「ひのえうま(丙午)」の言い伝えを聞いたことはあるでしょうか。江戸から明治時代にかけて生まれた迷信だといわれていますが、令和の今でも、「ひのえうまの年には子供を産まない方がいい」といったアドバイスをしてくる人が周囲にいるかもしれません。
いったい「ひのえうま」とは何なのか、意味や過去のひのえうま年の出生状況、次はいつなのか、偏見にはどう返すのがいいか…などを解説します。
次の「ひのえうま」は2026年。前回はいつ?
「ひのえうま(丙午)」は、年賀状などで登場する子・丑・寅…の「十二支(じゅうにし)」)と、甲・乙・丙…で始まる「十干(じっかん)」を組み合わせた「干支(えと)」のうち、「丙」と「午」が組み合わさった年のことで、60年に1回訪れます。
前回の「ひのえうま」は1966年(昭和41年)。その年に生まれた方は、2021年現在では55歳です。
次の「ひのえうま」は2026年(令和8年)。少し先に思われますが、妊娠時期は4年後の2025年になります。
結婚後、数年間はフルタイムで共働きをしてから妊活を始めようと思っている新婚カップルや、現在第1子・第2子がいて、きょうだいが欲しいと考えているママ・パパにはちょうど関係してくる時期ではないでしょうか。
「ひのえうま」年に出生率が下がる理由
なぜ過去に「ひのえうま」年の出産を避けるように言われてきたのでしょうか?
これには諸説ありますが、おもな理由は以下のいずれか、あるいは混じり合ったのではないかと言われています。
- 暦では干支の「丙」と「午」は、ともに陽・火の性質を持つといわれているため、この年に生まれた子は気性が激しいと考えられた
- 江戸時代より「丙午の年は火災が多い」という言い伝えがあった
- 井原西鶴の『好色五人女』で、放火により火あぶりになった「八百屋お七」が丙午年の生まれとされていた
これらの言い伝えが、いつしか「ひのえうま年に生まれた女の子は気性が激しく、将来は夫の運気を食い尽くしてしまう」といった迷信に変わっていったのではないかと考えられています。
これを信じる人があまりにも多かったため、親たちは「もし女の子が生まれたら将来縁談がまとまらない」「育てるのに苦労しそうだ」という理由で、妊娠出産そのものを避けてきました。
最近の出生率は「ひのえうま」年より少ない
直近の「ひのえうま」年である1966年(昭和41年)には、前後の年と比べて生まれた赤ちゃんの人数が約25%少なかったことが分かっています。
ただし、前後と比べてガクンと減ったといっても、1966年の出生数は約136万人で、出生率(合計特殊出生率)は1.58%。
対して、2019年(令和元年)の出生数と出生率はそれぞれ、約86万人、1.36%。つまり、ひのえうまなどの要因がなくても、赤ちゃんはどんどん減っていることになります。
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もちろん、単に出生率が上がりさえすれば良いというのではなく、経済的に苦しく結婚や出産を考えられない人、子供を持たないと決めている人、不妊治療がなかなか実らず苦しんでいる人、それぞれの意志や人生が尊重されるべきです。
しかし、2020年のコロナ禍により、ますます出産にまつわる不安が増えているのも事実。
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そこにきて、もし「ひのえうま」を懸念する人が多く前回なみに出生率が下がれば、その年の赤ちゃんは、単純計算で約65万人という過去に類を見ない少人数になってしまう可能性もあるのです。
「ひのえうま」を信じる人にはどう返す?
現在、女性の初産年齢は平均30.7歳。
もし夫婦ともに子どもがほしいと考えているなら、「ひのえうま」を気にして1年間妊活をストップするのは時間的に大きなロスになるのではないでしょうか。
一説には、「ひのえうま」は年をさすのではなく、60日に1回訪れる「ひのえうまの日」に生まれた人の性質の特徴だとも言われています。
本当にそうであれば、2026年生まれの子を特別視するのはナンセンスな話ですよね。
また欧米をはじめとする海外でも、ひのえうま年だからといって出生率が下がることは当然なく、その年生まれの女性が特別に気性が荒いなどと言われることもありません。
そもそも、血液型や星座同様、同じ年に生まれた人が全員同じ性質傾向を持つはずがないのですが、近年まで根強く残っていた言い伝えだけに、いまだに偏見をもっている人がいる可能性はあります。
もしも身近な人が「ひのえうま」の言い伝えを信じていたら、上記のことを説明し、それは迷信にすぎないことを理解してもらえればと思います。
文/高谷みえこ
参考/内閣府 子ども・子育て本部| 出生数、出生率の推移 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2011/23webhonpen/html/b1_s2_1_1.html#chu6