弱点を見える化して、いざという時に備える!
2つの事例について、今回のような不測の事態に備えてやっておきたい対策としては、どういったものがあるのでしょうか。
まず、Aさんのケースですが、収入が減ったわけですから、現状できることとしては、家計の見直をして削減できる支出は削減する。そして、今後に向けて貯蓄習慣を仕組み化することが基本になります。
加えて、今回はコロナ禍関連の補助金を活用すること。Aさんが利用できる代表的な補助金は、持続化給付金(最大100万円支給)、小学校休業等対応支援金(小学校の休校等や子どもの感染の疑いなどにより子どもへの対応をするために契約していた仕事ができなくなった人を対象に日額7,500円×働けなくなった日数が支給)でした。 当面は、これらの給付金をもらいながらのマネープランを考えました。
日頃よりできる対策としては、
- 収入を全て使わずにいざという時に備えて貯蓄すること
- 会社員に比べて社会保障制度が充実していないことを認識し、備えておくこと
特に社会保障制度については知っておきたいところです。たとえば、今回のような危機で仕事がなくなった場合、会社員であれば、雇用保険から失業手当が支給されます。フリーランスは雇用保険に加入していないので失業手当が出ません。また、万が一廃業してしまった場合、退職金も出ません。そこで、検討していただきたいのが「小規模企業共済」です。
小規模企業共済は、経営者や個人事業主のための退職金制度です。廃業したときや老齢になった時に通常の預金利子よりも有利な利率で共済金を受け取ることができます。また、万が一、事業の資金繰りに困った場合でも一般の金融機関より有利な条件で貸付を受けることができます。さらに、小規模企業共済は、掛け金がiDeCoと同じく所得控除になるので、節税もできます。
他にも今後、病気やケガで働けなくなるケースもあるでしょう。会社員は病気やケガ、うつ病などで休んだとしても健康保険から連続で休んだ4日目から最長1年半にわたってお給料の3分の2が「傷病手当金」として支給されますが、フリーランスが加入する「国民健康保険」には、この「傷病手当金」はありません。ですから、民間の医療保険や所得保障保険などへの加入を検討するなどして対策を立てておきましょう。
続いてBさんの夫のケースですが、現状できることはAさん同様に収入が減ったので、家計の見直しをして生活のダウンサイジングをすること。ただし、外資系企業でも、日本で雇用されているので雇用保険に加入しており、失業手当が支給されます。
今回は会社都合の退職なので7日間の待機期間を得て、失業手当は支給されました。Bさんの夫のケースでは、9か月間失業手当が支払われます。現状を考えると、再就職できた場合でも年収が下がる可能性が高いことを考え、年収が下がる前提で中長期的なマネープランを作成しました。そのことにより、転職する際の年収の目安が明確になりました。
日頃よりできる対策としては、
- 解雇や転職を想定し、収入減少の可能性を見据えて資産形成に力を入れること
- 収入の一部を自己投資に回し、資格の取得やスキルを身につけること
- 人脈作りにも力を入れること
年収が高ければ貯蓄や投資に回す資金が確保できるので、日頃より投資の勉強をして、資産形成に力を入れるのは良いのではないでしょうか。投資=お金に働いてもらうとも言いますが、自分が働けなくなった時でもお金に働いてもらうことができれば心強いでしょう。
初心者の場合、節税しながら主に投資信託を活用して中長期的に運用していく、つみたてNISAやiDeCoなどから取り組んでみると良いと思います。
また、Bさんの夫のように、大手企業勤務で高収入な場合、その信用力を活かして不動産投資を検討してみるのも手です。不動産投資は、一般的に金融機関からお金を借りて投資をしますが、信用力が高い会社員の場合、好条件で融資を受けることができます。不動産投資は入居者が決まれば、毎月一定の家賃収入を安定して得られます。本業の収入が下がっても家賃収入でカバーできれば、安心でしょう。
ただし、不動産投資は物件選びや業者選びなどが難しいことに加えて、コロナ禍で地方移住をする人などが増え、これまでとは物件の価値を判断する基準も代わり、今後どうなるかは不透明といえます。ですから、不動産投資を始める場合には、ある程度自分でも知識を身につけて、情報収集してから行うことが大切です。
現在、高収入で仕事が順調な方も今回の事例を参考に、もしものことが起きた時に備えて、今から自分自身の弱点を「見える化」して、対策を考えておくと良いですね。
文/高山一恵