悩む女性

女性の健康や生活をサポートする、新たなサービスやテクノロジーを指す「フェムテック(Femtech)」。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、女性の社会進出などを背景にフェムテックに取り組む企業が増えています。

 

今回取材したのは、2014年よりフェムテックブランドを立ち上げ、アロマオイルなどの商品を販売する(株)あしたるんるんラボ。PMS(月経前症候群)などの女性の身体リズムやゆらぎに対して、セルフケアの意識が浸透していない頃から、セルフケアアイテムの提案をしていました。商品開発の裏側や、提案するライフスタイルについて、取締役COOの木内仁美さん、事業企画・広報マネージャーの村田利香さんに話を聞きました。      

“自分の悩み”が開発のきっかけに

 ——「フェムテック」という言葉自体、まだなじみがないのですが、あしたるんるんラボではどのようなアイテムを扱っているのでしょうか?

 

木内さん:フェムテックの中でも「フェムケア」と呼ばれるジャンルにはなりますが、毎月変化する女性の身体リズムやゆらぎの時期に注目した、セルフケアをサポートする商品です。

 

昨年12月より自社ブランド「月のおまもり®️」「女子のおまもり®️」をリブランディングした新ブランド「withmoon(ウィズムーン)」で、ハーブティーやエッセンシャルオイルなどを展開しています。

 

村田さん:例えば、エッセンシャルオイルは、女性ホルモンバランスプランナーの資格を持つ木内が、生理前・中・後をイメージして独自にブレンドしたアロマオイルになります。

 

生理前は柑橘系をベースにブレンドした香り。生理期間はローズなどをブレンドしたフローラル系の香り。生理後は柑橘系をメインに、ヨガや瞑想などで使用されるエレミなどをブレンドした爽やかな香りに構成しています。初めての方でも取り入れやすい美味しさや香りにこだわって、商品開発をしています。

 

「withmoon」のハーブやアロマオイルを使用した商品

—— どのようなきっかけでフェムテック商品に関わるようになったのでしょうか。

 

村田さん:当社は、他社商品を仕入れて販売する通販サイトでしたが、木内が責任者となった頃から自社商品開発にシフトしていき、フェムテック商品を開発することになりました。

 

木内さん:開発するようになったきっかけは、私の個人的な心身の悩みから始まりました。当時はPMSなどの、女性の身体リズムやゆらぎについての知識はほとんどなく、友人と共有する風潮もなかったため、自分なりに本やネットで調べていました。わかっていく中で納得して受け止められるようになり、自分の心や身体の状態の捉え方も変わりました。

 

それで、もっと生活の中に、女性が自分の心や身体と向き合うきっかけを作りたいと思いました。ある雑誌記事で「女性のゆらぎの時期には柑橘系の香りがおすすめ」と書いてあったことをヒントに、香りによる自分へのご褒美や癒やしになる商品の提供を考えたんです。自分の身体を意識する機会をつくってもらいたいと「毎日使うシャンプーから変えるのはどうか」と起案しました。

 

フェムケア商品の第一弾して作ったのが、「女性のゆらぎの時期こそシャンプーを変えよう」をコンセプトにして発売した「月のおまもり®️シャンプー」です。

 

—— 当時は、女性の身体リズムやゆらぎなどに対するセルフケアの意識が薄かったと思いますが、周囲からの開発に対する理解はいかがでしたか?

 

木内さん:「女性向け商品」と言うと、当時はまだ「美容」を意識する商品が多く、製造元の協力会社にコンセプトを伝えることがとても難しかったです。

 

女性の身体リズムやゆらぎの認識が、男性には浸透していなかった時代。特に窓口となる営業担当には男性が多く、コンセプトを理解してもらえず、美容成分や高機能なものの提案が多くありました。私も経験が浅かったために説明すること自体が難しく、商品ブランドを伝えていくことに苦労しました。認知の重要性を、非常に感じたスタートになりました。

 

— 女性の身体リズムやゆらぎの情報共有から始まったんですね。購入者からの反応はいかがでしたか。

 

村田さん:「月のおまもり(R)シャンプー」発売時に、ある記事で「一番つらい生理前の時期こそ自分を大切にしなきゃいけないことを、この商品で思い出しました」と取り上げて頂きました。お客様からも「実は悩んでいたことを、今まで気づきませんでした」や「生理前の時期に自分をいたわる習慣を持ってみようと思いました」などの声が届き、自分の身体を意識するきっかけにもなれたのかな、と思っています。

 

当初は周囲にコンセプトの理解をしてもらうのも大変だったが、地道にブランディングを推進した

 “しょうがないもの”として無関心でいてほしくない

—— 現在、フェムテックの注目が高まっていますが、どのようにとらえていますか。

 

木内さん:女性同士はもちろん男性からも、フェムテックをはじめ女性の身体リズムやゆらぎに関する認知が広がり、選択肢が増えたのはとてもいいことだと思います。「withmoon(ウィズムーン)」のブランドメッセージ「毎月の、あなたのゆらぎに寄り添う」も発信しやすくもなりました。今後も新たな取り組みをしていき、フェムテックの盛り上がりと一緒に、ブランドを成長させていきたいです。

 

村田さん:インスタライブやYouTubeで情報発信をしているのですが、フェムテックの注目が高まったことにより、女性の身体リズムやゆらぎについて、話しやすい風潮になってきたことを実感します。ライブコマース配信では、お客様同士が情報共有や、商品開発のきっかけとなるようなコミュニケーションができる場にもなっています。

 

—— 7年にわたり女性をサポートしてきましたが、改めて伝えたいことはありますか。

 

木内さん:自分の心身の状態に対して、無関心でいないでほしいです。女性の身体リズムやゆらぎについては知られてきてはいますが、まだまだ「しょうがないもの」としてそのままにしている方も多いです。医療機関はもちろん、様々なフェムテックアイテムの活用を検討し、自分に最適なものを選択しやすい時代ができていければいいなと感じています。

 

村田さん:不調が起こりやすい時期は、自分を甘やかしていいご褒美をあげてもいいと、より多くの人に思ってもらいたいです。セルフケアする習慣を持つことで、少しでも楽しく、過ごしやすくなるライフスタイルを、今後もwithmoonを通して提案していきたいです。

 

PROFILE 木内仁美さん(写真左)

株式会社あしたるんるんラボ 取締役 「 withmoon」プロデューサー/ネットショップ事業の責任者から商品開発部門を立ち上げ。自身の経験から2014年にフェムケアD2Cブランド「月のおまもり®︎」「女子のおまもり®︎」を展開し、会社の柱事業に育てる。2016年女性ホルモンバランスプランナー®取得。

PROFILE 村田利香さん(写真右)

株式会社あしたるんるんラボ 事業企画/広報 マネージャー/化粧品ブランドの美容部員を経て、あしたるんるんラボ入社。広報責任者として自社商品事業を有名メディアに多数紹介される事業へ拡大することに貢献。ライブコマースの人気配信者として業界紙にも紹介された「ライブする広報」。

取材・文/竹中唯