ここでは、女性および子どもの「貧困問題」について考えてみる。 母子家庭、非正規雇用の独身女性…なかでも「障害を抱えたシングルマザーの子育て」の例をとりあげる。制度の隙間に陥った女性たちは、どう子育てをするのか。
「7人に1人」の子どもが貧困に直面している
かつての日本に「貧困」という言葉があっただろうか? 昭和40年以降、「一億総中流」時代と呼ばれたように、多くの日本人は、自分は中流階級に属すると考えていた。ただし1990年代に起きた「バブル経済」崩壊後は、日本は確実に「格差社会」へと進行していた。 2012年には、「子どもの貧困率」が16.3%とピークになり、「6人に1人」の子どもが貧困にさらされているというデータが出て(※1)、多くの人たちがショックを受けた。その後少しだけ回復し、2015年には13.9%になったが(※2)、これは「7人に1人」の子どもが貧困にさらされているということだ。
視点を、子どもから女性に移してみると…単身女性の「3人に1人」が貧困であり、ひとり親家庭の50.8%が貧困だが、そのうち母子家庭は85%。母子世帯の就労収入の平均は181万円であり、生活が苦しいと言う母子家庭は82.7 %にものぼるという(※3)。
日本では「絶対的貧困」ではなく、「相対的貧困」が問題に
いや…でも周囲を見回してみてください。貧困の子どもはいるでしょうか? ごくたまに、給食が唯一の栄養源になっている子どもがいて、給食がなくなる夏休みや冬休みが心配だ、という話を聞いたことがあるかもしれない。でも、おそらくそれも少数。 本当に食べさせていない「ネグレクト」という名の児童虐待であれば、児童相談所に保護されてしまうケースである。貧困以外の理由がある。貧困ならば、生活保護を受給する道もある。