迷惑をかけないように…と緊張しなくていい

虻川さん:

お話をお聞きして、入学後の生活をそこまで怖がることはないんだとわかってきました。同時に、自分が「子どものため」というよりも「学校や先生に迷惑をかけないため」という発想になっていたことにも気づきました。

 

長谷川さん:

いま、保護者の方たちは共通して「いい子に育てなくては」「社会や人に迷惑をかけないようにしなくては」という視点で子育てをしがち。だから、減点法で子どもを見てしまうんです。でも、子どもは確かに成長している。いまできないことも、長いスパンで考えれば気にならなかったりするものです。

 

「去年より速く走れるようになった」「買い物のときに重い荷物を持ってくれるようになった」「いままでは聞いたことのない言い回しで生意気な口をきくようになった」…と、小さな成長をたくさん数えてあげてください。

 

そして、その一つひとつに「成長したね」「助かるよ」前向きな声がけをすれば、子どもは自信をもって人生を歩んでいくことができるのだと思います。

 

虻川さん:

すごく大事な心構えですね。つい減点法で「ちゃんとしないとダメ!」ってやるところでした。危なかった。

 

長谷川さん:

小さいうちの子育ては本当に大変で、余裕がありませんよね。私も子育て中は多忙を極めていたので、よくわかります。

 

ただ、そんな大変な時間も、過ぎてしまえば人生の彩りになる。私も、ふいに宿題の音読を聞く時間が、あたたかな思い出としてよみがえってくることがあります。不安なとき、大変なときこそ小さな成長に目を向け、かけがえのない子どもの命を、ありのままで抱きしめてあげてほしいですね。

 

PROFILE 

虻川美穂子(あぶかわ・みほこ)さん

1974年生まれ、埼玉県出身。1995年、お笑いコンビ・北陽を結成。2015年に第1子となる長男を出産。2020年にはYouTubeで「北陽チャンネル」を開設した。著書に「北陽の“母ちゃん業"まっしぐら!」(主婦の友社刊)がある。

 

長谷川かほる(はせがわ・かほる)さん

東京未来大学特任教授。東京都内の公立小学校教諭、副校長、校長を経て現職。大学では、管理職歴15年の経験を活かし、教員を目指す学生たちの指導を担当している。著書に「保護者対応12か月」(小学館刊)がある。

 

取材・文/有馬ゆえ カメラ/高倉千鶴 スタイリスト/野田奈菜子