毛皮を着る女性

高齢化社会の進行に伴う「終活」熱の高まりと共に、とにかく不要なものを捨てまくってスッキリと暮らそう、という高齢者が増えています。

 

我が家の根っから元気な義母も例外ではありません。今回は、義母の片付けについて綴ります。 

不用品は嫁に押しつけて片付け

義母は、今日も押し入れをひっくり返しては、冬物と夏物の布団を入れ替え、「これはもういらない」「これももういらない」とどんどんゴミ袋に詰め込んでいます。

 

確かに、衰えて思うように動けなくなってから、溜まりに溜まった大量のモノを処分するのは大変です。元気なうちにどんどん持ち物を処分していこうという義母のご意向、後を受け継ぐ世代としてもとてもありがたいものです。

 

しかし義母の片付け、ちょっと困ったことがありまして

 

「この布団カバー、すごく高くていいものだったんだけど、サカヱさんたち使わない?」

 

また始まった。

 

高齢者あるある、「買った時は高価だったものを捨ててしまうのが惜しい」という気持ちが高じるあまり、不用品をとにかく人に押し付けようとする現象です。

 

義母の好意を断ってみても

義母は寝具にこだわりがあってしばしば買い替えるため、こだわりのない私たち夫婦の寝具は、ほとんど義父母のお下がりで構成されています。

 

本当は私も自分の好みの色柄のカバーを使いたいのですが、実際に使っているのは義母の趣味のロマンティックな花柄の高級寝具ばかり。モノは本当に良いものなのです。肌触りも最高なのですが、寝室にどうしても漂うのは昭和の香り。

 

しかも、マメな主婦には程遠い私は、カバーの洗い替えといってもさほど枚数は必要ありません。

 

「布団カバーはもう充分あるので、要らないかなぁ」と答えると、義母は悲しそうな顔をして「でもこれすごくいいものなのよ!ほらちょっと触ってみて!すべすべフワフワでしょう?」と一歩も引きません。

 

「じゃあ一応頂いておきますね」さほどかさばるものでもないしと、最終的には私が折れて、押し入れに仕舞いこまれます。そしてまた数年後、そのやりとりをすっかり忘れた義母が押し入れを整理して「このカバー使ってないんだけどあげるわ!」と言い出す無限ループそれが我が家の常です。

断りきれなかった衝撃のコート

私が義母から譲り受けたものは寝具だけではありません。

 

結婚したばかりの頃、義母から「いいものあげる!これあなたも着られるわよ!〇十万円もしたのよ!」と差し出されたのはなんと、毛皮のコートでした。

 

レザーじゃないんです、毛皮です。フッサフサの、リアルミンクの、例えるならばアニメ映画『101匹わんちゃん』でクルエラ(悪役)が作りたがっていたような白黒のまだら模様の、ボリュームたっぷり毛皮のコート。

 

これを当時20代の私がどこへ着ていけと

 

当然ですが、当時の私はそれはもう激しく遠慮しました。

 

「着ていく場所がない」「私には似合わない」「分不相応だ」「今あまり流行ではない」などなど

 

しかし義母の力強い「これは一生ものよ!誰だって似合うわよ!」という言葉に、うら若き私の遠慮は一刀両断され、ぼう然とした私の手にはクルエラコート(通称)が残されたのでした

 

そのコート、当然一度も袖を通すことなく、現在も私のクローゼットの一番奥に、一番幅をきかせながら仕舞いこまれています。

 

いつか万が一、私がハリウッドセレブになる日が来たら、その時はでっかいサングラスに赤いハイヒールでも合わせて着てやろうそう思っております。

譲り受けたい貴金属の行方

とにかくありがた迷惑になりがちな高齢者の片付け

 

売れるものなら売ってしまった方がいいですよ、といつも義母にはアドバイスするのですが、「お金に換えちゃったらそれまでだけど、物のままあげればずっと覚えていてもらえるじゃない」という謎の理論により一蹴されてしまいました。

 

ちなみに一番換金性の高いと思われる義母の貴金属類は、頂けるならばぜひ頂きたいと思っている唯一のものです。

 

しかしその宝飾品類、いつの間にか同居嫁である私の頭を飛び越し、孫にあたる小学生の娘が、ちゃっかり宝石箱ごと譲り受ける約束を取り付けています。

 

いいんですよ法的にも息子の嫁には相続の権利はありませんし

 

それに、宝石箱をのぞき込んでは「ガーネットってきれいだよね」「キラキラのやつが好き」と目を輝かせる娘を見ていると、すぐに換金性うんぬん言い出す私よりも、純粋に綺麗だと喜ぶ娘に引き継がれた方が、義母も宝石も嬉しいんじゃないかと思うわけです。

 

寝具や衣類はずいぶん片付いてきたものの、義父母の部屋には古い写真や食器、思い出のビデオテープ(VHS)など、強敵がまだまだたくさん。

 

終わりの見えない不用品との闘い、当分続きそうです。

 

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ