おもちゃで遊ぶ親子

私たち親世代が子どもだった頃とは、社会の状況も大きく変わりました。女性も男性と同じようにフルタイムで働くことが一般的になり、LGBTQ(性的少数者)やSOGI(性的思考と性自認)という言葉もたびたび取り上げられるようになりました。

 

そんな中、子どもを取り巻くおもちゃの世界はどうなっているのでしょうか? 特集「おもちゃとジェンダー」では、その現状について取り上げます。

 

おもちゃは子どもの健やかな成長に欠かせないものですが、「大人が子どもに与える」という性質上、大人のジェンダー観に影響を受けやすい性質があります。その結果、まだ真っ白な子どもに無意識のジェンダーバイアスを植え付けてしまう可能性もあります。自分の子ども時代より多くの選択肢があるおもちゃ選びに、悩まれている方も多いのではないでしょうか。

 

最近のおもちゃ事情はどうなっているのか、CHANTOの読者アンケートを通して見ていきます。

我が子の性別向けではないおもちゃも購入意思があるのは7割

女の子向けのおもちゃのイメージカット

おもちゃによっては、性別を意識して作られているおもちゃもあります。

 

「男の子が着せ替え人形/女の子がヒーローの変身ベルトなど、我が子の性別向けではないおもちゃを欲しがられたらどうしますか?」と問いかけたところ、約70%の方が「購入する」と答えました。

 

おもちゃとジェンダーグラフ1

「購入する」と回答した人からは、我が子の希望を重視する次のような意見が複数見られました。親としては本人の自主性を尊重したいと考える傾向が強いようです。

 

「購入する」と答えたCHANTO読者の声

「子どもが好むものをどんどん与えたい。そっちのほうが、おもちゃを大事にするだろうし。せっかく自分が選んだものだから、大事に使わせる」(31歳/主婦/長男1歳)
「(我が子の性別向けでなくても)子どもが好きだから。おもちゃや色(ピンク、ブルーなど)に性別を自分自身が分けて考えていないため」(32歳/主婦/長男3歳)

また、購入すると回答した人を対象に「子どもに『欲しい』と言われたとき、どんな声掛けをしますか?」という質問をしたところ、子どもの選択に対して「いいね!」と同意する言葉がけや、大事にできるかを尋ねるという回答が多く見られました。

ただし、特に男の子には女の子用おもちゃを与えたくないという声も

約7割の人が性別にこだわらずおもちゃを購入すると答えていますが、逆に「購入しない」と回答したのは約24%。特に男の子を育てる親は、我が子と性別の異なるおもちゃを与えることに対して否定的な意見が目立ちました。

 

長く使えるものではないからと購入をためらう意見も見られましたが、男の子が女の子用のおもちゃで遊ぶことに対して不安感を抱く人も。

 

「購入しない」と答えたCHANTO読者の声

「女の子が男の子のおもちゃを欲しがるのには抵抗ないですが、男の子がぬいぐるみでなく着せ替え人形だったりする場合、不安に感じる」(42歳/事務職/長女9歳、次女9歳、長男3歳)
「女々しく育って欲しくない」(35歳/主婦/長男6歳)

ジェンダーギャップは「女性が生きにくい」という文脈で語られることが多いですが、今回のアンケートの結果からは、子どもの世界においては男の子の方がジェンダーを理由に好きなおもちゃを選べないことが多い可能性が見えてきました。

 

「おもちゃを購入する際、最も重視することはなんですか?」という質問に対しては、約8割の人が「子ども自身が欲しがっているかどうか」と回答しています。しかしそこに性別の問題が絡んでくると、購入をためらう人も少なくはないようです。

 

また、我が子に対してはジェンダーバイアスをかけずにおもちゃを購入すると回答した人も、他人の子どもに対するプレゼントとなると、意識が変わることが数字から見えてきました。

 

今回のアンケートでは「親戚や友人の子どもにおもちゃをプレゼントするとき、子どもの性別は意識しますか?」という質問もしましたが、「意識する」という回答が約81%と高くなっています。

おもちゃとジェンダーグラフ2

親世代では、「きょうだい・性別間での格差を感じた」との声も

男の子用のおもちゃのイメージカット

一方、CHANTO読者の子ども時代はどうだったのでしょうか?

 

回答者に対して子ども時代に遊んでいたおもちゃについて聞いてみると、半数以上が「性別を理由に『おもちゃを買ってもらえない/使わせてもらえない経験』や『遊びに参加できない経験』はなかった」と回答しましたが、一部では自分が女性であることでジェンダーによって窮屈な思いをしたという声も見られました。

 

性別が異なるきょうだいでおもちゃに差があった、野球やサッカーなどのスポーツに参加できなかった経験を持つ人もいたようです。こうした経験が、私たち親世代の無意識のジェンダーバイアスに影響しているのかもしれません。

 

CHANTO読者の声

「親戚が『女の子だからゲームよりアクセサリーの方がいいんじゃない?』と、ゲームの四分の一の値段の大したことないネックレスを買ってくれたことは本当に嫌でした(笑)。弟はゲームのソフトを買ってもらえていて羨ましかったです」(28歳/スーパー勤務/長男4歳、長女2歳)
「弟や男の子がやっているカードゲームに興味があったが、そもそも自分も買うという思考に至らなかった」(35歳/メーカー勤務/長男3歳)

「お子さんが遊んでいるおもちゃと、ご自身が子ども時代に遊んでいたおもちゃを比べたとき、一番変化を感じるのは?」という質問では、ゲームのデジタル化や複雑さ、おしゃべりできる人形など技術の進化を感じる人が最も多く見られました。また同じブロックのおもちゃであっても、色やキャラクターのバリエーションが増えたなど、デザイン面でユニセックスになったと感じる人も多かったです。

 

CHANTO読者の声

「娘は青が好きで、赤やピンクはキモいとよく言うけど、昔よりも女子が青を持っても違和感ないものが増えた」(39歳/会社員/長女8歳、次女6歳、三女3歳)

時代の変化と共におもちゃの選択基準も変わる

少数派の権利が守られるなど社会が変わってきたように、子どもたちが遊ぶおもちゃのバリエーションは私たち親世代の頃とは比べ物にならないほど増えました。性別によるカテゴリー分けやカラーは子どもの好みを知る大きな手掛かりにもなるので、全てのおもちゃから性差を失くすべきだとは思いません。

 

一方で、子どもたちがこれから育つ世界では多様性のある状態が当たり前となっていることも事実です。未来を生きる子どもたちにとってふさわしいおもちゃは何か、我が子の興味関心を大人の価値観で狭めていないか、与える側の私たちも考えをアップデートしていく必要があると言えます。

#おもちゃとジェンダーバナー

 

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文/秋元沙織 イラスト/uca U(UNFRAMEUDD)
※「おもちゃとジェンダー特集アンケート」(2021.02.19-2021.02.26)・有効回答数37・CHANTO読者モニターに対するインターネット調査