前回の記事「生産性が高い職場作りに失敗する人のある勘違い」では、生産性が高いチームを作るために、チームワークをどう向上させるかについて紹介しました。一方で、こうしたチームには「できるチームリーダー」の存在も必要不可欠です。

 

結果を出せるチームへと導くためにリーダーがやっていることについて、引き続きサイボウズ株式会社・チームワーク総研のなかむらアサミさんに伺いました。

メンバーのことを理解できていますか?

── 職場でチームリーダーを任され、前任者の業務を引き継ぐケースはあります。でも、本質的に、チームリーダーとは何をすべきなんでしょうか。

なかむらさん:

リーダーの役割は、まず明確なチームの目標設定です。当たり前のことのように思いますが「目標をきちんと立てたはずなのになぜか結果が出ない…」そういった経験をお持ちの方は自身の行動を振り返ってみましょう。

 

── たしかに「売上200%UP」などの目標を掲げてはみるものの、どうもチームがうまく機能していないことはありますよね。

 

なかむらさん:

その際、まずチェックしたいのは前回お話をした「チームワークを発揮するために必要な5つのミッション」です。目標設定以外の項目がクリアできているかを確認しましょう。

 

目標設定も注意が必要です。その目標はメンバー全員が納得した内容になっていますか?できるチームリーダーになるには、ひとりひとりと対話をしながら、このチームに対して何をメンバーに期待するのか理解しておく必要があります。

 

また、話をする際に意識したいのが、チームワークにおける「4つの成果」です。4つの成果とは「効果」「効率」「満足」「学習」を指します。チームワークがいいことでどんなメリットが得られるのかを説明しながら、目標を設定することが大切です。サッカー部の例で説明してみましょう。

 

チームワークで得られる4つの成果

1.効果…チームワークがいいことで、試合に勝てる

2.効率…チームで練習する方が、個人練習よりも上達が早い

3.満足…チームワークがいいことで、所属して活動することに充実感を覚える

4.学習…チームでの取り組みにより、自分もチームも学びや成長がある

(他のメンバーが資料となり、そのぶん学びも多くなります)

 

なかむらさん:

これら4つは必ずしもすべて叶わなくても構いません。例えば、試合には負けた…でも、「このチームにいられて良かった」「このチームにいて成長した」と、「効果」は果たせなかったけれど「満足」「学習」については達成することができれば、チームに対して高い満足感を得られています。

 

繰り返しになりますが、メンバーがチームに求めるものはそれぞれ異なります。「チームで何を果たしたいのか」、リーダーはチームメンバーと綿密に話し合って目標を決め、共通の認識を深めることが大切です。

リーダーが失敗しがちな行動とは?

── 単に目標を掲げるだけではなく、チームに貢献することでメンバーそれぞれがどんな成果を得られるのかも伝える必要があるんですね。

 

なかむらさん:

そうですね。ただし、メンバーの話を聞くだけではもちろん不十分です。すぐれたリーダーには、メンバーの考えや想いをうまく気持ちをうまくすくい出し、言語化する力が必要になります。「傾聴」や「要約」などのテクニックに通じるところですね。

また、上司から降りてきたミッションをそのままチームの目標に掲げるのもよくありません。チームの協力関係を築くためには、リーダーの想いを必ずそこにのせる必要があります。そのために、まず一度自分の中で「このチームは何のために存在するのか」という部分を整理するようにしましょう。

 

Profile なかむら アサミ

サイボウズ株式会社・チームワーク総研 シニアコンサルタント。2006年サイボウズ株式会社に「離職率が高い(とは知らず)」入社。サイボウズがチームワークと言い始めた当初から一貫してチームワークに関する活動に携わり、現在は小学生から社会人まで幅広い層にチームワークを教える活動をしている。

取材/望月琴海