老後の資金を効率よく増やすためには、貯金だけでなく、一部のお金を投資にあてるのも大切。という話はよく聞くけれど、投資はやっぱり怖い…と尻込みしている人もいるでしょう。しかし、家計再生コンサルタントの横山光昭さんは「投資なんて怖いという人のほうが、投資に向いている!」といいます。一体どういうことなのでしょうか?
慎重な人ほど投資に向いている!
なぜ、「投資は怖い」と思う人のほうが、投資に向いているのでしょうか。その理由は、投資を怖がる人は、大儲けを狙おうとせず、慎重に投資できるからです。
老後資金のような生活防衛資金を貯めることを目的に、投資をする場合はできるだけリスクの低い金融商品を選び、少額から始めることがセオリーです。リスクの高い金融商品を選んで、お金を大きく減らしたら、将来の生活に影響しかねません。
具体的な方法で言うと、私は、投資信託のうち、インデックスファンドを月3000円程度から、積立で始めることをおすすめしています。
積極的に投資する人には大きな欠点が…
インデックスファンドとは、市場全体に連動するように運用されている投資信託のこと。東証株価指数(TOPIX)と連動する投資成果を目指した「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」や、世界の主要企業を投資対象とした市場に連動を目指した「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は、その一例です。
まずは、この月3000円の投資によって「投資とは何か」を体感します。これで慣れた上で、月々の積立金額を増やすか判断すれば、大損する可能性は低くなります。
しかし、投資を怖がらない人は、「こんなにゆっくりやっていては増えない」とガマンできず、すぐリスクの高い金融商品を選んだり、急に何万円も投資したりしがちです。
その点、投資が怖い人は、注意しながら運用を進めます。少額をコツコツ積み立てることに耐えられるので、長い目で見ると、お金を着実に増やせるのです。
毎月5000円でも年4万円も増える計算に!
ちなみに、「投資額が少額だとあまりお金が増えないのでは?」と思うかもしれませんが、時間をかけてコツコツ積み立てていくと、予想以上にお金が増えていきます。
それが分かるのが、金融庁のHPにある「資産運用シミュレーション」です。「毎月の積立金額」「想定利回り(年率)」「運用年数」の数字を入力すると、いくら増えるかがわかります。
たとえば毎月5000円を積立し、年率5%の利回りで、20年間運用したとしましょう。すると、元手の120万円が約1.7倍の205万5168円に増えます。少額でも、地道にコツコツ運用すれば、お金が増えていくことがわかるでしょう。
「値下がり」したときにやってはいけないこと
投資を怖がる人には、弱点もあります。それは、少しでも元手が減ってしまうと、積み立てた投資信託を衝動的に解約しようとすることです。まして、今回のコロナ禍のようなケースでは積み立てた金額からがくんと減ることもあり、恐怖感から解約したくなる人がたくさん出てきます。
しかし、「がくんと減ったからといって解約するのは得策ではない」ことは覚えておきましょう。私も身をもって感じたのは、投資信託を19年間おこない、リーマンショックや今回のコロナショックを乗り越えた経験です。
安く買える「チャンス」と思えるかどうか
とくにリーマンショックのときには、保有していた投資信託が大きく値下がりし、利益が大きく減りました。さすがにショックを受けましたが、そのときも積立を続けた結果、その投資信託が再び値上がりし、損失を取り戻せました。
投資信託ががくんと値下がりしたときは、安く買うチャンスでもあります。値下がりしたときに、毎月変わらず積み立てておけば、値上がりした時に、大きく元手を増やせるのです。
なかなか理解しにくいメカニズムですが、頭に入れておけば、「勢いで解約する」ことを防げます。投資が怖い人でも、毎月の積立金額を小さくしておけば、下がった時のショックにも耐えられるはずです。
監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ
資料出所/金融庁「資産運用シミュレーション」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html