののなかから、顔のスキンケア同様、皮脂量や乾燥しやすさが自分に合ったものを探してください。
年齢を重ねると、髪のボリュームがなくなるわりに、毛先が乾燥で広がりやすいという髪悩みも出てきがち。頭皮に合っていて、髪のボリュームが一日維持でき、それでいて毛先がまとまるものを見つけてみてください。
頻度は、1日に1回、その日の汚れはその日に落とすことをおすすめしています。頭皮の乾燥を気にして洗う数を減らす人、頭皮の油っぽさを気にして洗いすぎる人がいますが、逆に頭皮トラブルにつながります。
欧米人に影響されて、シャンプーなどを使わずにお湯のみで髪を洗う「湯シャン」や、レモンウォッカを使ったケアに惹かれる人もいますが、欧米とは気候も水質も衛生観念も異なるもの。日本人には合わないと思います。
── 頭皮マッサージは効果がありますか?血行改善につながるという話もありますが…。
浜中さん:年齢とともに硬くなりつっぱりがちな頭皮の違和感を解消する、リラクゼーション効果を得てストレスを緩和するなどのメリットはあります。白髪や薄毛などの根本治療にはなりませんが、ストレスの緩和は白髪や薄毛の原因を減らすことにもつながります。
マッサージは、シャンプーをする前の頭皮と髪が乾いた状態で、指のはらを使い、頭蓋骨から地肌を離すように動かして。髪が濡れていたり、爪を立てたり、頭皮をこすったりすると、髪や頭皮に負担をかけてしまうので注意してください。
魅せる髪を維持するための生活習慣
── 髪の状態をキープするための生活習慣について教えてください。
浜中さん:特に気をつけたいのは、食生活と睡眠です。食事は、高タンパク低脂肪がおすすめ。肉、魚、大豆、卵などで髪の毛の材料になるたんぱく質をとり、そのうえで野菜類から発毛をサポートするビタミン、ひじき、わかめなどから亜鉛、銅といったミネラルを正しく摂取しましょう。
白髪予防のためにも、女性ホルモンを健やかに保つためにも必要なのは鉄分。赤身肉やほうれん草などを意識して摂りたいですね。
── 食べ物以外で気をつけるべき生活習慣はありますか?
浜中さん:前回の「白髪が再び黒になる可能性はある?30代からの髪との付き合い方」でもお伝えしましたが、きちんと睡眠を取ることです。小さなお子さんがいると、深夜に自分の時間を確保したくなりがち。家族が寝静まったあとにのびのび過ごしたい気持ちはよくわかるのですが、睡眠不足は、白髪はもちろん健康には悪影響。遅寝をするなら、早起きをしたほうがずっといいですよ。
睡眠は、ストレスケアにもなります。子育てをしている女性への負担はまだまだ大きく、なかなかストレスが減ることはありません。自分がリセットできる時間を確保したり、ストレス発散法を見つけておいたりと、ストレスマネジメントをすることも、白髪予防、ひいては健康の維持には役立ちますよ。
──肌と同様、頭皮も紫外線予防が必要でしょうか?
浜中さん:
頭皮も髪の毛も、紫外線が気になる季節は対策をしてほしいですね。日焼けをすると頭皮に炎症が起きますし、髪の毛が痛み、切れ毛の原因にもなります。日傘や帽子を使ったり、髪に紫外線予防スプレーをしたりしましょう。
──カラー剤はどう選べばいいでしょう。頭皮や髪を傷めるのではと悩ましいです。
浜中さん:白髪の量が少ないうちは、染めながら黒さのある髪となじませる方が自然に見えますよね。ただ、カラー剤は多かれ少なかれ髪を傷めるため、乾燥や広がりの原因になるのは確かです。
頭皮と髪に合っていて、好みの色に染まるカラー剤は人それぞれ異なります。信頼できる美容院で相談するのがいいと思います。
美容院へ行く際は、カラーだけでなくカットも定期的にするといいですよ。年齢が上がると、誰でも毛量やツヤなどがなくなり、毛先は乾燥でうねりやすくなるもの。こまめに髪を切ると、ボリュームが出やすくなりますし、毛先が揃うので清潔感のある印象になります。
髪質の変化は、違った髪型が似合うようになるチャンス。ロングヘアが好きだった人も、年齢とともに似合う長さを考えてみてくださいね。
PROFILE 浜中聡子さん
クレアージュ東京 エイジングケアクリニック(旧Dクリニック東京ウィメンズ)院長。医学博士。日本抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会(WOSAAM)専門医、米国抗加齢医学会(A4M)専門医などの資格を多数取得。「ウェルエイジング」を提唱し臨床現場に立ち、女性の頭髪治療専門クリニックとして開院以来20万人以上の悩みと向き合う。