1円玉をあげるだけでも大興奮。買い物をするときは自分でお金を渡したがり、自分の財布を持ちたがる——。小さな子どもはお金に興味津々です。しかし、何をどこまで教えていいのか、悩むどころ。そこで、ご自身も6人の子どもを育てている、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、アドバイスをいただきました。 

横山家では園児の子どもにも財布を持たせる

「小さな子どもにはあまりお金の話をしないほうがいい」と考えている親は多いようですが、私の考えはまったく逆。我が子に対しては、園に通っている頃から、どんどんお金の話をしてきました。

 

たとえば、月1回の家族マネー会議では、私たち夫婦と6人の子どもが集まり、親の収入から教育関連の出費のことまで、隠し事なく伝えてきました。そうすれば、お金のありがたみや、大切さがわかる子どもに育つと考えているからです。

 

また、金銭感覚を養うために、幼稚園児の頃から自分の財布を持たせていました。投資という仕組みがあることを知ってもらうために、小学校低学年になると、ネット証券の画面を見せて、投資信託について教えていました。

 

ただ、それだけお金のことにオープンな我が家でも、「小さな子にはこれはしない」と決めていたことがあります。

「お駄賃」よりも子どもが喜ぶのは

 

それは、何かお手伝いをしてくれた時に、お駄賃をあげることです。

 

10円あげるから、お風呂掃除を手伝ってくれる?」 「床のぞうきんがけをしてくれたら、30円あげるぞ」

 

このようなことを言ってお手伝いを促すと、最初のうちは喜んでやってくれるかもしれません。しかし、これが落とし穴。お手伝いのたびにそうしていると、

 

10円くれないなら、お風呂掃除を手伝ってあげない」 「50円じゃ、雑巾がけなんかしない」

 

というように、対価が得られないと、何も手伝ってくれなくなるのです。また、お手伝いのたびにお駄賃をあげていると、簡単にお金が手に入ると思い込んでしまい、お金のありがたみを感じなくなります。これは、教育上、良くありません。

 

横山家では、小さな子に何かを手伝ってもらったとしても、「ありがとう」「助かったよ」とお礼を言うだけです。それでも子どもは、“大人と同じ仕事ができた”と喜ぶものです。わざわざ余計なお駄賃をあげる必要はないのです。 

「お金持ち=偉い」を植えつけてはいけない

もうひとつ、小さな子にやってはいけないのは、「お金持ち=偉い」という考え方を植えつけないことです。

 

子どもは親の行動を見ていないようで見ています。親がお金持ちやセレブな人を羨ましがったり憧れたり、逆にホームレスの人をさげすんだりしていると、それを覚えてしまいます。そして、人を「お金の多寡」で判断するような考えを持ってしまうのです。

 

また、子どもの同級生にお金持ちの家庭の子がいると、たくさんのおもちゃを持っていたり、おやつをたくさんくれたりします。逆に、あまり裕福でない家庭の子は、おもちゃを少なかったり、おやつが出なかったりするかもしれません。

 

すると、子どもながらに、「○○ちゃんの家はお金持ち」「××くんはお金持ちじゃない」と比べるようなことを言い出すことがあります。そんな時には、「お金持ちだからといって偉いわけではない」ことをきちんと話すように努めましょう。

 

子どもに偏った視点を持たせないためには、「世の中の価値基準はお金だけではない」と幼少期から伝えていくことが重要なのです。

監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ