自分の好きなもの・心地いいものとシンプルに暮らすミニマリストのおふみさん。インスタグラムは7万フォロワーが超えと多くのファンにその暮らしぶりが注目されていますが、実は以前は汚部屋状態だったのだとか…。
モノがあふれる毎日から、ハイエース1台に収まる身軽な暮らしへ
── この写真からは汚部屋時代のことなんてまったく想像できませんね。そもそも、おふみさんがミニマリストになったきっかけって、なんだったんですか?
おふみさん:ミニマリストになろうと思ったきっかけはふたつあります。ひとつは、2014年秋に仕事で運の悪いことが続いていたこと。
「運、悪い、なぜ」と検索バーに打ち込んでみたところ、「掃除が行き届いていないと運気が下がる」「トイレ掃除をすると運気が上がる」と書いてあるのを見て、掃除が行き届いていなかったと反省しました。試しに毎朝トイレ掃除をしてみたところ、数日後に仕事でトラブルになりかけていた案件が解決しました。これは効果があるかもしれないと思い、掃除を継続。
そして、掃除するとトイレが居心地のいい自分の陣地のような空間になることに気づきました。掃除の効用に気づき、トイレ以外の場所も掃除して陣地を広げていきたいと思いました。しかし、掃除を阻んだのがモノの多さで、まずはモノを減らす必要があると感じ、片付けを開始しました。
── ふたつめの理由は?
おふみさん:ふたつめは、好きなときに好きな土地で暮らしたいという考えに至ったことです。2014年秋に夫と二人で実家のある京都に3日間滞在しました。それがあまりにも楽しくて、帰り道の車の中で「京都に住むのもいいね」という話になりました。
その頃は雪国に住んでおり、その土地で新築を検討していました。漠然と、冬の間、毎日雪かきをしなくてもいい土地に暮らしたいと思っていたものの、それはもう叶わないのだと思い込んでいました。しかし、京都滞在を経て「好きな土地で暮らしてもいいのでは?」とメンタルブロックが外れた感覚がありました。
「京都でもいいし、それ以外の場所でもいい。好きなときに好きな土地で暮らしたい」という結論に至り、新築をやめて賃貸暮らしをすることに。気軽に引っ越せるように家財道具は車1台分くらいの物量に収めたいと考えるようになり、結果的に、今は家具・家電全て含めてハイエース1台に収まる分の物量で暮らしています。
── 家具・家電も含めてハイエース1台分に収まるとは驚きです…!以前は、モノが多く汚部屋状態だったとおっしゃっていましたが、当時はどんなお部屋だったのでしょうか?
おふみさん:当時は78㎡の二階建て2LDKの一軒家の借家に住んでいました。和室の押入れ、洋室のクローゼット、階段下収納など、収納が豊富だったので、モノを減らすという概念が頭からすっぽり抜けたまま、どんどん溜め込む生活を数年していたら、豊富だった収納にも収まりきらないほどモノが溢れて、汚部屋状態になってしまっていました。
もらったお菓子の缶や箱といったものから、一本の歯を象った謎の置物まで、あらゆるものが捨てられずにどんどん増えていき、また押入れの中段の半分はショップ袋が占領していたり…使わないものも何でも溜め込んでいました。服は100着以上は持っていたと思いますし、何より家具が多かったです。ふたり暮らしなのにダイニングチェアが6脚、ハイスツール2脚、イージーチェア1脚、ソファ2台というものすごい状態になっていました。
── モノがあふれた状態から、どんな風に片付けを進められていったのですか?
おふみさん:78㎡の家から44㎡の1LDKに引っ越すことになり、床面積がグッと狭くなりました。引っ越しに向け、モノは徐々に減らしていっていたものの、大型のモノはかさばるので手放せず。
そこで、引越しの際にハイエースを借りたので、大型のゴミ捨てもその日に一緒に済ませてしまおうと決めました。当時住んでいた地域にはゴミ処理場があり、一般家庭からの持ち込みも可能で、入場時の車の重量を計り、捨ててから重量を計ってゴミを何キロ捨てたか計算して、その重さ分のゴミ処理料金を払うというシステムになっていました。そこで、行きと帰りを比較したところ130キロ分軽くなっていたので、それだけのゴミを捨てたのだと驚きました。
それでも、まだ当時はハイエース4台分くらいの家財を持っており、それから片付けを進めて、今の1台分の物量に落ち着いていきました。
捨てる基準は「手放して自由時間が増えるかどうか」
── そう考えると、かなりのモノを手放してこられたのですね。どんなものをどういう基準で捨てたのでしょうか?
おふみさん:ホームセンターで買ったようなカラーボックスや、数年来使っていなかったコタツなど、大型家具の中でも貰い手が見つからなさそうなものを捨てました。もう着ないであろう服なども捨てました。
捨てる基準としては、新しい家に持ち込んだ際に、自由に使えるスペースを狭くしてまで残したいものかどうかを基準に要不要の判断をしました。掃除機かけがしやすい部屋づくりをしたかったので、家具だらけにならないようにしたいと考えていました。
また、これは今でも要不要の判断をする際に用いるものさしですが、手放すことで自由時間を増やしてくれるモノは手放すようにしています。
例えば、ソファを手放したことで、ソファの背もたれの木部に溜まるほこりを拭き掃除する時間、カバーを洗ったり、こまめにコロコロをかけたりする、掃除とメンテナンスの手間と時間を全て手放しました。くつろぐなら和室で寝転んでもいいし、ダイニングチェアの座り心地が良いことに気づいたのでそちらでもいいということに気づきました。
このように、手放すことでもののメンテナンスや掃除の時間を手放せるものは手放します。反対に、手放すことで自由時間が減ってしまうようなものは手放しません。
例えば洗濯機を手放すと、洗濯機というモノはひとつ減りますが、代わりに手洗いしなければならなくなり、家事の時間が大幅に増えてしまいます。モノを減らす理由は、1日における自由時間を増やして好きなことをしたいから。このものさしがあれば、悩んだ時に要不要を判断できます。
モノが減って、自分の時間を有意義に使えるように。家事分担にも変化が…
── とても明確な基準で、私たちも取り入れやすそうです。モノを減らして「劇的に変化した!」と思われることは?
おふみさん:以前は掃除などの家事を終えてからでないと出かけたり遊んだりしてはいけないと思い込んでいました。家事が膨大なので取り掛かるのが億劫で、ついつい放置してソファに横になり、あとであとでと引き伸ばして気づけば夕方に。家事も遊びもできないまま、ただ横になって一日が終わる。
その上、気持ちよく体を休めたというのではなく、「あれをしなきゃ、でも億劫。あと少し横になろう」という、やらなければならないことを先延ばしにしているがゆえの微細なストレスを溜め込みながら横になっていたので、心も休まりません。休日を無駄に過ごしてしまったという罪悪感を感じることが多かったです。
モノを減らしてから、さっと家事を終えられるようになりました。コロナ禍以前の話ではありますが、旅行や遊びにアクティブになりました。
── 旦那さんとの家事分担にも変化が出たと聞きました。モノが減ったことがどう家事分担の変化につながったのでしょうか?
おふみさん:モノが減ったことによる一番のメリットは、夫婦間でのけんかが減ったことだと思っています。
夫婦共に正社員で共働きだったので、家事は工程を分割して分担することにしていました。例えば、洗濯なら、①洗濯機を回す、②洗い終わった洗濯物をカゴに取り込む、③干す、④取り込む、⑤畳む、⑥収納に戻す、という工程がありますが、そのうちの③干すを夫が担当し、それ以外を私が担当するということをしていました。
洗濯してカゴに取り込んだものを夫にバトンタッチするものの、あとで干すと言って結局干さずに寝てしまうことがあり、「本当は夫の担当なのになぜ私が」とイライラしながら洗濯物を干すことがよくありました。
ただ、モノが減って家事の負担が大幅に小さくなりました。食器が少なければこまめに洗わないと回っていかないので、大量の洗い物が溜まることがありません。服が少なければ洗濯物の量も少なくなります。モノが少なければさっと掃除機もかけられるので、掃除にかかる時間がぐっと短くなりました。
そうして家事の負担が減ったことで、自分が掃除に関わるほとんどを受け持ってもいいと思えるようになり、工程を分割して担当を振り分けるのはやめにしました。
人によって不快に感じるラインは異なります。私は、その耐性が低い方の人間がその家事を担当した方がいいと考えています。
例えば夫のような「洗濯物を干さずに放置すること」が全然気にならない人が洗濯を担当すると、何度も洗い直しになってしまいます。それなら、洗い直しがもったいないと感じる自分が担当した方がスムーズです。洗濯や掃除に関しては、私の方が耐性が低いと感じるので私が担当し、食に関しては夫の方がこだわりが強いので、夫に担当してもらうようになりました。
すると、これまで「本当は相手の担当なのに」とイライラしながらしていたのと全く同じ作業のはずの家事が、自分の担当だと思うとイライラすることなく気持ちよく行えるようになりました。
モノを減らすことで、自分の気持ちだけでなく家事分担にもいい影響があるなんて…。私たちも片付けを始めたくなってきますね。次回の記事では、おふみさんがどうモノの量をコントロールしているのか、モノとの付き合い方をご紹介します!
PROFILE おふみさん
30代、整理収納AD1級のイラストレーター、ブロガー。夫婦ふたり暮らし。汚部屋状態から一念発起、2014年からミニマリストに。著作に『ミニマリスト日和』(ワニブックス)ほか、『夢をかなえるノート術』(エクスナレッジ)『バッグは、3つあればいい』(KADOKAWA)などがある。
文/阿部祐子